菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

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女子供にゃ弱いが悪には強いワンパン鈍足人情デカvs獣のごときナイフ瞬殺狂気ヤクザ  『犯罪都市』(2017)

2018年05月15日 00時00分13秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1299回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

 

『犯罪都市』(2017)

 

 

 

 

 

ソウルのリトル・チャイナ化した地区はいくつかのギャング同士で危うい均衡を保っていたが、新たな中国系韓国人ギャングが乗り込んできて秩序は崩壊、それを対策班の刑事チームが止めようとして起こった四つ巴の壮絶な争いが巻き起こる、という2000年代の2つの実話を基にフィクショナイズした迫力の肉弾アクション満載のサスペンス。

 

主演と企画は、『新 感染 ファイナル・エクスプレス』、『グッバイ・シングル』のマ・ドンソク。
彼がついにブレイクし、韓国で年間興行成績4位のサプライズ大ヒット。

 

監督と脚本は、カン・ユンソン。

これが映画監督デビュー作となる現在47歳の新人監督。

 

 

 

 

物語。

2004年のソウル郊外。
衿川(クムチョン)警察強力班の副班長マ・ソクトは拳自慢の強面ながらヤクザも弱者も分け隔てない人情刑事。
町は、地元暴力団のイス組と毒蛇組やソウルの巨大韓国暴力団が対立していたが、ソクトが睨みをきかせつつ立ち回って、ぎりぎりのバランスを保ってきた。
そんな中、残忍なチャン・チェン率いる朝鮮系中国人(朝鮮族)ギャング三人組が密入国し、指名手配を逃れ、借金取り立てを残虐な暴力任せで行っていた。
彼らのシマに遊びに来た毒蛇組の組員がギャンブルで借金をしてしまい、チャン・チェンら3人がその取り立てに衿川にやってくる。

 

 

 

 

出演。
マ・ドンソクが、刑事のマ・ソクト。


ユン・ゲサンが、朝鮮族のチャン・チェン。
チン・ソンギュが、子分のウィ・ソンラク。
キム・ソンギュが、手下のクンテ。

チョ・ジェユンが、ソウルの暴力団を率いるファン社長。

パク・ジファンが、イス組の組長のチャン・イス。
ホ・ソンテが、毒蛇組の組長の毒蛇。

チェ・グィファが、班長のチョン・イルマン。

ほかに、イム・ヒョンジュン、ヒョ・ドンウォン、など。

 

 

 

 

 

 

スタッフ。

製作は、チャン・ウォンソク。

 

撮影は、ジュ・ソンリム。

美術は、キム・ソンギュ。

 

武術監督は、ホ・ミョンヘン。

『新 感染 ファイナル・エクスプレス』も手がけています。

 

編集は、キム・サンミン。

音楽は、モグ。

 

 

 

 

 

 

現代韓国、凶悪な中国系ギャングを気は優しくて力持ちな刑事が追うアクション・サスペンス。
実事件2つを基に脚色。80年代刑事ドラマをリアルさで21世紀版にアップデート。
マ・ドンソクのコワモテ可愛い魅力を存分に引き出した上に独特のアクションで潰す度肝。
女子供にゃ弱いが悪には強いワンパン鈍足人情デカvs獣のごときナイフ瞬殺狂気ヤクザ、というフィニッシュブロー対決。
筋はぶっとく、機微は細かく。出てくる主要キャラ全員に見せ場。活きがいい顔揃い。ちゃんとある警察ものの面白さ。韓国警察ものに最初から負け犬感があるので、珍しい有能ぶりに快哉。
韓国ノワールの温故知新で連ドラ1クール並みの満足感。
恋愛要素がないのに寅さんの趣で「ソクさん」ならぬ「ドンさん」と声をかけたくなる太作。

 
  
 
 

 

 

おまけ。

原題は、『범죄도시』。
『犯罪都市』。

英語題は、『THE OUTLAWS』。
『無法者たち』。

『犯罪都市』という邦題は、1931年と1951年製作の同名映画があります。

 

ここはマ・ドンソクのアクション映画が繋がるように、“沈黙”シリーズよろしく一目でわかる邦題をつけるのもありだったんじゃないかしら。
あの太い腕推しで、『剛腕 ~犯罪都市~』って感じ。『剛力』とかもいいかも。イメージ押しなら『強力班』、 『ワンパンチ』とか。
おいら一押しは『剛腕 ~犯罪都市~』ですな。
マ・ドンソク芸達者だし、悪役も多いから、シリーズって、そうそう出てくるわけじゃないとは思うけどね。

 

 


上映時間は、121分。
製作国は、韓国。
映倫は、G。(韓国では、青少年観覧不可=R15?)

