坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

犬のアート力

2010年05月02日 | アート全般
猫に続いて犬?なんて思われているでしょうが、我が家には、もう一人の女盛りの癒し系女子のチワワ、ノアがいるのです。まだまだ出てくるの?なんて、もうペットはこれでおしまいです。カリカリと原稿を私が書いているときは、遠目で「しっかりやってね」と励まし、ちょっと休憩のときは、「私と遊んで」とお気に入りのマスコットを持ってきたりします。
外出して帰宅したときは、「お帰りのラブコール」今日はやめとこ、なんて人間たちは結構ありますが。犬と名画となると本当に長い歴史があり、西洋美術史では古くから宮廷の肖像画や歴史画に登場してきました。ベラスケスやルーベンスなど宮廷画家も王侯貴族の愛玩犬を写実技を生かしてその愛らしさを讃えたのです。ルネサンス後期のヴェネツィアのティツィアーノの「ダナエ」や「横たわるヴィーナス」など裸婦像の傍には従順を寓意する犬が描かれています。美女と愛らしい子犬のような従順さ、男性の永遠の理想像かも。

箱根で名画に出合う

2010年05月02日 | 展覧会
箱根は今やリゾート地のアートスポットでもあります。彫刻の森美術館は歴史があり、ガラスの森や今はいろいろ出来ていて、自然の風光の中でのアート散策も楽しめます。その一角をしめるのが、緑深い仙石原に建つポーラ美術館です。言わずと知れたあの化粧品やエステで憧れのポーラです。その創立者がかなりの審美眼の最たる方だったのですね。印象派の大家やエミール・ガレ、ティファニーのガラス工芸など一大コレクションを築き上げたのです。今ではもう世界的な水準の名品ですから、公立美術館では予算的に手が出ない作品も多くあります。モネやルノワールで有名なポーラ美術館が、今年は近代日本画の名品の展覧に打って出たのです。横山大観、東山魁夷、平山郁夫、山本丘人、高山辰雄らそうそうたる画家の作品が並ぶなかで、とりわけ光るのが、杉山寧の19点にも及ぶ作品群です。明快な色彩と形態の単純化による構成美は群を抜いています。その中で、1点を選ぶとしたら「水」という1960年の作品です。画家51歳のとき、エジプト旅行の際にナイル河の水汲みの女性を清澄な水面を背景に描いた大作。余分なものを排除し簡潔な美を追求し、生命の力強さを感じさせて圧巻。9月初旬まで、1期と2期に分けて開催。GWは混雑しますから、どうぞ時間をゆったりと使えるときに名画に出合いに行ってください。