4,地域と調和した太陽光発電設備を促進するための条例について
【中川】次に、知事提案説明にもありました「地域と調和した再生可能エネルギー事業の推進に関する条例」について質問をします。この条例は現在環境審議会の専門委員会で検討が行われていると承知しています。
これまで、県内市町村が再生可能エネルギー推進に向けて条例をつくり対応をしてきているところですが、とくに森林における太陽光発電施設においては地域住民とのトラブルや市町村条例さえも踏みにじって開発をする事業者もいて、県としての対応を求める声があったところです。そこで3点お伺いします。
あらためて今回の「地域と調和した再生可能エネルギー事業の推進に関する条例」制定の目的についてお伺いします。
【環境部長】2050ゼロカーボンの達成に向けては、再生可能エネルギーの更なる生産拡大が不可欠であり、特に本県が高いポテンシャルを有する太陽光発電の拡大を進めていくことが必要となります。
一方で、地上設置型の太陽光発電事業は、防災面や環境・景観面等への懸念から、地域住民等と事業者との間で揉め事になる事例もあり、適正な普及を図る観点から一定のルールが必要です。
このため、本県では、平成28年に「太陽光発電を適正に推進するための市町村対応マニュアル」を策定し、市町村の条例制定を支援してまいりましたが、条例を有しない市町村も未だ46団体あるところでございます。
加えて、今後は、固定価格買取制度、いわゆるFIT制度によらない事業の拡大が見込まれ、法律・条例違反時の買取認定の取消しといった抑止力が望めないことから、こうした事業にも対応できる実効性のあるルールが必要となってきております。
これらの課題に対応し、地上設置型の太陽光発電事業を、地域と調和した形で普及させていくために、条例を制定するものでございます。
【中川】改正地球温暖化対策推進法に基づき、市町村は促進区域を設定することができることとなりました。県は、昨年促進区域から地域森林計画対象森林や優良農地を除外する基準を示したところです。今回の条例も、地域森林計画対象森林区域、土砂災害特別警戒区域、土砂三法区域を特定区域にして「県の許可制」とすることや、10kwh以上の太陽光発電施設はすべて「届出」を必要とする方向で議論が行われています。
規制をかける区域はしっかり規制をかける一方で、推進に向けて市町村の促進区域設定への支援、その際に環境や景観への配慮、住民合意の形成などについて、県としてどのように進めていくのかお伺いします。
【環境部長】本県では、昨年4月の促進区域制度の開始に合わせまして、「市町村が行う区域設定に関する基準」を全国に先駆けて策定し、これを受けて箕輪町が全国で初めて区域設定を行ったところでございます。
加えて、環境省と連携した市町村向け研修会の開催や、収益納付型補助金の拡充により、促進区域を増やす取組を進めているところでございます。
一方、現在、条例について検討いただいている県環境審議会の専門委員会においては、促進区域内の事業であっても、適切に住民との合意形成手続などが行われるよう、条例を適用すべきとの意見があったところです。
今後、こうしたご意見を踏まえつつ、環境や景観への配慮、住民との合意形成といった手続が適切に担保されるよう制度設計を進めるとともに、促進区域の増加に向けた取組を併せて進め、再生可能エネルギーの普及拡大に繋げてまいります。
【中川】以前、再生可能エネルギーの推進は公共事業で行うべきと申し上げました。国の脱炭素先行地域選定により、たとえば直近で選定された生坂村では、太陽光発電、水力発電、ペレットストーブの導入などを計画しています。
県の制度では、発電事業者向けの事業について、収益納付型補助金による初期費用の負担を軽減する支援策がありますが、個人向けの屋根置き太陽光発電設備や蓄電池の設置についても、初期費用ゼロの事業を始めるべきと思うがいかがでしょうか、以上環境部長にお伺いします。
【環境部長】現在、県では、個人住宅への太陽光発電設備や蓄電池等の設置について、「既存住宅エネルギー自立化補助金」や、共同購入事業としての「グループパワーチョイス」により、設置費用の負担軽減を図っておりますが、初期費用がネックとなり、導入に踏み切れない方も多くいると承知しております。
このため、「初期費用ゼロ円モデル」は、今後の普及拡大に有益な手法の一つと考えておりますが、発電量の変動リスクや設備の損壊等のリスクなどから、長期・安定的に採算性を確保し、事業を運営する面での難しさなどもあります。
このため、産・学・官・金などの多様な主体と連携しながら、費用対効果を含む事業課題を整理し、本県に相応しい形での事業構築に向けた検討を進めてまいります。