坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

80年代ニューヨークを疾走したキース・ヘリング

2010年05月16日 | アーティスト
バスキアとともニューヨークの地下鉄や路地の壁に描いたグラフィティで一躍脚光を浴びたキース・へリング。ジグソーパズルのように無数の人型が組み合わされた「無題(ピープル)」1985の作品です。山梨県北杜市、八ヶ岳を望む標高1000メートルに建つ中村キース・へリング美術館に所蔵されている代表作です。パンクロック全盛期の路上パフォーマンス的な落書きアートは閉塞しがちな若者の心をとらえ、キッチュ(俗)であること、バッドペインティングを生きる証しとしたのです。貧困ではあるが夢をアートへと爆発的なエネルギーをぶつけていきます。この絵も元は帆布に描かれた大作で、美術館や画廊に飾るためにキャンバスに移し替えられています。彼らの人気はニューヨークのアートマーケットの寵児へと押し上げられていくのです。