長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ロスト・バケーション』

2017-08-19 | 映画レビュー(ろ)

年1本ペースで新作を撮り続けている気鋭ジャウム・コレット=セラがついに放った最初の傑作だ。
舞台は岸から200メートル離れた浅瀬のみ。ランニングタイムわずか86分。画面に映る全ての物を使い切り、スリルとサスペンスを維持する手並みはまさに職人の面目躍如だ。

サーファーであった亡き母の面影を求め、ヒロインのナンシー(ブレイク・ライブリー)が人里離れたビーチにやって来る。健康的なライブリーの肢体を写すのはそこそこに、セラは彼女の小麦色の肌をスウェットスーツで隠して海に漕ぎ出させる。カメラが『ジョーズ』よろしく水面際の目線に入れば後はお察しの通り。ジョン・ウィリアムズのような必殺のキラーチューンは不在だが、パイプ(波)に影が映るセンス・オブ・ワンダーな初登場シーンはCG全盛時代のジョーズには最高の見せ場だ。さっそくブレイク・ライブリーの御身足にかじりつく(なんて奴だ!)。

 映画の初めで主人公が重傷を追わされるモンスター映画も珍しいのでは。以後、身を隠すにはあまりに心許ない浅瀬の上で孤軍奮闘の戦いが続く。それがヒロインの心の成長へとつながるドラマ部分のさじ加減も程良い。一皮むけた感のあるセラ、次に何を撮るのか楽しみだ。


『ロスト・バケーション』16・米
監督 ジャウム・コレット=セラ
出演 ブレイク・ライブリー
 

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