むさしの連歌会

雅な和歌の言葉で連歌を楽しむ会、一度、のぞいてみませんか?

賦夕何連歌(巻69、令和3年4月18日満尾)~猪苗代兼載翁追善花の下~

2021年04月18日 | 作品集

 (猪苗代兼載翁の墓所のある満福寺)

初折表    
発句 春を惜しめさかりの花に風もなし 兼載  
ほのかに聞こゆうぐひすの声 純一  
第三 川波は霞の色にこめられて 梅豊  
第四 あやつる棹にさかる柴舟 可矢  
第五 道芝における露霜まてしばし 直人  
第六 遠き山辺は鹿ぞなくらむ  
第七 いつの間に袖にやどれる月の影 典子  
第八 旅の枕のなどて霑るる 路光 しほるる
初折裏    
第一 村雨のとぼそをたたく駅にて 弓子 うまや
第二 問はず語りも尽きぬなぐさみ 南天  
第三 ほど経ればたがひに心かよふらむ 和雄  
第四 昆陽のたよりを忘れやはする 梅豊 こや
第五 池の辺のあしふく庵は涼しきに 純一  
第六 はちすの花は西の迎へか 直人  
第七 かにかくに憂しと見し世ぞなつかしき 可矢  
第八 むなしき空をわたる雁がね 典子  
第九 山道を行く旅衣さやかにて  
第十 嶺のあはひに匂ふ望月 弓子  
第十一 時なへば薄き横雲つきづきし 路光  
第十二 おぼろなる野は草の下萌え 和雄  
第十三 隠れ棲む辺りはそこと梅の花 南天  
第十四 春のけはひに迷ひあらじな 純一  
名残折表    
第一 浅渡りいさら小川もぬるみつつ 梅豊  
第二 音すがすがし今朝の柏手 可矢  
第三 俱利伽羅のいくさを前に神酒すゑて 直人  
第四 思ひ伝ふる文運ぶ鳥  
第五 宵宵にあひみることをたのむらむ 典子  
第六 いくそ涙のしむる枕香 路光  
第七 しるべせよ古河漕ぐ舟の渡し守 和雄  
第八 我がむさし野のゆかりたずねむ 南天  
第九 うちなびく高草の道霧深し 純一 たかがや
第十 紅葉のみこそ色に知らるれ 梅豊  
第十一 住みなれぬ身にやや寒き里にして 可矢  
第十二 暮るる尾の上に嵐ふくらし 直人  
第十三 霜結ぶみ寺の庭を染むる月  
第十四 こころしづかに影をしのばむ 典子  
名残折裏    
第一 片ほとり鄙に起き伏し過ぐしつつ 路光  
第二 衣を更へてうたふひとふし 和雄  
第三 かきつばたその名どころの途次 南天 みちすがら
第四 薄紫に映ゆるいけなみ 純一  
第五 あけぼのの東風やはらかに野を撫でて 梅豊  
第六 消えゆく雪のあはき山の端 可矢  
第七 咲きそめし花をつとにと折るほどに 直人  
挙句 こてふ舞ひ来る村の別れ路  

賦唐何連歌(巻68、令和3年4月1日満尾)

2021年04月01日 | 作品集

  (発句詠者提供)

