坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

新緑の散策とモネの絵

2010年05月09日 | 展覧会
新緑が潤う季節、街路樹のハナミズキ、生垣のモッコウバラ、淡い紫の藤の花もこの季節に彩りを添えてくれます。淡いどちらかと言えば原色ではなくパステルトーンのようなふんわりとした色合いは、日本の季節感や風土にあっているように思います。花の風景を描いた画家と言えば、印象派のクロード・モネが浮かびます。ジヴェルニーのモネの庭は観光地となって、日本のガーデニングファンが現地に多く訪れているとか。モネが設計し愛した庭は、色彩のオーケストレーションを奏でています。現在開催中の「ボストン美術館展」(森アーツギャラリー・六本木/6月20日まで)は、印象派の王道とも言うべき作品をメインに、モネの作品は11点展示され、その作品の初期から晩年までの経緯が示されています。サイトアップした作品は夫人のカミーユと愛娘を愛情豊かに描いた作品。30代の初期の作品で、セーヌ河沿いのアルジャントゥユに住んでいた頃の代表作です。パレットで色を混ぜるのではなく、一つひとつ色彩を並置して描く色彩分割の技法が完成された時期です。この数年後に32歳の若さでカミーユは世を去っていくのです。それを知っているかのようにこの時期モネは家庭と庭園を主題としたテーマを繰り返し描き人物の大作を残しています。