坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

林茂樹ーセラミックアートの可能性

2010年05月21日 | アーティスト
一目見て気になる作品でした。材質感と独特の色合いとハイブリットな異種混合の感覚がある人体表現。SF的な世界とアニメチック。林茂樹さんはセラミックアートの素材と表現の可能性を広げようと、鋳込み表現という緻密な鋳造技術とパーツの組み合わせによるシリーズを展開しています。パーツ的な組み合わせが、現代のフィギュアに通じるものも感じさせ、今日的な視野が見出せます。4月に開催されたアートフェア東京に出品。伝統的な技法のもつ深く温かみのある肌理のもつ可能性が楽しみです。

名画に音楽を聴くー東山魁夷「絵のなかのリズム」

2010年05月21日 | 展覧会
クレーの作品から色彩の音階を聴く、そして音楽の形式はカンディンスキーら、純粋抽象画へと導いていくわけですが、日本画の世界に目を向けると音楽的リズムを構成的秩序へと発展させた大家がいます。その中で、東山魁夷はシューベルトに傾倒し、創作においてバロックからロマン派まで音楽的な作調、心理的な内面を感じさせる音楽的志向がありました。魁夷は内省的な自己の心をみつめる画家でした。幼い時から青年期まで病気がちで挫折と苦悩の日々の中で〈自然の変化の中に身を置き、私は生かされている。野の草と同じである。路傍の小石とも同じである。〉という死生観の中で描くことを生の証としていきます。対象を描くにあたって細かいスケッチを重ねて、本画では余分なものを排除した省略化、簡潔化によって詩情豊かな世界へと誘います。長野県信濃美術館 東山魁夷館において「絵のなかのリズム」をテーマに、竹林の「夏に入る」など魁夷作品80展が並びます。(6月3日~7月13日)