坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

事業仕分けと文化芸術の基本政策の重要性

2010年05月06日 | アート全般
行政の無駄削減を目的に事業仕分けが進んでいますが、文化芸術事業の方向性はまだ確定的ではないようです。文化国家戦略は普遍的テーマであり、聖域であった文化政策へのメスもある程度必要でしょうが、今こそ、文化力の必要性を訴えたいものです。日本の魅力を、固有の文化、芸術を世界にアピールし、国際発信する。いつまでも輸入超過では、本質的な国際化へと進んでいかないように思われます。「製造業から文化、観光、スポーツ政策に重点を移したい。文化予算の増額は、若者の雇用を生むなど費用対効果が大きい」と説くのは、内閣官房参与、劇作家・演出家の平田オリザさん。「金沢2世紀美術館は伝統的文化都市の金沢のイメージを転換し、アートは観光や経済の活性化にも大きく寄与できる」と話すのは、東京都現代美術館のチーフキュレーターの長谷川祐子さん。グローバル社会に向けてアジア・アフリカへの開発協力の日本の重要性を説く国際協力機構理事長の緒方貞子さんの視点は、分野は異なりますが、同じ地平に立つビジョンとして感じられます。

「瀬戸内国際芸術祭」に親子、カップルで行こう

2010年05月06日 | 展覧会
今年は2010年という節目ということもあるのでしょうか。あいちトリエンナーレを含めて自治体が主導するアートの祭典が開催されます。この夏から秋に開催される「瀬戸内国際芸術祭」もその一つ。今や現代アートの新たな拠点ともいえる直島、豊島、小説「二十四の瞳」で知られる小豆島など七つの島と高松市で、国内外のアーティスト90組を招いて、その島に伝わる固有の文化との結びつきの中で表現が展開されます。オラファー・エリアソン、クリスチャン・ボルタンスキーらが、瀬戸内の風土に触れどのようなインスタレーション作品(その場の空間に伴い設置される仮設的な作品)が生み出されていくか、楽しみです。高松港では、大巻伸嗣のアートプロジェクトが、人との関わりの中で進行していきます。俳優のあの渋い声の林隆三の一人語りもあって、老若男女、幅広い層が楽しめる内容になっています。アートをきっかけに穏やかな波の島めぐりを満喫して頂きたいと思います。
・瀬戸内国際芸術祭事務局(TEL 087-813-1290)