俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

共同幻想

2008-05-27 11:45:45 | Weblog
 共同幻想から免れることは難しい。共同幻想は第二の本能のように人間に付き纏う。共同幻想に頼らなければ生きられない人も少なくない。
 共同幻想の世界では充たされない願望が充足される。①人は永遠の生命を得る②悪は裁かれ善は報われる③あらゆる苦痛や苦悩から解放される、etc. etc.
 不条理に満ちたこの世よりも共同幻想の世界のほうが誰にとっても魅力的で、時には合理的とさえ思われる。だから理想主義者は共同幻想に憧れる。共同幻想こそ真の世界で、この世などは悪魔が見させている悪夢にすぎないと信じたがる。
 しかし実際にはこの世だけが実在する。共同幻想など妄想にすぎない。自分を含めた総ての人間が死ぬことは事実だ。この事実を否定するために妄想の虜となりこの世を否定することは生きることそのものを否定することに等しい。永遠に生きたいという欲望が現世の否定というとんでもない錯乱を招く。
 嘘に基づいて理想を築けば砂上の楼閣しか生まれない。せめて人は総て死に、死んだあとは無だという事実から目を背けるべきではない。
 嘘は嘘を生む。現実から遊離した理想からは妄想しか生まれない。嘘まみれになって生きるよりは事実に基づいて生を全うしたいものだ。

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