俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

表意文字

2011-06-28 13:56:15 | Weblog
 表意文字は便利だ。ちらりと一瞥しただけで意味が分かる。急いで書類を読まねばならない時には漢字だけを拾い読みするだけで大体の内容が把握できる。
 漢字かな混じり文は世界で最も表現力に富んだ文章だろう。意味を伝える漢字とニュアンスを伝えるひらがなのハーモニーが文章を豊かにする。剛と柔の調和がある。
 表意文字しか無い中国語では外国語の表記で苦労する。まるで万葉仮名のような当て字を使うか「美国(アメリカ)」「法国(フランス)」「徳国(ドイツ)」のように暗号まがいの表記に頼らざるを得ない。中国でも日本語の「の」の字が使われているのは表音文字の便利さを中国人も認めたからだろう。
 しかし表音文字は誤解を招き易い。20年近く前にどこかの教科書は「雪国はつらつ条例」を「雪国はつらい条例」と紹介した。new clearはnuclearと誤解されかねない。看板に「おこめ」と書いてあれば関西人なら目を剥く。pubicをpublicと誤読することさえあり得る。
 文字は表現のための単なる道具ではない。思考そのものでさえ少なからず文字に頼っている。学術用語は大半が明治時代に日本人が作った和製漢語でありこれらを中国では日本から逆輸入して使っている。「中華人民共和国」の内、「中華」以外は和製漢語だ。漢語が無ければ学問は著しく困難になるだろう。

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