初折表    
発句 八重に咲く梅は紅匂ふかな 典子  
霞こめたるけさの御園生 弓子  
第三 遠山に残りし雪もはや消えて 直人  
第四 峡の早瀬にまさる川音 路光  
第五 風さわぎ舟も帰りをいそぐらむ 可矢  
第六 中空かけて雁のひとつら 草芳  
第七 待ちをれば旅寝の袖に月はえて 和雄  
第八 草の葉末に露ぞ零るる  
初折裏    
第一 時の間にしぐれの雲の幾重にも 初瀬  
第二 ものみな寒き冬の山里 梅豊  
第三 かなしくもつれなき女を忘られじ 純一 ひと
第四 すさみて筆のかはく間もなし 典子  
第五 玉の緒の絶えてはかなき恋ならむ 弓子  
第六 ただながむるは夕立の空 直人  
第七 深草のしげりもさこそ萎れつれ 路光  
第八 名は残れども惜しき命や 可矢  
第九 歌ありて遠き世近くしのぶなり 草芳  
第十 あはれ知るらむ春の夜の月 初瀬  
第十一 あたたかき野道を急ぐ墨衣  
第十二 寺井の水もほのぬるむらし 和雄  
第十三 もろともに花よこの日を惜しまなむ 梅豊  
第十四 こち吹く宮に光のどけし 純一  
名残折表    
第一 おもしろき旅の山路を語るらむ 典子  
第二 酒酌み交はす庵の軒先 弓子  
第三 ほととぎす声待つほどに暮れゆきて 直人  
第四 来べき宵かと騒ぐささがに 路光  
第五 何せむに細き糸筋たのむらむ 可矢  
第六 思ひのけぶり立ちまよひつつ 草芳  
第七 忘れじや碁を打つ君の笑まひ顔 和雄  
第八 雨風強き石多き道  
第九 世の中はただあらましのつづきにて 初瀬  
第十 明日香の川の早き淵瀬や 梅豊  
第十一 みほとけに救ひ求めむひとすぢに 純一  
第十二 かきなす琴の音こそ身にしめ 典子  
第十三 弓張の月や雲間に見え隠れ 弓子  
第十四 あてに匂へる垣の白菊 直人  
名残折裏    
第一 色変へぬ松の操をならひてや 路光  
第二 千年は言はじ生きむ百年 可矢  
第三 唐衣まとふあゆまひ軽らかに 草芳  
第四 はるばる来ぬる道のゆかしさ 和雄  
第五 八重霞む夕くれなゐを惜しみつつ 梅豊  
第六 瀬も無き川の水ぬるむころ 初瀬  
第七 鳥や知るいづくの花ぞ盛りける  
挙句 うたのむしろを楽しめる春 純一  

 


今年も「花の下連歌」をリモートで開催します

2021年04月01日 | 近況

むさしの連歌会では、新型コロナに対応して、昨年の春からリモートで連歌会を催してきました。途中、流行がやや下火になった時は、実際に顔を合わせて詠むリアルの連歌会とリモートとを組み合わせるハイブリッド型連歌会に転換したこともあったのですが、今はまたメールで膝送りする文音形式で巻いています。何百年も続いてきた連歌、コロナごときには負けられません。

伝統の継続といえば、むさしの連歌会では、猪苗代兼載翁のお墓がある満福寺で地元古河市の方々と一緒に、ここ10年ほど「花の下連歌」を続けてきました。しかし、今は大勢で押しかける訳にはいきません。そこで、昨年と同様、メール文音形式で「猪苗代兼載翁追善 花の下連歌会」を張行することにしました。

発句は、兼載翁の「春を惜しめさかりの花に風もなし」。むさしの連歌会のメンバー十数名が今日から、これに付けていきます。巻き上がったら、またブログにアップしますのでご覧下さい。

猪苗代兼載翁は、宗祇翁とともに正風連歌の黄金時代を築いた人。その活動時期は、応仁の乱以降の戦国時代と重なっていますから、さぞ色々なご苦労をされたことと思います。それに比べると、現代の我々の苦労など大したことはないと、彼の岸から見て笑っておられるかもしれません。でも、連歌の後輩たちの熱意は汲んで下さると思います。

むさしの連歌会の古河在住メンバーが、今の満福寺の様子を写真に撮ってきてくれました。今年は花が早いといっても、古河ではまだ散り初めの見頃のようです。一昨年までは、この下で実際に連歌を巻いていたので懐かしい限りです。リモートといっても花の下は花の下。楽しい連歌会にいたしましょう。