坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ミニマル・アートの現在形

2010年05月17日 | 展覧会
先日、バーネット・ニューマンの作品をご紹介しましたが、同じくミニマル・アートの発展形を追求する桑山忠明(5月30日まで)、続いて村上友晴(7月4日まで)の展覧会が名古屋市美術館で開催されています。色彩を解放し破格の巨大なキャンバスに色彩のフィールドを開いたニューマン。桑山忠明は70年代の色面派を受け継ぎ、メタリックな工業的な塗料を均質に描いていきます。色面の幾何学的な構成で無機質な空間をつくりだしてきました。主観や感情を一切排した色面の配列は工業的素材とどのような異なりでわれわれの知覚に訴えてくるのでしょうか。もはやこの作品は絵画という概念の枠組みを超えているものでしょうか。桑山忠明は常にこの絵画の定義を投げかけているように思います。

山本丘人展ー魂の抒情展

2010年05月17日 | 展覧会
見事に咲き誇った藤棚の下でくつろぐ髪の長い女性。風のそよぎにふと後ろを振り向き視線を虚空の彼方へとそそいでいます。月下美人や見返り美人などの伝統的な美人図はありますが、白いドレスを着た佳人は花の精のような趣があります。「地上風韻」1975年(箱根・芦ノ湖成川美術館蔵)。「山本丘人展」が日本橋高島屋で生誕110年記念として丘人の初期からの大規模な回顧展が開催されます。(6月2日~21日)この作品は出展される代表作の1点。屹立した断崖の孤高の風景から人物画までスケール豊かな大作が楽しめます。