冷泉為相卿追善 於鎌倉浄光明寺 扇の座 | |||
(巻35と名残折表第四までは同じです) | |||
初折表 | |||
発句 | 声よりもすくなげなれや霧に雁 | 南天 | (注) |
脇 | 古き都も葉をそむる頃 | 初瀬 | |
第三 | 泉には十六夜の月冷えさびて | 鑑 | |
第四 | 色なき袖も風にさやけし | 梅豊 | |
第五 | 遠き峰流るる雲の宿るらむ | 直人 | |
第六 | 道づれならぬ旅はいつまで | 可矢 | |
第七 | 思はずの雪なほつらき今日の朝 | 和雄 | |
第八 | 埋もるままの庭のむら笹 | 素拙 | |
初折裏 | |||
第一 | 軒ちかく小すずめの声にぎはひて | 草芳 | |
第二 | 野辺のせせらぎ跳ぬる若鮎 | 鑑 | |
第三 | いづくよりおぼろに届く寺の鐘 | 初瀬 | |
第四 | いやます思ひへだつればこそ | 和雄 | |
第五 | 時経れど忘るものかは逢ふ日まで | 直人 | |
第六 | 待つも契りのならひなるらむ | 南天 | |
第七 | 門鎖さで文もやあるとたたずめり | 草芳 | かどささで |
第八 | 死なむずるかの岨伝ふ人 | 鑑 | そはつたふ |
第九 | 彼の岸に渡る術をばたびたまへ | 和雄 | |
第十 | 語りあかさむゆきかへる波 | 可矢 | |
第十一 | 由比が浜涼しき月の帯ゆれて | 初瀬 | |
第十二 | かすかに吹ける小野の松風 | 直人 | |
第十三 | 友よ来よかつ散る花を惜しまなむ | 南天 | |
第十四 | 歌を連ねて過ぐす永き日 | 素拙 | |
名残折表 | |||
第一 | うぐひすの初音聞かばや奥の寺 | ヒサヨ | |
第二 | 背戸の端山もいつか霞みぬ | 路光 | |
第三 | 尋め見まし春の色濃き杣の里 | さう美 | とめみまし |
第四 | いとしき妹の置きし玉章 | 純一 | |
第五 | 墨の香に独り寝ぬ夜は恋こがれ | 鑑 | |
第六 | 胸の埋火筆にたくさむ | 初瀬 | |
第七 | 冬構うそかまことか嘯きて | よしお | |
第八 | 国のあるじを誰か認むる | 素拙 | |
第九 | 白雲の生駒の峰にはためきぬ | 南天 | |
第十 | 明日の首途に幣を手向けむ | 可矢 | |
第十一 | 御心のままに紅葉の庭を見て | 裕雄 | |
第十二 | 池の水面に月やどりけり | 龍哉 | |
第十三 | 歌人をしのびて仰ぐ秋の空 | ヒサヨ | |
第十四 | 思ひは遠きたらちねの母 | 鑑 | |
名残折裏 | |||
第一 | ひとたれの雨やいはほもうがつとて | 初瀬 | |
第二 | 苔あをあをし道の行末 | 可矢 | |
第三 | 草分けの汗もひぬまに夕暮れぬ | 南天 | |
第四 | 広き河辺に水鶏鳴く声 | よしお | |
第五 | 白き帆は風をゆたかに含みけり | ヒサヨ | |
第六 | 霞にこもる里ぞゆかしき | 素拙 | |
第七 | 花開く鎌倉山の歌筵 | 裕雄 | |
挙句 | 扇が谷の春のよそほひ | 龍哉 | あふぎがやつ |
(注)冷泉為相卿本歌(藤谷和歌集) 霧のうへにあまた聞きつる声よりも見ればすくなき雁の一つら |
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