
今日は、丸の内の三菱一号館美術館のシャルダン展に行ってきました。風が少し秋らしくなって日中でも汗ばむほどではなくなりました。
赤レンガ造りのシンボル的存在の東京駅舎復原も進み(写真)、ステーションギャラリーがオープンすると、さらに丸の内界隈はアートのスポットとして賑わうことでしょう。

静寂の巨匠という副題の通り、ジャン=シメオン・シャルダン(1699-1779)は、18世紀に活躍した画家でロココ的な時代風潮のなか、その画面は質実な題材で時が止まったかのような穏やかな光をたたえています。
本展は、本格的なシャルダン展ということもあり、シャルダン研究の第一人者であり、ルーヴル美術館名誉館長のピエール・ローザンベールさんも来日。生涯200数十点しか残さなかったシャルダンは寡作画家と言えます。それだけに大規模な展覧会に結び付けることは難しいのですが、今回38点が展覧できることは喜ばしいと話されました。
シャルダンは18世紀、神話画や宗教画が大勢を占めていたのに対して、生活と密着した身近な静物画や風俗画を描きました。
絵画の格付けも静物画や風俗画は一段低くみなされていました。そのなかで、「奇跡がおきたのです」(ローザンベールさん)。
1728年青年画家として野外展覧会に「赤えい」と「食卓」が〈動物と果実に卓越した画家〉として王立アカデミーに受け入れられます。それまでの歴史画が最も優位に立っていた中で、静物画も同等とみなされた画期的な出来事でありました。

シャルダンの風俗画の中でも最も有名な作品のひとつです。思ったより小さい作品でしたが、褐色系のトーンの中に淡いブルーグレーや繊細な色遣いが目を引きました。
この作品を含めて子どもを主役とした主題に取り組んだのもシャルダンの新しさと言えます。この4年後に同主題でほとんど同じポーズの作品が制作されています。
「食前の祈り」という子どもの愛らしさと温かな空気を感じる作品で、注文主の依頼もあるのでしょうが、シャルダンは同主題を繰り返し描き研究した画家でもありました。

「買い物帰りの女中」何気ない日常の一こまですが、ひとつひとつモチーフを同等に描き込むことで、同時の人々の暮らし、生活の匂いを感じさせます。バルビゾン派のミレーが敬愛したことがよく伺われます。
「木いちごの籠」静物画家としての本領が大いに発揮された作品です。ピラミッド型にきれいに盛られた苺と白のカーネーションの対比が美しく響いています。構図の完璧性を求めた画家の魂が感じられ、セザンヌも傾倒しています。

この「カーネーションの花瓶」は、花束を描いた唯一の作品で、デルフト焼きの花瓶に楚々とした花がすがすがしい印象です。2時間ほどで描ききった作品だといわれるように、すばやい筆さばきのタッチが次世紀の印象派の先駆けを思わせます。
本展では「羽を持つ少女」という、これまで世界的にも紹介されていない作品も見どころとなっています。
18世紀のフェルメールと言われるように、シャルダンの穏やかで奥の深い威力を味わえる展覧会となっています。
◆シャルダン展ー静寂の巨匠/9月8日~13年1月6日/三菱一号館美術館(丸の内)
赤レンガ造りのシンボル的存在の東京駅舎復原も進み(写真)、ステーションギャラリーがオープンすると、さらに丸の内界隈はアートのスポットとして賑わうことでしょう。

静寂の巨匠という副題の通り、ジャン=シメオン・シャルダン(1699-1779)は、18世紀に活躍した画家でロココ的な時代風潮のなか、その画面は質実な題材で時が止まったかのような穏やかな光をたたえています。
本展は、本格的なシャルダン展ということもあり、シャルダン研究の第一人者であり、ルーヴル美術館名誉館長のピエール・ローザンベールさんも来日。生涯200数十点しか残さなかったシャルダンは寡作画家と言えます。それだけに大規模な展覧会に結び付けることは難しいのですが、今回38点が展覧できることは喜ばしいと話されました。
シャルダンは18世紀、神話画や宗教画が大勢を占めていたのに対して、生活と密着した身近な静物画や風俗画を描きました。
絵画の格付けも静物画や風俗画は一段低くみなされていました。そのなかで、「奇跡がおきたのです」(ローザンベールさん)。
1728年青年画家として野外展覧会に「赤えい」と「食卓」が〈動物と果実に卓越した画家〉として王立アカデミーに受け入れられます。それまでの歴史画が最も優位に立っていた中で、静物画も同等とみなされた画期的な出来事でありました。

シャルダンの風俗画の中でも最も有名な作品のひとつです。思ったより小さい作品でしたが、褐色系のトーンの中に淡いブルーグレーや繊細な色遣いが目を引きました。
この作品を含めて子どもを主役とした主題に取り組んだのもシャルダンの新しさと言えます。この4年後に同主題でほとんど同じポーズの作品が制作されています。
「食前の祈り」という子どもの愛らしさと温かな空気を感じる作品で、注文主の依頼もあるのでしょうが、シャルダンは同主題を繰り返し描き研究した画家でもありました。

「買い物帰りの女中」何気ない日常の一こまですが、ひとつひとつモチーフを同等に描き込むことで、同時の人々の暮らし、生活の匂いを感じさせます。バルビゾン派のミレーが敬愛したことがよく伺われます。

「木いちごの籠」静物画家としての本領が大いに発揮された作品です。ピラミッド型にきれいに盛られた苺と白のカーネーションの対比が美しく響いています。構図の完璧性を求めた画家の魂が感じられ、セザンヌも傾倒しています。

この「カーネーションの花瓶」は、花束を描いた唯一の作品で、デルフト焼きの花瓶に楚々とした花がすがすがしい印象です。2時間ほどで描ききった作品だといわれるように、すばやい筆さばきのタッチが次世紀の印象派の先駆けを思わせます。
本展では「羽を持つ少女」という、これまで世界的にも紹介されていない作品も見どころとなっています。
18世紀のフェルメールと言われるように、シャルダンの穏やかで奥の深い威力を味わえる展覧会となっています。
◆シャルダン展ー静寂の巨匠/9月8日~13年1月6日/三菱一号館美術館(丸の内)