冷泉為相卿追善 於鎌倉浄光明寺 藤の座 | |||
(巻34と名残折表第四までは同じです) | |||
初折表 | |||
発句 | 声よりもすくなげなれや霧に雁 | 南天 | (注) |
脇 | 古き都も葉をそむる頃 | 初瀬 | |
第三 | 泉には十六夜の月冷えさびて | 鑑 | |
第四 | 色なき袖も風にさやけし | 梅豊 | |
第五 | 遠き峰流るる雲の宿るらむ | 直人 | |
第六 | 道づれならぬ旅はいつまで | 可矢 | |
第七 | 思はずの雪なほつらき今日の朝 | 和雄 | |
第八 | 埋もるままの庭のむら笹 | 素拙 | |
初折裏 | |||
第一 | 軒ちかく小すずめの声にぎはひて | 草芳 | |
第二 | 野辺のせせらぎ跳ぬる若鮎 | 鑑 | |
第三 | いづくよりおぼろに届く寺の鐘 | 初瀬 | |
第四 | いやます思ひへだつればこそ | 和雄 | |
第五 | 時経れど忘るものかは逢ふ日まで | 直人 | |
第六 | 待つも契りのならひなるらむ | 南天 | |
第七 | 門鎖さで文もやあるとたたずめり | 草芳 | かどささで |
第八 | 死なむずるかの岨伝ふ人 | 鑑 | そはつたふ |
第九 | 彼の岸に渡る術をばたびたまへ | 和雄 | |
第十 | 語りあかさむゆきかへる波 | 可矢 | |
第十一 | 由比が浜涼しき月の帯ゆれて | 初瀬 | |
第十二 | かすかに吹ける小野の松風 | 直人 | |
第十三 | 友よ来よかつ散る花を惜しまなむ | 南天 | |
第十四 | 歌を連ねて過ぐす永き日 | 素拙 | |
名残折表 | |||
第一 | うぐひすの初音聞かばや奥の寺 | ヒサヨ | |
第二 | 背戸の端山もいつか霞みぬ | 路光 | |
第三 | 尋め見まし春の色濃き杣の里 | さう美 | とめみまし |
第四 | いとしき妹の置きし玉章 | 純一 | |
第五 | なにやらむ衣のうつり香にほひきて | 梅豊 | |
第六 | 詫び偲びつつ幾夜重ねつ | 正謹 | |
第七 | 流れゆくうき世とどむる堰もがな | 和雄 | |
第八 | 願ひ聞きたべ水分の神 | 路光 | みくまり |
第九 | 涼風に茂りいや増す庭の草 | さう美 | |
第十 | 若葉の映ゆる遠き山々 | 純一 | |
第十一 | 野阜を杖に頼りて登りきぬ | 草芳 | のづかさ |
第十二 | 谷戸の御寺は露寒の中 | 正謹 | |
第十三 | 望月に虫やさしくも声そへて | 梅豊 | |
第十四 | 霧のとばりも晴れわたりけり | 直人 | |
名残折裏 | |||
第一 | 折からに沖たつ雲ぞ標なる | 和雄 | |
第二 | しぐるる雨のへだつ細道 | 純一 | |
第三 | もとほれば凍てし紙子はつらからむ | 路光 | |
第四 | 手にすくひしは朝の光よ | さう美 | |
第五 | さへづりの声にさそはれ開く窓 | 草芳 | |
第六 | 笛の調べはかげろひの先 | 純一 | |
第七 | 武士の都は花もいさぎよし | 正謹 | |
挙句 | 天のやさしさつつむ国原 | 直人 | |
(注)冷泉為相卿本歌(藤谷和歌集) 霧のうへにあまた聞きつる声よりも見ればすくなき雁の一つら |
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