坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

アートのある生活の原点はポンペイ?

2010年05月03日 | 展覧会
「栄光のローマ」とヴェスヴィオ火山の噴火で埋もれた「悲劇の街ポンペイ」をテーマとした〈古代ローマ帝国の遺産〉展が、現在青森県立美術館で開催されています。(6月13日まで)東京では、国立西洋美術館で昨年秋に約3か月の会期で開催され、他3か所を巡回しています。最終地点は、北海道道立近代美術館で、7月3日~8月22日まで開催されます。この展覧会については、「アートマインド」で8枚ほど紹介記事を書きましたが、実際に展示空間に立つと新たな感慨が呼び起こされます。よく配慮された設置になっているためもあり、古代の悠久の時に包まれたような優しい気持ちにしてくれる展覧会でした。ご存じのようにポンペイの街は紀元前にある程度インフラ整備があり、お金持ちの邸宅ではありますが、その室内の壁面装飾の色彩豊かで花、鳥うたう世界、彼らの文化的な暮らしぶりには驚かされます。〈人は何のために生きるのだろう。働きづめで、それが幸せなのだろうか。共和制末期、富裕なローマ人たちは人生について、現代のわれわれと似たような疑問を感じるようになったらしい〉(資料から)ギリシャ美術に影響を受け、居心地の良い空間で仲間と文学や哲学について語り合ったのでしょうか。