このタイトルはシリーズで、私のお気に入りの作品を紹介。第1回は、東郷青児美術館の東郷の1959年の作品「望郷」。二科会の創立メンバーとして果敢に前衛運動の旗手として立ち上がり、キュビスムや構成主義的展開ののちに、ロマンチシズム溢れる女性美へと到達した。グレーのトーンの諧調がリリシズムを誘う1点。
GWに東京国際フォーラム(有楽町)で開催されているクラシックの祭典「ラ・フォルジュネ・ォ・ジャポン」の今年はショパン生誕200年を記念して、ショパン三昧。1日に世界的な一流演奏家のショパンのコンサートを同会場で梯子できるなんて、なんと贅沢。でも物凄い人出。何十万人もクラシックファンが押し寄せるのです。言わずと知れたロマン派のピア二ストでもあったショパンは、繊細華麗な装飾的音階のタッチでそれまでにない近代性を切り開いたのです。同時代に生きたロマン派の画家、ドラクロワとも親交があり、ドラクロワが描いたショパンの肖像画がルーヴル美術館に残されています。印象派が近代美術の扉を開いたことは有名ですが、その序章としてロマン派の活躍がありました。たとえば『赤と黒』のスタンダールは美の形式に自由を主張しました。19世紀初頭、文学や音楽とも呼応して、美術においてもそれまでの古典主義的美学の規定的な枠をはずして、芸術家の個性に根ざした美の創出をつくりだそうとする機運が生まれてきました。ロマン派は感受性を重視し、色彩に、筆のタッチに自己の感情を投影しました。その動的なドラマチックな要素が絵画のスタイルに登場してきたのです。主観、個性の表現ですね。イギリスでは風景画家、嵐の劇的な海の景色を描いたターナーが新しい時代を築いていきます。