坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ラファエロ展

2012年11月28日 | 展覧会
来年は、16世紀イタリア・ルネサンスの巨匠展が相次いで開催されますが、初春に東京を彩るのが「ラファエロ」展です。
先輩のミケランジェロやダ・ヴィンチの技法やスタイルを研究し、吸収して独自の優美な聖母像などを築き上げました。伝記や手紙なども少なく、その人物像は謎めいています。37歳という短い生涯でしたが、常に弟子や讃美者に囲まれきらびやかな生涯を送りました。その自画像をみると華奢で繊細な表情が印象的です。
本展は、これまでヨーロッパ以外では本格的なラファエロ展の開催は難しいとされてきましたが、フィレンツェ文化財・美術館の協力を得て、代表作「大公の聖母」など油彩、素描20点と同時代の画家の作品、ラファエロ作品を原画とするタピストリーや版画など40点でラファエロの魅力を解剖します。
掲載の「大公の聖母」1505-6年 は、故郷のウルビーノからフィレンツェに修業に出た時代のもので、初期の最高傑作とされています。ダ・ヴィンチの柔らかい陰影法を採り入れ、優しさに満ちた聖母子像になっています。大公とは、トスカーナ大公フェルナド3世のこと。この絵は長らく大公のもとに置かれていました。
背景は、暗闇になっていますが、X線写真によって元は、建物が描かれその向こうに風景が広がっていました。背景は後世になって塗りつぶされたことが解明されています。

◆ラファエロ/2013年3月2日~6月2日/国立西洋美術館

兵庫美術家列伝

2012年11月09日 | 展覧会
関西は戦後の「具体」をはじめとして新しい時代の波を起こした地盤をもっています。優れたアウトサイダーのアーティストも多く輩出してきました。
兵庫県立美術館では、前身の近代美術館の時代より、40年以上にわたって作品収集を行い、収蔵された作品数は8000点以上に及びます。今年度コレクション展3期では、「こんな人がいた!兵庫美術家列伝」と題して、地元ゆかりの美術家たちによるユニークな作品群が紹介されます。
うち1室では、旧・兵庫県立近代美術館の西館に「横尾忠則現代美術館」が今月3日にオープンしたのに合わせ、西脇市出身の横尾氏の作品をまとめて展示しています。
さらに小企画として「赤鉛筆のアウトサイダー 小幡正雄展」が開催されます。

◆こんな人がいた!兵庫美術家列伝」/11月17日~13年2月24日/兵庫県立美術館(神戸市)

ミュシャ展

2012年11月07日 | 展覧会
アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)は、チェコの小さな町に生まれ、ウィーン、ミュンヘンで学んだ後パリに出て、数年間の下積み生活を送りました。
彼の人生を大きく変えたのは1894年、当時の伝説的舞台女優サラ・ベルナールの芝居のために制作したポスター〈ジスモンダ〉がパリで大好評を博し、一夜にしてアール・ヌーヴォーの旗手として華々しいデビューを飾りました。
その後も数々の商業ポスターを制作し名声をとどろかせましたが、同時に彼のルーツである故郷とスラヴ民族に思いをはせるようになり、これまでのアール・ヌーヴォー様式とは、一線を画した作品を制作するようになります。
本展では、その点に注視したこれまでにないミュシャ展の内容になります。

◆ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り/13年3月9日~5月19日/森アーツセンターギャラリー(六本木)他4か所巡回。

山口 晃の描く「まち」

2012年11月01日 | 展覧会
油彩と水彩により面相筆を使った細やかな人物像を、伝統的な屏風仕立てで描く山口晃さん(1969年~)は、現代絵画の一断面を切り開いています。本展は、宇治の世界遺産・平等院の養林庵院に襖絵を奉納するのに合わせて代表作が並びます。「邸内見立 洛中洛外圖」では、京都の名所絵なのですが、京都の名所をひとつの邸内に見立て、そこで生活する人々とともに描いた作品。俯瞰図で雲の合間から江戸以前の光景から現代までをミックスさせ面白おかしく描かれています。
本能寺では、〈本の牛〉というように、子どもが絵本を見ている様子が描かれ、名所の名前にかけたしゃれが随所に織り込まれています。
緻密な細部表現と抜け感がなんともいえない味わいになっています。

◆平等院養林庵書院 襖絵奉納記念 山口晃展~山口晃と申します 老若男女ご覧あれ~」/11月2日~12月2日
 美術館「えき」KYOTO (ジェイアール京都伊勢丹)

☆来年はイタリア・ルネサンスの巨匠の展覧会が相次ぎます。
 先日、ラファエロ展をお伝えしましたが、春から初夏にかけてダヴィンチ展も開催予定です。
 ミラノ アンブロシアーナ図書館・美術館所蔵 レオナルド・ダ・ヴィンチ展
 ・13年4月23日~6月30日 ・東京都美術館