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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ボーイズ・イン・ザ・バンド』

2020-10-07 | 映画レビュー(ほ)

 自らもゲイを公言し、TVシリーズ『POSE』では全米中からトランスジェンダー俳優をオーディションするなど、ハリウッドの構造改革に孤軍奮闘している製作者ライアン・マーフィー。彼が2018年にブロードウェーで再演した同名舞台劇の映画化だ。原作は1968年初演のマーク・クロウリーによる戯曲で、1970年にはウィリアム・フリードキン監督が『真夜中のパーティー』のタイトルで映画化している。エンターテイメント史上、初めてゲイが描かれた記念碑的作品であり、マーフィーは出演者全員がカミングアウトしている画期的なブロードウェー版キャストをそのまま引き継いだ。現在、ハリウッドでは才能あるセクシャルマイノリティ俳優が自身のジェンダーロールを演じられない問題が注目されている。本作はハリウッドの雇用不均等に対する大きな挑戦なのだ。

 監督はマーフィーのNetflixドラマ『ハリウッド』に出演し、2018年版の演出も手掛けたジョー・マンテロ。名優のプリンシプルあるディレクションが俳優陣から素晴らしいアンサンブルを引き出しており、中でもマイノリティの孤独を浮かび上がらせるジム・パーソンズは長編映画での代表作を得たと言っていいだろう。

 但し、この志と映画の仕上がりが一致するかというとまた別問題だ。マンションの1室のみで2時間のランニングタイムはちょっと苦しい。撮影、プロダクションデザインも一級だけに映画独自のアプローチが欲しかった。マーフィーの挑戦はまだまだ続く。


『ボーイズ・イン・ザ・バンド』20・米
監督 ジョー・マンテロ
出演 ジム・パーソンズ、ザカリー・クイント、マット・ボマー、アンドリュー・ラネルズ、チャーリー・カーヴァー

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