むさしの連歌会

雅な和歌の言葉で連歌を楽しむ会、一度、のぞいてみませんか?

「ハイブリッド型」連歌会を始めました

2020年12月16日 | 近況

コロナ禍のもとで、いかに私たちの日常生活を維持していくか、これは難しい課題です。むさしの連歌会では、ここへきて新たな取り組みを始めました。実際に集まって詠む連歌会と、インターネットで詠み継ぐ連歌会の組合せ、いわば「ハイブリッド型」の連歌会です。

むさしの連歌会が今年の4月から「リモート連歌会」を開催していることは、既にお知らせしたとおりです。毎月2回の定例開催日の決められた時間帯に、参加者全員がパソコンやスマホに向かって、メールの「全員に返信」機能を使い情報を共有しながら付けていく方法です。そして、このやり方にも徐々に習熟、11月までに13回開催して、ほぼ4巻を詠み上げました。

しかし、これだけで満足しないのが、連歌の愛好者です。「やっぱり、一緒に顔を見ながら詠みたいよう!」、そうした声が高まってきました。ですが一方では、基礎疾患をかかえている人もいますし、家族に高齢者がいる人、連歌会の会場まで電車を乗り継いで来なければならない人もいます。情熱は同じでも、事情はさまざま。そこで考えたのが「ハイブリッド型」の連歌会です。

まずは、毎月2回の開催日に会場へ来ることができる人が、実際に顔合わせして詠めるだけの句を詠む。残りは、メールによる「文音(ぶんいん)連歌」の形式で、一人ずつ詠んでは次の人に回していくというやり方です。この間、発句は、むさしの連歌会伝統の「発句コンテスト」で決めていきます。ただし、これも今はリモート。会員全員からインターネットメールで発句を募り、匿名投票で選びます。立場は違っても、全員で一つの巻を詠み上げていくという気持ちに変わりはありません。この方式を通して巻き上げたのが、第64巻の賦何草連歌です。

このように色々な形で連歌を楽しむことができれば、コロナなどには負けません。感染状況がどのように推移しても、何れかの方式で連歌を詠み続けることができると思います。戦国の世も生き抜いてきた連歌、これを愛する連衆がいる限り、疫病程度でその灯が消えるはずはないのです。

でも、やっぱり皆で集まって、花の下、ゆったりと連歌をよみたいな。他の連歌会とも交流したいな。ワクチンや治療法が確立して、早くそうした世の中になって欲しいと願っています。


賦何草連歌(巻64、令和2年12月12満尾)

2020年12月12日 | 作品集

初折表    
発句 散りてなほ野に錦織るもみぢかな  
鴛も寄り添ふ薄氷の池 素拙  
第三 遠ち方の山に白雪照り映えて 純一  
第四 原にしるけきひとすぢの道 直人  
第五 都へと夢を抱きて急ぐらむ 素拙  
第六 とのゐまうしの声ぞ高かる  
第七 草に露宿かる月のはかなくて 直人  
第八 あはれをさそふ庭の松虫 純一  
初折裏    
第一 刈り終へし畑に雀の遊びおり 素拙  
第二 いつしか霧ぞなべてかくせる 直人  
第三 残り香に重なる恨みいかがせむ 純一  
第四 とはに会はじと文棄つるのみ 素拙  
第五 さりともと待つもむなしくぬれし袖 直人  
第六 救ひの法をなぐさめにせよ 純一  
第七 夏ごもり罪科あまたあふるるに 素拙  
第八 山ほととぎすきよきひと声 直人  
第九 見あぐれば小さき雲のたゆたひて 純一  
第十 朧に浮かぶ白き月影 素拙  
第十一 をちこちに消えがての雪残るころ 直人  
第十二 暖かき日に集ふ客人 純一  
第十三 わが宿の花は今しも盛りにて 梅豊  
第十四 名残りつきせぬ遅き夕暮 素拙  
名残折表    
第一 はるけくも伊勢の御社詣づべし 純一  
第二 連ぬる船の水夫のをたけび 直人 かこ
第三 荒波に的を射抜けと目を閉じて 素拙  
第四 昔のことぞしばし偲ぶる 梅豊  
第五 文机の奥に形見の赤き櫛 弓子  
第六 涙こぼれて海か硯は 典子  
第七 墨染の衣にほはす深山風 草芳  
第八 落葉ののちの庵のしづけさ さう美  
第九 通ひ路はそことしもなく霜さえて 和雄  
第十 ほのに幽けき人の踏みあと 路光  
第十一 野宮の注連の内とはいひながら 南天  
第十二 小笹隠れにすだく虫の音 弓子  
第十三 秋深み臥し待ち月やうらさみし 典子  
第十四 川霧はやも立ちこめてけり 草芳  
名残折裏    
第一 島出づる舟残してやひとつすぢ さう美  
第二 追風まかせの波路はるけし 和雄  
第三 青草のにほふ国辺に帰らばや 路光  
第四 暮れて蛍に馴れしかの軒 南天  
第五 四つの緒の調べにいつかまどろみて  
第六 こころ楽しむ春ののどけさ 梅豊  
第七 散らぬまに花のやしろをいざとはむ 直人  
挙句 旅立ちをせく若駒の声