2013年 日本 宮崎駿監督
宮崎駿作品は苦手だ。しかし、複数の映画サークルで課題となったため、仕方なく観たが、やはり好きにはなれなかった。
足が地に着いていないのだ。絵空事のような世界が展開し、しらけるばかりだった。
なぜか?
第一に、女性が男性の視点から描かれているのだ。
”美人薄命”を地で行くようなヒロイン。あの時代にあって、不治の病に冒されている彼女は、恋愛に命をかけて死 . . . 本文を読む
2013年、日本、青山真治監督
オイデプス王と王女メディアの悲劇を想起させる家族の物語。息子は同居している父の愛人と、父は息子の恋人と交わり、母は夫にとどめをさす。
都会から離れた小さな田舎町。町を貫く淀んだ河口に架かる大橋。「河は女の割れ目」という父は、それを跨ぐ橋に自分を重ね、「この河の傍ではセックスしか楽しみがない」とのたまう。
この町の神社の境内で知り合った父と母。父は筋金入り . . . 本文を読む
2012年、韓国、ホン・サンス監督
言語は、それを書いたり口から発せられたりした瞬間から1人歩きする。本人の意図と受け手の解釈との間に裂け目が生じ、オリジナル性は失われ、他者に委ねられるからだ。
とりわけ書き言葉は、本人の在不在に関わらず(死後も)、他者の眼に触れるため、多様な解釈・引用・接ぎ木などによって、無限に新たな意味(差異)を獲得・創出することができる。
本作で映画学校の . . . 本文を読む
2013年、日本、降旗康男監督
我が国の右傾化が話題になる昨今、「東宝」というメジャーな映画会社により、反戦メッセージ満載の本作が製作されたことは賞賛に値するといえよう。
しかし、現存者の自伝映画は、本人に対するリスペクトもあってか、美化されがちだ。川本三郎の『マイ・バック・ページ』もそんな傾向があり、私は評価していない。
日本を代表する舞台美術家の一人、 妹尾河童(1930年生まれ . . . 本文を読む
2012年、イギリス、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督
あまりにもステレオタイプで、予定調和とご都合主義丸出しの退屈な作品だ。俳優がテレンス・スタンプ&ヴァネッサ・レッドグレイブと豪華なので、もっと深みがあるのかと期待していたが、単純なお涙頂戴ものに過ぎなかった。
老人の音楽もの映画といえば、アマチュアでは『白百合クラブ東京に行く』や『ヤング@ハート』など、プロでは『ブエナ・ビスタ・ . . . 本文を読む
2012年、フランス・エストニア・ベルギー、イルマルラーグ監督
「老い」をテーマに据えた、シリアスな作品である。85歳のジャンヌ・モローが、金持ちの我が儘かつ意地悪ばあさんを過剰なまでに演じている。いつまで経っても女を失わず、生々しいありように驚愕する。
対する世話役の50代の家政婦は、美しく慎ましやかで大変真面目。
噛み合わない2人を繋ぐのは、近所にあるカフェの経営者。彼はこの老婦人 . . . 本文を読む
2012年 韓国 キム・ギドク監督
(ネタバレナシ)
彼の真っ直ぐな眼差しが私をガツーンと打ちのめした。観終わってからもなかなか立てない。キム・ギドク監督は、訴えたいことを直球で観客に投げ、その反応を注視するのだ。
「金で人を試す悪魔」と呼ばれる借金取り立て屋の主人公。天涯孤独の彼の前に突然、彼を捨てた母と名乗る女が現れる。
一方的に母性愛を注ぐ女。思いがけず家族を得て、幼児帰り . . . 本文を読む
2013年 日本 原恵一監督
伝記映画を一代記としてではなく、ある期間に集約して表現するという本作の手法は、スピルバーグ監督の近作『リンカーン』を想起させる。戦時中、失意のうちに帰郷した木下恵介監督の数日間のエピソードを丹念に描くことで、その人柄や思想、家庭、時代背景などを浮き彫りにする仕掛けである。
しかし、シンプルさゆえに端正すぎる仕上がりとなり、物足りなさが残る。上映時間の2割以上を . . . 本文を読む
2012年 デンマーク/監督 スサンネ・ビア
デンマークのシリアスドラマの鬼才スサンネ・ビアが、イタリア・ソレントを舞台に大人のためのラブコメディを作った。
原題は『坊主のヘアドレッサー』。がん治療で頭髪が抜け、ヘアーウィッグが手放せない女性美容師が主役だけに、常に死の影がつきまとう辛口の内容だ。
「素のままであること=坊主」と「表面を整えること=ヘアドレッサー」 という2つの矛盾を生 . . . 本文を読む
観ている間中幸福感に浸れる数少ない作品で、心が和み元気がもらえる。とかく殺伐とした現代にあって、束の間とはいえ、ほんわか気分になれるのもいいものだ。
ある日突然、「貴男の息子を預かって」と告げられ、15歳のルカと同居するはめになった元高校教師の独身ゴーストライター&家庭教師・ブルーノ。ルカの母親は「父親であることは伏せておいて」と言い、赴任先のマリに旅立ってしまう。
戸惑いながらも . . . 本文を読む
「映画はモーション(動作)がエモーション(感動)を作ってきた」と語るレオス・カラックスが、13年ぶりに怪作を撮った。タイトルバックから随所に映画へのオマージュがちりばめられている。
のっけから、世界最初の映画といわれるリュミエール兄弟のシネマトグラフィの上映以前に、生理学者&写真家のマレーが撮った連続写真(動く少年)が提示される。
カラックスは、そこに原初的な「行為の美しさ」を見出していた . . . 本文を読む
女性用ヴァイブレーターの開発秘話がベース。ちょっと引いてしまいそうな内容だが、女性監督ならではのフェミニズムを絡めた清々しい仕上がりになっている。
イギリスのヴィクトリア朝(1837~1901)末期が舞台だ。産業革命がもたらした経済の発展が成熟に達したイギリス帝国の絶頂期である。
産業革命による労働者搾取と植民地支配による領民搾取により、人々の生活水準は向上したが、貧富差はますます拡大し . . . 本文を読む
低予算のため、時代考証に難がある、と言う人も多いが、作品の世界観に魅せられ、そうしたことが全く気にならずにのめり込んで観ていた。
中本の男たちの得も言われぬ美しさと、オリュウの地母神のようなパワーに打ちのめされたのである。
「路地」は人間界のメタファーだ。欲望と暴力、差別など が渦巻く迷路。曲がりくねった細い坂道は、誰もが辿る苦難の人生を表している。
坂の最高地点で暮らす産婆のオリュウと . . . 本文を読む
第2次世界大戦の帰還兵フレディと「ザ・マスター」と呼ばれる新興宗教の教祖トッドは、偶然の出会いにしてはあまりにも強い絆で結ばれている。なぜか?
ラスト近くでトッドは「前世で、僕たちは戦場で伝書鳩を放ったところ、2羽だけ帰ってきた」と言う。
旧約聖書のノアの方舟では、放った鳩が一度目は戻ってきたが、二度目は戻ってこなかった。トッドは伝書鳩を自分たちに置き換え、”前世から戦友として強く結 . . . 本文を読む