前回(第5話)の話はショッキングであると同時に、いろいろ考えさせられる話でした。自分の命に代えてでも子供たちを守る(人に託す)という母猫の決断。それは人間であっても野生動物であっても同じで、子に対する母親の思い(愛情)は命よりも重く深いものなんだと。思いを馳せるのは易し。でも実際にそういった行動に触れると、ある種の衝撃を受けてしまう。
そしてもうひとつ。ノラ猫の子育てが命がけであるということ。ただ、それは人に見護られているかいないかで天と地ほどの差がある。そして、人に見護られているノラはほんの一握りなのだということ。前回も述べましたが、洪水などの自然災害で真っ先に犠牲になるのがこういった親子なんです。こんな不幸を作り出してはならない。今いるノラたちを救うこともさることながら、ノラを生み出し続ける人間の蛮行(猫捨て)を止めさせることが先決なのだと思います。
いつもスタッフやお客さんに見守られていたレオとココ(棚下)
さて今回の話は、不幸なノラたちに手を差し伸べたおじさんのドキュメンタリーです。
それは「おじさんと河原猫」という本になりました。ご存知の方も多いと思いますが、この話は太田康介さんという写真家が多摩川に捨てられたのら猫たち、そしてそのノラたちの世話を続ける2人のおじさんと出会うことから始まります。近所で暮らす病弱のおじさんと多摩川で暮らすホームレスのおじさん。太田さんは2人のおじさんとノラたちの里親探しをする一方で、自身もノラの一匹「シロ」の里親に。
しかしそのノラたちとホームレスのおじさんに、先に述べた自然災害の悲劇が訪れる。2019年の台風19号で多摩川が氾濫。あの時、多摩川が氾濫したニュースを見て自分が真っ先に案じたのはこういった悲劇でした。それは事実となった。猫たちも、その猫たちを救おうとしたおじさんも濁流に呑み込まれそのまま行方不明に。社会的弱者の人が命を賭してまで不幸なノラたちを救おうとする。都合よく猫たちを捨てていく人間の蛮行に怒りを覚えながら、こういった人間愛に触れると、救われたような気持になるのではないでしょうか。
写真は本文とは関係ありません
今回はこの本を紹介しながら太田さんに伺った話を書き留めたsippoの記事(藤村かおり氏)の他、amazonの同本販売サイトもリンクしました。amazonのサイトには本の要約があります。(買ってほしいという意味ではありません。) また両サイトには下の関連記事(本)欄になかなか興味をそそるものがあるのも見どころ。
(いずれもクリックしてポップアップ)