議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

国会審議活性化法と政府参考人制度-その2

2017-06-25 | 国会ルール
平成29年6月18日に閉会した第193回国会では、政府参考人に関し、前例のないことが行われた国会となりました。

これは、衆参法務委員会で起こりました。

第193回国会において、衆参法務委員会は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(以下、組織犯罪処罰法改正案)の審査中、法務省刑事局長を政府参考人として、出席を求めることを多数決で議決したのです。

既に紹介した政府委員制度と異なり、政府参考人制度は、国会審議活性化法成立後、副大臣・大臣政務官を創設し、行政府の議員を増やすことで立法府における議員同士のやり取りを基本としました。

ただし、細目的・技術的事項について説明を聴く必要があるときに限り、政府職員を政府参考人として出席を求めることにしたのです。

だからこそ、政府職員は質疑者要求に基づき、理事会で協議を行い、必要と認めた場合には、委員会で議決し、その出席を求めることになっているのです。

よって、第193回国会において衆参法務委員会が、反対会派がある中で、出席を求める政府職員を特定し(今回の場合、法務省刑事局長)、法案の審査中、包括して政府参考人として出席を求める議決を行ったような例は、これまで前例がなかったのです。

衆参ともに、組織犯罪処罰法改正案の審査中、質疑者の要求に関わらず、法務省刑事局長は、法務委員会にずっと出席し続けました。

所管の法務大臣に先んじて、挙手し、政府職員である法務省刑事局長が答弁に立つ場面が頻繁に繰り返されました。

このように、特定の政府職員を法案審査中、包括して政府参考人として出席させる趣旨の議決を行い、出席させ続けることは、行政府側の都合で政府職員を立法府の委員会に出席させることを可能とすることにも繋がります。

これは、行政府の都合で一方的に政府職員を出席させていた、かつての政府委員制度と何ら変わりはないことになります。

立法府たる国会は、何のために平成11年に国会審議活性化法を成立させ、政府参考人制度を導入したのでしょうか。

今回の衆参法務委員会における政府参考人の包括議決は、特定の政府職員を、行政府の意を汲んで委員会に出席させることを可能にするという意味で、国会審議活性化法や政府参考人制度の趣旨に反するものであり、立法府の対応として問題であると指摘せざるを得ない、そして、二度と繰り返してはならない残念な例と言えるでしょう。

国会審議活性化法と政府参考人制度-その1

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