なんくるのひとりごと

日々の想いを言葉にしてみたい

小説「異文化の中で」の書評

2006-05-29 18:27:29 | 日記
本書は「アクシデントの沖縄」に続く小説である。そして末吉節子は十数年前に『アメリカンスクールの窓から』というフィクションを世に送り、「褒める教育の実践を教育界に印象づけた作者でもある。

おきなの基地内の小学校での教師生活は著者の生き方を瑞々しいものにした。その末吉が書き上げたのが、文化の違いでの無理解に悩む教師が主人公なのだ。

 主人公のユキが長い入院生活から開放され
大好きな子どもたちが待つ学校へと復帰するその日から物語が始まる。「ウェルカムバック」同僚の声が心地よくユキを励ます。

 しかし待っていたのは「あなたは教室には行かなくても結構です」という校長のことばだった。「サブが授業をしています」と冷たく追い打ちをかけることば。その日からユキの葛藤が始まった。

アメリカと沖縄、文化の違いはあれどもチム(こころ)はひとつ、を信じていたユキの心を揺さぶる嵐。
子どもたちからもらった入院中の手紙。早く戻ってきての文面が支えだった。なのにどうして、いま、わたしは狭い部屋の窓際に机ひとつあてがわれて座しているのか。あまりにもひどい仕打ちではないか。

ユキは校長のことばを反芻する。「病み上がりだから体罰をしかねない」との教育長の判断だとも言っていた。「どうして?」のユキの叫びを誰が受け止めてくれるのだろうか。

 でも、ユキは引き下がらなかった。この辺りから物語の佳境を迎える。異文化の中での実体験者ならではの描写が光る。
これって小説というより事実なのでは?とつい思ってしまう場面も続々登場。見事に描写された会話から、ユキの心情が見え隠れ。節子ワールドへと誘われてみたい方必見です。

新刊を琉球新報で紹介してくれと文化部の方に頼まれて書き上げた。ホッとしている。なかなか本の紹介文は難しいことを実感したが、書き上げたとき、少し自分の文章に満足感もまた覚えた。

「異文化の中で」末吉節子著ぜひご一読ください。

阿蘇山中岳登山記

2006-05-29 14:00:19 | 日記
 3月の〆と新学期の忙しさが一段落した5月27日から2日間の年休と週休を利用して山歩き初挑戦。
27日朝5時起き。まだ小鳥も目を覚ましてないうちに窓をあけると気持ちよい風

昨夜つめたリュックを再度確認。できるだけ重くならないような支度。スティク2本も必要とのこと。そんなに険しい山?ふっと頭をよぎる。
雨具は山用のしっかりした物。靴も山用、着るものも乾きのよいものとの注意書きあり。

確認後、モノレールで空港へ。

山歩きのグループだと、出で立ちで分かるメンバーあり。友人二人もすでに到着。

福岡から、熊本へ、阿蘇着13時30分。

柔軟体操後、阿蘇山のカルデラ湖を左に見ながら砂千里へと徒歩を進める。
板の歩道を5分ほど進むと、左手に砂が広がる。砂千里と呼ばれている場所らしい。

山のプロのリードで砂地へと一歩。総勢、21人沖縄側の添乗員と本土より同行のプロが前と後ろをはさむ様に進む。

足に自信のない人は一番前のリーダーのすぐ後ろに着きなさい。その方が楽です。とのこと。ところが歩きはじめから、わたしと友人の節子とりつ子は最後尾。
足には全く自信がないというりつこは「ゆっくりのペースでないと不安」と最後尾を希望。

砂千里を抜けるのに役4分、目の前に石ゴロゴロの中岳へと通じる斜面あり。

「これを登るの?もうわたしダメかもしれない・・」と、りつ子が泣きそうな声をだす。
しまった、まだ早すぎる、これからだというのに・・・わたしは精一杯の優しい声で励ます。

「重たいカッパはわたしが預かろうか・・」とわたし。とにかく荷物の負担をなくさなくては。

先頭さんガ歩き始める。黙々と一人一人と後ろについて歩きだす。いよいよだ。
添乗員も「無理せず」「ゆっくりでいいですよ」とりつ子に声をかける。

とにかく、一歩一歩とゆっくりと歩こうと決める。後ろから二人目に節子。その前をりつ子、その前をわたしが歩く。

岩場の間をぬって道無き道を歩く。小石に足元をさらわれる場面が多い。
ゆっくりゆっくり一列にあとを追う。
汗が流れる。太陽の姿は見えない。が、天気が悪いわけではない。雲が空高く覆う。

15分ぐらい歩くと少し休憩。水の補給程度。振り返ると砂千里が遠くになった。

かなりの傾斜をヨッコラショヨッコラショと登る。

「えっあんなところへ・・・わたし・・・もうダメ」と山を見上げて悲鳴に近いりつ子の声。
後尾3人はいつの間にか共感関係成立。だんだんと苦しさと楽しさが共有できた感じ。りつ子の悲鳴がわたし達のココロを刺激。

「もうすぐよー・ゆっくりでいいからほら」など優しい声が出る。人の為に役立っていることを実感しながらの山登り。
標高が高くなるに連れて視界が広がる。大分の山並みが遠くに広がり、絶景。新緑が特に美しい。

「もうだめ」を何度もいいつつ頑張るりつこの姿は、いつの間にか周りの共感すらえている。正直に自分の弱さを口に出すことはとても大変なこと。それを正直に伝えられると悪い気はしない。それどころか誰もが何らかの役に立ちたいと考えるものなのだと、つくづく感じた。

先頭を行く人も気づかってくれる。休憩時間には誰もが声を掛けて励ましてくれた。

りつ子から学んだことのひとつ。

正直に本音でヘルプを言えることはマイナスではなくプラスの作用を生むということ。やむにやまれぬココロの叫びに、わたしも何気なくヘルプの手を差し伸べることができて結構満足度が高かったと振り返っている

標高差たった600メートル足らずの山を登り、尾根を歩くのだ。一列に並んだ人々の姿は山々と一体になり美しかった。憧れの風景だった。中岳の山頂(1,506m)付近の眺めも格別だった。

山だから木々があると想像していたが大きな岩があちらこちらに転がり山肌はどこまでも茶色。

中岳山頂からカルデラ湖の白い煙を眼下に眺める。その周りにいる観光客が小さく見えた。白い煙はかなりの風に飛ばされていた。

「あしたは雨だ」と誰かがつぶやく。とにかく今日だけでも天気に恵まれたことを感謝しよう。とまた別の人が反応する。

下りからは、りつ子の足は軽やかだった。あきさみよーなーと褒められるほどの回復ぶり。山下りの女王とのあだ名までいただいてしまったりつ子。

4時50分の最終のロープウェイに無事間に合う。火口東からいよいよロープウェイ~
大変な想いをして登った山を振り返り、みんなで喜びを分かち合った。酔仙卿の「ミヤマキリシマ」の花も美しかった。
単なる観光のツアーでは味わえない程の満足感を満喫。

久住高原の温泉で疲れをとりバタンキューの一日が終了した。