むさしの連歌会

雅な和歌の言葉で連歌を楽しむ会、一度、のぞいてみませんか?

賦玉何連歌 百韻 ~東都連歌会以来第百巻~(巻87、令和4年12月22日満尾)

2022年12月22日 | 作品集

(梅豊寫)

初折表      
発句 来しや今朝初水鳥の名のり声 梅豊  
池に寒々八重のさざ波 初瀬  
第三 出でたちは佳き裘の装ひにて 路光 けごろも
ただ漂へる峰の白雲 純一  
木々高み道なほ暗き昼つ方  
野草隠れの露やむつるゝ 南天  
さやかなる月の光のさす庭に 弓子  
心づくしの秋風ぞふく 直人  
初折裏      
をりしもと手馴れの琴をつまびきて 和雄  
はなやまぶきの袖もうるはし 梅豊  
残る香に恨むばかりや春の暮 初瀬  
のどけき空をよそに恋病み 路光  
たをやめに尽きせぬ思ひ伝へばや 純一  
沖漕ぐ舟の幾日経る旅  
異浦のしらぬ湊に泊りして 南天  
吾を待つ子らに苞ぞ求むる 弓子  
ほととぎすすぎにし人を語らなむ 直人  
常なき色の月の短夜 和雄  
十一 飽かざりしながめの内のつれづれに 深峰  
十二 ところどころは霞む遠山 初瀬  
十三 たづぬれば花もさかりになりにけり 梅豊  
十四 こきむらさきの菫つむころ 純一  
二折表      
むさしのは佳き人多き歌筵 路光  
あまねく家の風わたるらむ 南天  
悟り得て小暗き道も軽ろらかに  
かげに涙のあるを知らずや 直人  
間遠にて早やあかときの乱れ髪 弓子  
柳の眉も開けざらまし 深峰  
霜こほる深山の里の静けさに 和雄  
炭焼きごろも着なれしやいつ 梅豊  
賎の男か柴負ふ腰はかゞまりて 専順  
みなとも知らず宇治の川舟 路光  
十一 霧深み猶予ふ波の声を聞け 純一 いさよふ
十二 夜寒にいそぐ都への旅  
十三 月こそは去年いひおきしちぎりなれ 南天  
十四 逢瀬なきまま秋も去ぬめり 弓子  
二折裏      
破るもをし見るもつらかる文積みて 直人  
坂の小車おもき恋草 和雄  
あふひとて心争ふ石の火に 深峰  
朽つる鳥居の影ぞさびたる 心敬  
うすくこく嵯峨の古道こけむして 梅豊  
日暮れそむるかこがらしも憂し 純一  
河づらに連れ舞ひあそぶ都鳥 路光  
思ふ人はと言問ふやたれ 南天  
忍ぶれどたぎつ心をせきかねて  
ぬれし袂に春の夜の月 直人  
十一 淡雪の残る山峡尋ね入り 弓子  
十二 懐けむ蝶と見るはうつつか 深峰  
十三 手に散れば花のひとひらゆかしくて 和雄  
十四 こちふく風のしづかなる里 純一  
三折表      
古めくもつひの住み処ぞ安らけき  
わが敷島のみちやいつまで 南天  
八雲立つ出雲の宮にたづねまし 初瀬  
霜に跡なき神の集ひよ 弓子  
結ぶにも解くにも遠き夢枕 深峰  
まれの逢瀬を待つもあだなり 路光  
玉藻刈る袖だにかくは濡れなくに 梅豊  
花たちばなをよそにやは見る 直人  
墨の香に心しづむる習ひとて 和雄  
西の迎へは時を選ばず  
十一 雁の声いくさに邑は人もなし 純一 むら
十二 かなしからずや風の下露 初瀬  
十三 月もはや入佐の山辺暗くして 南天  
十四 あはれいづくも命なりける 深峰  
三折裏      
永らへば憂しと見し世やしのばれむ 弓子  
常にもがもな庭の松が枝 梅豊  
さしくみに降りしく雪も友として 路光  
駒を急がす遠の駅路 和雄  
恋しさをおさへかねたる中空に 直人  
夫を忘られじ領巾振りし山 純一
契れどもまどふ心に君の影  
まだしき萩を折りなやつしそ 南天  
もの思ふ秋の籬の色さびし 初瀬  
雲に隠るる月よ出でませ 弓子  
十一 こりずまに見しは都か巡りあはむ 深峰  
十二 われに先立ち帰るかりがね 路光  
十三 身を忘れあかでくらせる花の下 梅豊  
十四 のどかなる日もかりの宿りよ 直人  
名残表      
手向け歌こころひろ田の御前なり 和雄  
祈りかなひて病おこたる  
五月雨に軒のくすだま色映えて 純一  
根よ長かれと菖蒲引く袖 初瀬  
すめらぎは笛の器ときこゆなり 南天  
空吹く風に翔ける大鳥 深峰  
なづみ来し羽易の山に妹ありて 弓子 はがひ
言ひ交はせしを忘るべしやは 梅豊  
逢はざれば隔て心もおぼゆらむ 路光  
なほ消え残る磯の藻塩火 和雄  
十一 波の音かへす浜辺に霧たちて 直人  
十二 薄にすがる露ぞはかなき 純一  
十三 故郷に語らふ月のすみまさり  
十四 渡る秋沙の越すや小初瀬 南天  
名残裏      
山風はよきもあしきもへだてせず 初瀬  
甍ぬらして過ぐる村雨 弓子  
なべてみな紅にほふ朝日影 深峰  
それかあらぬか野辺のかぎろふ 路光  
いかばかり水ぬるむらむいさら川 梅豊  
うららになびく青柳の糸 直人  
色ゝの花咲きまじれ大八洲 和雄  
挙句 霞なほ立つ遠き道行き