むさしの連歌会

雅な和歌の言葉で連歌を楽しむ会、一度、のぞいてみませんか?

10月23日「浄光明寺 鎌倉連歌会」を張行しました

2018年10月29日 | 近況

鎌倉扇ヶ谷の古刹「浄光明寺」は、藤原定家の孫で歌道冷泉家の祖となった為相卿ゆかりのお寺です。その母は十六夜日記を書いた阿佛尼と言えば、ごぞんじの方も多いと思います。所領の相続のことで幕府に訴え出た阿佛尼と同様、為相卿も鎌倉に下向して扇ヶ谷のそばの藤ヶ谷に住み、鎌倉連歌・歌壇の指導や発展に力を尽くしたとのことです。今は残っていませんが、連歌の世界では「藤谷式目」を作ったことでも知られています。

むさしの連歌会は、毎春、猪苗代兼載のお墓がある古河の「満福寺」(栃木県)で、花の下連歌を開催しています。兼載は、宗祇とともに戦国時代の連歌の興隆をになった人なので、連歌フアンにはおなじみかもしれません。関東でもう一つの連歌ゆかりの地、鎌倉においても連歌会を開催できないかと、鎌倉に住む当会会員が浄光明寺のご住職にご相談したところ、快諾して下さいました。おかげさまで10月23日、その本堂において第一回の「冷泉為相卿追善 鎌倉連歌会」を張行することができました。

当日は、連歌界の重鎮である鶴崎裕雄先生や、大阪で長く連歌会を主催しておられる杭全(くまた)神社の藤江宮司様、また遠く古河の会員や地元鎌倉の見学者も迎えることができました。記念すべき会になったと思います。ご住職の龍哉師も、連歌は初めて言いながら二句を詠まれる巧者ぶり。さすが連歌ゆかりの古刹で、みな楽しい時を過ごしました。

当日の流れを、写真とともにご紹介しましょう。鎌倉駅に集合した後、徒歩で十数分の浄光明寺本堂に参集。まずは裏山にある為相卿の墓所をお参りしました。

それから本堂に戻り、ご住職、藤江宮司と当会代表池田南天からの挨拶等の後、扇の座と藤の座に分かれて世吉を巻き上げました。最後は、鶴崎先生のご講評です。

そして、連衆みんなが詠んだ句を懐紙に書き上げ、為相卿の霊位に奉納して退出しました。ちょっと誇らしい気持ちです。仏前には、江戸時代に冷泉家を中興した為村卿の懐紙も飾られており、お寺と冷泉家との深い繋がりも感じられました。

帰路は、藤ヶ谷にある阿佛尼の墓所にも参拝。夜は、鎌倉駅前の川端康成・大佛次郎ゆかりのお店で楽しく喉をうるおし、実り多い一日を終えました。

ご住職のご厚意もあり、来年も同じ場所で鎌倉連歌会を張行することができます。このブログをお読みになった連歌フアンの皆さん、ぜひ来年はご参加ください。連歌のネットワークがますます広がっていくことを、会員一同、心から願っています。


賦千何連歌(巻35、平成30年10月23日満尾、鎌倉連歌会)

2018年10月29日 | 作品集
       
冷泉為相卿追善 於鎌倉浄光明寺 藤の座    
  (巻34と名残折表第四までは同じです)    
初折表    
発句 声よりもすくなげなれや霧に雁 南天 (注)
古き都も葉をそむる頃 初瀬  
第三 泉には十六夜の月冷えさびて  
第四 色なき袖も風にさやけし 梅豊  
第五 遠き峰流るる雲の宿るらむ 直人  
第六 道づれならぬ旅はいつまで 可矢  
第七 思はずの雪なほつらき今日の朝 和雄  
第八 埋もるままの庭のむら笹 素拙  
初折裏    
第一 軒ちかく小すずめの声にぎはひて 草芳  
第二 野辺のせせらぎ跳ぬる若鮎  
第三 いづくよりおぼろに届く寺の鐘 初瀬  
第四 いやます思ひへだつればこそ 和雄  
第五 時経れど忘るものかは逢ふ日まで 直人  
第六 待つも契りのならひなるらむ 南天  
第七 門鎖さで文もやあるとたたずめり 草芳 かどささで
第八 死なむずるかの岨伝ふ人 そはつたふ
第九 彼の岸に渡る術をばたびたまへ 和雄  
第十 語りあかさむゆきかへる波 可矢  
第十一 由比が浜涼しき月の帯ゆれて 初瀬  
第十二 かすかに吹ける小野の松風 直人  
第十三 友よ来よかつ散る花を惜しまなむ 南天  
第十四 歌を連ねて過ぐす永き日 素拙  
名残折表    
第一 うぐひすの初音聞かばや奥の寺 ヒサヨ  
第二 背戸の端山もいつか霞みぬ 路光  
第三 め見まし春の色濃き杣の里 さう美 とめみまし
第四 いとしき妹の置きし玉章 純一  
第五 なにやらむ衣のうつり香にほひきて 梅豊  
第六 詫び偲びつつ幾夜重ねつ 正謹  
第七 流れゆくうき世とどむる堰もがな 和雄  
第八 願ひ聞きたべ水分の神 路光 みくまり
第九 涼風に茂りいや増す庭の草 さう美  
第十 若葉の映ゆる遠き山々 純一  
第十一 野阜を杖に頼りて登りきぬ 草芳 のづかさ
第十二 谷戸の御寺は露寒の中 正謹  
第十三 望月に虫やさしくも声そへて 梅豊  
第十四 霧のとばりも晴れわたりけり 直人  
名残折裏    
第一 折からに沖たつ雲ぞ標なる 和雄  
第二 しぐるる雨のへだつ細道 純一  
第三 もとほれば凍てし紙子はつらからむ 路光  
第四 手にすくひしは朝の光よ さう美  
第五 さへづりの声にさそはれ開く窓 草芳  
第六 笛の調べはかげろひの先 純一  
第七 武士の都は花もいさぎよし 正謹  
挙句 天のやさしさつつむ国原 直人  
       
