ほんとうのことを言うと

私がほんとうのことを言うと
世界が凍る
と詩人はうそぶく

たとえばテレビで芸能人が
建前をわきまえない新人が吐く本音で
凍りつく
というシーンは想像可能だ
大御所を
さらっと
知らないうちに皮肉ってしまう
みたいな

ナイーブな子どもは
知らないうちに
まわりを凍りつかせる

だからだれだって
ほんとうのことを言って
その場を凍りつかせること
は可能なのだ
詩人でなくたって

少なくとも詩人は
そのことに
自覚的でなければならない
すべてを
凍りつかせることができる
のだが
の
だが
を
知っていなければならない
額縁のなかで区切られた場所に限っては
凍りつかせることもできるのだ
と思わせなければならない

実世界はもちろん別で
額縁の中で
あたかも
凍りついているように見えるだけですよ
と

詩人はそのことに自覚的でなければならない

つまりほんとうは
わたしは
世界のすべてを凍りつかせるようなほんとうのことを
知っている
ということだ

口にして言わないだけで