坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

かぎゅうあや、小林賀代子二人展

2013年05月18日 | 展覧会
かぎゅう・あやさんは、2001年多摩美術大学彫刻科を卒業後、刺繍作家として活動を続けています。仏像を刺繍によって表現する繍仏として推古天皇の時代に広まった刺繍は、古くから人々の祈りを形にする手段としてさまざまな装飾に用いられてきたといいます。
かぎゅうさんの刺繍作品も、一針一針の祈りの集積が込められています。
原初に立ち返る表現の営みが興味深いです。

小林賀代子さんは、2004年に上智大学比較文化学部を卒業後、2010年に武蔵野美術大学造形学部日本画コースを修了しました。小林さんの描く花が咲き、飛び交う蝶の夢のような世界は、どこか懐かしく記憶の糸を引き寄せていきます。
繊細で微細なタッチが浮遊感を誘います。
二作家の異色の表現の探究が興味深い展覧です。

◆かぎゅうあや 小林賀代子「そこにいたこと」/5月31日~6月16日/MEGUMI OGITA GALLERY(銀座5丁目)

ミン・ウォン展 私のなかの私

2013年05月17日 | 展覧会
銀座の資生堂ギャラリーでは、現在、赤瀬川原平、内藤礼ら5作家の多様な表現形式の企画展が開催されていますが、この夏には、ドイツ、ベルリン在住のシンガポール人アーティスト、ミン・ウォンの個展が開催されます。
1971年生まれで、彼は象徴的なワールド・シネマの傑作に、リメイクという手法を通じて自ら入り込み、脚本や演出技法に新しい解釈を加えることで、オリジナルの映画との差異を際立たせ、人種的・文化的アイデンティティー、ジェンダー、言語、ナショナリティーといった問題に言及したユニークな映像作品を制作しています。
本展では、日本映画や日本の伝統芸能から着想を得て制作した新作「私のなかの私」を発表します。
日本での初の滞在制作で、殻は日本映画とその歴史を調査、分析し、「時代劇」「現代劇」「アニメ」の3つのジャンルに分類することを試みました。
「西洋の映画」は、写真の延長に存在し、日本の映画は歌舞伎や能といった伝統芸能の延長にあると指摘します。
ミン・ウォンが典型的な日本映画にどのように入り込み、意識の差を生み出していくのか楽しみです。

◆ミン・ウォン展 私のなかの私/7月6日~9月22日/資生堂ギャラリー(銀座8丁目)