(注)冷泉為相卿本歌(藤谷和歌集)
   霧のうへにあまた聞きつる声よりも見ればすくなき雁の一つら
 

賦千何連歌(巻34、平成30年10月23日満尾、鎌倉連歌会)

2018年10月29日 | 作品集
       
冷泉為相卿追善 於鎌倉浄光明寺 扇の座    
  (巻35と名残折表第四までは同じです)    
初折表    
発句 声よりもすくなげなれや霧に雁 南天 (注)
古き都も葉をそむる頃 初瀬  
第三 泉には十六夜の月冷えさびて  
第四 色なき袖も風にさやけし 梅豊  
第五 遠き峰流るる雲の宿るらむ 直人  
第六 道づれならぬ旅はいつまで 可矢  
第七 思はずの雪なほつらき今日の朝 和雄  
第八 埋もるままの庭のむら笹 素拙  
初折裏    
第一 軒ちかく小すずめの声にぎはひて 草芳  
第二 野辺のせせらぎ跳ぬる若鮎  
第三 いづくよりおぼろに届く寺の鐘 初瀬  
第四 いやます思ひへだつればこそ 和雄  
第五 時経れど忘るものかは逢ふ日まで 直人  
第六 待つも契りのならひなるらむ 南天  
第七 門鎖さで文もやあるとたたずめり 草芳 かどささで
第八 死なむずるかの岨伝ふ人 そはつたふ
第九 彼の岸に渡る術をばたびたまへ 和雄  
第十 語りあかさむゆきかへる波 可矢  
第十一 由比が浜涼しき月の帯ゆれて 初瀬  
第十二 かすかに吹ける小野の松風 直人  
第十三 友よ来よかつ散る花を惜しまなむ 南天  
第十四 歌を連ねて過ぐす永き日 素拙  
名残折表    
第一 うぐひすの初音聞かばや奥の寺 ヒサヨ  
第二 背戸の端山もいつか霞みぬ 路光  
第三 め見まし春の色濃き杣の里 さう美 とめみまし
第四 いとしき妹の置きし玉章 純一  
第五 墨の香に独り寝ぬ夜は恋こがれ  
第六 胸の埋火筆にたくさむ 初瀬  
第七 冬構うそかまことか嘯きて よしお  
第八 国のあるじを誰か認むる 素拙  
第九 白雲の生駒の峰にはためきぬ 南天  
第十 明日の首途に幣を手向けむ 可矢  
第十一 御心のままに紅葉の庭を見て 裕雄  
第十二 池の水面に月やどりけり 龍哉  
第十三 歌人をしのびて仰ぐ秋の空 ヒサヨ  
第十四 思ひは遠きたらちねの母  
名残折裏    
第一 ひとたれの雨やいはほもうがつとて 初瀬  
第二 苔あをあをし道の行末 可矢  
第三 草分けの汗もひぬまに夕暮れぬ 南天  
第四 広き河辺に水鶏鳴く声 よしお  
第五 白き帆は風をゆたかに含みけり ヒサヨ  
第六 霞にこもる里ぞゆかしき 素拙  
第七 花開く鎌倉山の歌筵 裕雄  
挙句 扇が谷の春のよそほひ 龍哉 あふぎがやつ
       
(注)冷泉為相卿本歌(藤谷和歌集)
   霧のうへにあまた聞きつる声よりも見ればすくなき雁の一つら