坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

色が奏でる音の反響

2010年05月31日 | アーティスト
風光の美しい季節。空間に色彩のドローイングを描くようなカラーフィールドを展開しているのが曽谷朝絵(そや・あさえ)さんです。この作品は、今年の1月に資生堂ギャラリー(銀座)で開催された曽谷朝絵「鳴る色」展に出品された1作です。
カッティングシートを使って、ダイナミックにギャラリー空間を構成し、重層的で複雑な視覚をつくりだしています。曽谷さんは8年前に、平面作家の登竜門となっているVOCA展で「Bathtub」でトップの賞を受賞。窓に落ちる雨のしずくや飛行機の窓に映る視覚の面白さなど、日常的な一瞬の視覚の不思議なリアリティを絵画に映し出してきました。そこから発展して「一つの色を置くとそれに連鎖して次の色が生まれる」(曽谷さんの言葉)ように色は音を発していると感じてきたと言います。音を視覚化した空間構成により、現実と非現実のきらめきへと誘います。