俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

子孫

2013-09-29 09:42:04 | Weblog
 物体は時間の経過と共に劣化する。生物なら老化する。機械なら部品を取り替えれば劣化を妨げることができる。もし当初よりも良い部品に取り替えれば改良することさえ可能だ。
 無生物は最初の姿のままで劣化し続ける。生物は細胞を再生し続けて生きているのでその再生が完璧であれば若さを保てるが、再生する際にコピーミスが生じてこれが老化へと繋がる。コピーミスは偶然に起こることもあれば外因によることもある。放射線や紫外線や薬物などは遺伝子の一部、多分特定の部分を傷付けるだろう。
 有性生殖によって新しい生命が生まれるのは異系交配が行われるからだ。つまりオスとメスから提供された遺伝子が再結合されて傷んでいないほうの遺伝情報が使われる。オスの遺伝子の一部が傷んでいればメスの遺伝情報によって修復され、メスの遺伝子の傷んでいる部分はオスの遺伝情報が修復する。こうして真っさらな遺伝子を持った子供が生まれる。
 機械とは違って生物のためのスペアの部品は無い。両性から提供された遺伝子が相互のスペアとして機能する。つまり生物はスペアの遺伝子を持っていないから異性から得た遺伝情報がスペアとしての役割を果たすということだ。これは2台の中古自転車から良い部品を集めて、元の2台よりも良質な1台を作るようなものだ。
 ところが両者の遺伝子の同じ部分が傷んでいれば困ったことになる。より破損の少ないほうの遺伝情報を使わざるを得なくなる。つまり完全な修復には至らないということだ。こう考えると子孫のために配慮すべきことが2つあることに気付く。若い内に出産することと違った環境の人を選ぶということだ。
 歳を取ればその分、遺伝子の破損が進むだろうし、似た環境にいれば遺伝子の同じ場所が損傷している可能性が高い。同病相憐れんでの結婚は子孫のためには好ましくない。病気の原因が遺伝子の同じ場所の損傷が原因かも知れないし、同じ薬を使っていれば同じ遺伝情報が傷付けられている恐れもある。あるいは大量に紫外線を浴びるサーファー同士や放射線技師同士の結婚も危険性が高いだろう。 

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