坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

フェルディナント・ホドラー展  線の画家

2014年10月31日 | 展覧会
身体的リズムのある刻むような線の律動が画面に走っています。生のリアリズムを画面から発散せている。19世紀末のスイスを代表する画家、フェルディナント・ホドラー。気迫のこもったスケール感が魅力です。
待望のホドラー展が実現しました。近年ではフランスやアメリカでも相次いで個展が行われるなど、その存在にはあらためて国際的な注目が集まっています。
ホドラーは、世紀末の象徴主義に特有のテーマに惹かれる一方、身近なアルプスの景観を繰り返し描きました。また、類似する形態の反復によって絵画を構成し、人々の身体の動きや自然のさまざまな事物が織りなす、生きた「リズム」を描きだすことへと向かいました。
ベルン美術館をはじめ、スイスの主要な美術館と個人が所蔵する油彩、素描など約100点によりホドラー芸術に迫ります。
掲載作品は、〈悦ばしき女〉1910年 ベルン美術館

◆フェルディナント・ホドラー展/開催中~2015年1月12日/国立西洋美術館
 ・2015年1月24日~4月5日・兵庫県立美術館
 

ロイヤル・アカデミー展

2014年10月30日 | 展覧会
八王子の東京富士美術館で、華麗なる英国美術の殿堂「ロイヤル・アカデミー展が開催されています。ロイヤル・アカデミーというと少し保守的なイメージが伴うのですが、印象派以後の作品とは、また趣の異なる豊かな写実派をじっくりと堪能できます。
ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツは、ロンドンの観光名所として名高いピカデリー・サーカス近くに居を構える英国の芸術機関です。1768年に画家や彫刻家、建築家を会員として国王ジョージ3世の庇護のもとに創設されました。
本展は、ロイヤル・アカデミーのコレクションをかってない規模で紹介する展覧会で、アカデミー初代会長のレノルズをはじめ、ゲインズバラ、ターナー、カンスタブル、ミレイといった英国美術界を華やかに飾った歴代会員の優れた作品を中心に約90点の作品で、創立当初から20世紀初頭までのアカデミーにおける150年の歴史をたどります。
掲載作品 ジョン・エヴァレット・ミレイ〈ベラスケスの想い出〉
東京富士美術館は初めてという方は、ミレー作品で知られる村内美術館も近くにありますので、連休などで、車でドライブしてみてはいかがでしょうか。


◆ロイヤル・アカデミー展/開催中~11月24日/東京富士美術館(八王子)

野田弘志展

2014年10月29日 | 展覧会
日本の写実絵画界をリードする野田弘志氏(1936~)。写実絵画専門のホキ美術館に収蔵されている今ブームとなっている礒江毅氏、大矢英雄氏、諏訪敦氏ら広島市立大学で教鞭をとる人気画家たちも、野田氏の薫陶を受けた方々です。
本展では、30代のデビュー作品から最新作までホキ美術館所蔵の24点と他館所蔵の3点を一堂に展覧する野田氏の創作ワールドが堪能できます。
長い時間をかけて年に1,2点のみ仕上げる貴重な野田作品は、等身大の人物像、風景画、静物画からなります。「生きるために描くのではない、描くために生きるのだ」と語る野田氏にとって最も貴重なのは、作品制作にかける時間であり、全身全霊で作品制作に取り組んでいます。
また、本展では、縦2メートル横1.5メートルの〈崇高なるもの〉のシリーズの新作を発表されます。

◆野田弘志展/11月21日~2015年5月17日/ホキ美術館(千葉市)