坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ビントレーバレエから生まれたハインデルの世界

2010年05月10日 | 展覧会
偶然街角で出会った絵に引きつけられることがあります。アメリカで活躍したロバート・
ハインデルの作品もとても情熱的でありながら画面構成に現代的なセンスを感じさせます。
代官山ヒルサイドフォーラム(渋谷区)で個展が9日まで開かれていて、その最終日に出かけました。今年9月より新国立劇場の舞踊芸術監督に就任されるデヴィッド・ビントレーの才能に喚起され、そのビントレーバレエの現代性を自己の芸術へと高めていったのです。そこに繰り広げられるバレエダンサーの躍動美を素早い線のタッチで簡潔にとらえ余白を生かした構成とロマン派的な光と影の表現に画家の鼓動が伝わってきます。東洋的な簡略の美を感じさせた作品のシリーズでした。ハインデルの世界は、www.art-obsession.comでご覧いただけます。

モネと言ったらマネでしょう!?

2010年05月10日 | 展覧会
「モネとは私とよく似た名前の画家がいるんだね」と、先輩格のエドゥアール・マネは、若い印象派画家たちを見守り、また思想的に理論的に先導し、印象派への架け橋となった画家として知られています。マラルメら詩人や文学者とも交友があり、生粋のパリジャンとして際立つ存在でした。現在、三菱一号館美術館(東京・丸の内)で開催されている「マネとモダン・パリ展」(7月25日まで)は、マネの機知あふれる才能と先見性を伝えてくれます。この美貌の女性は、ベルト・モリゾ。画家でありマネのモデルとしても多く登場しています。「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」(1873年)は、喪服姿の半身像をクローズアップして描いた作品。大きな筆のタッチで的確に省略化して対象をとらえ、黒を生き生きと使いこなす大人のしゃれたセンス。明治期の赤れんがの建物を復元して4月から美術館として本格的スタート。東京駅で時間が空いたら寄って見てはいかがでしょうか。