 

青少年観覧不可の韓国映画では、『インサイダーズ/内部者たち』、『友へ/チング』に次ぐ歴代3位の興行成績を記録している。(『アジョシ』が4位らしい)

 

 

 

 

受賞歴。

2017年の百想芸術大賞にて、映画部門の新人監督賞をカン・ユンソンが、受賞。

2017年の青龍映画賞にて、助演男優賞をチン・ソンギュが、受賞。

2017年の今年の映画賞にて、助演男優賞(チン・ソンギュ)、今年の発見賞(ユン・ゲサン)を、受賞。

 

 

 

 

 

 

キャッチコピーは、「どいつもこいつも「悪党」ばかり」。

映画の気分は出ていますが、 いまいちハマってません。
ここはたくさんの悪党と対するマ・ドンソク演じるマ・ソクト刑事を推すべきだったかと。
たとえば、「悪党まとめて、ぶっ飛ばす」とか「悪党だらけのこの街を腕一本で守りきる」とかね。

 

 

 

マ・ドンソクはその風体とはギャップのあるラブリーさが人気で“マブリー”と呼ばれている。

マブリーなキャラは『グッバイ・シングル』、『ファイヤー・ブラスト 恋に落ちた消防士』、『結婚前夜〜マリッジブルー〜』、『群盗』で見られます。

 にしても、韓国の映画実力派俳優の凄さって、バラエティの富み方よね。企画側か企画の選び方なのかもしれないけど。似たような役に見えてもちゃんと色を変えてくるし。特に、ソン・ガンホ、ファン・ジョンミン、イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、チェ・ミンシク、マ・ドンソク、イ・ジョンジェ、ハン・ソッキュ辺りの正悪清濁悲喜貧富上下美醜の役どころをやる凄みは世界でも稀有よね。ロバート・デ・ニーロとかゲイリー・オールドマンっぽいというか。おいらが好きなところだとウォルター・マッソーやガイ・ピアース。最近だとホアキン・フェニックスとかね。日本でも役所広司、加瀬亮、浅野忠信、妻夫木聡、山田孝之、北野武、鈴木亮平とかいるけど。コメディ、悪役、ラブストーリー、実録、知識層、不細工、貧乏人もできるってのがすごい。一つ足りないけどその他は出来るってのは多いんだけど(佐藤浩市、真田広之、渡辺謙とかどうしてもカッコよくなってしまうし、逆に色気だけがないって人やコメディはイマイチって方も)。

 

 

 

 

 

 

 

 

ややネタバレ。

一発でノックダウンさせるマ・ドンソクのアクションは、ワンパンチ・アクションとして話題になったそう。実際に韓国の刑事は、拳を痛めないように掌底で下から上に振るビンタを用いるそう。

 

 

 

恋愛要素足したら、そのまま『剛腕刑事人情派』って感じで連ドラに出来そう。
 
字幕が少し弱いかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

新米刑事のホンラク、もう一人の部下の刑事、手下のスンウとその恋人、給仕の少年、情報屋の朝鮮族コンビ、など、いいキャラ、見せ場があるキャラがいるのに役名も俳優名も調べ難い。パンフにも載ってない。

 

実際、マ・ドンソクは、 真実の部屋を使うような暴力刑事ですし、ヤクザとも懇意というかなりグレーな人物ですが、実際、あの人数で無法地帯であえて秩序を守るためにああいうのも必要だと思わせる町自体の設定(=犯罪都市)が、まずこの映画の勝利。

 

たった3人の狂気のヤクザに組を乗っ取られて従って黒竜組にしちゃうのも可能なのかね。

 

銃が一回も出てこないのがいい。刑事の方が武器がないし、ヤクザもない、あの貧しさが時代を止めている感じもしていいのよね。

 

 

 

 

監督と脚本のカン・ユンソンは現在47歳、今作で映画監督デビューを果たした。
 

実は、ユンソンは、30歳で映画監督デビューすることになり準備をしていたが、製作会社が潰れて、お流れになってしまう。
その頃、同い年30歳にして映画俳優を目指し始めたマ・ドンソクと出会い、意気投合。一緒に夢を叶えようと誓った。
一足早く、マ・ドンソクは34歳で映画俳優デビューを果たし、着実にキャリアを積んでいく。
一方、ユンソンはドキュメント映画などで評価はされて、PRビデオなどを撮れてはいたが、映画企画は流れ続ける。妻の稼ぎに支えられ、マ・ドンソクに励まされつつ、映画監督デビューを目指して、努力し続けた。
そして、ユンソンは夢果たせぬまま40歳を迎えてしまう。もう夢は諦めようかと思い、マ・ドンソクに相談したら、「一緒に刑事映画をつくろう」と持ちかけられる。

そして、ユンソンは夢果たせぬまま40歳を迎えてしまう。もう夢は諦めようかと思い、マ・ドンソクに相談したら、「一緒に刑事映画をつくろう」と持ちかけられる。
そこから二人で企画を練って、営業するが、4年経っても企画は動かない。
もうすぐ45歳、さすがに夢は諦めようと、まず今まで支えてくれた妻にお礼の旅行へ出かけた直後、大手製作会社で今作の製作が決定する。苦節14年、ついに44歳にして映画監督デビューの夢が叶ったのだ。
 
ちょうど、マ・ドンソクの人気が出てきて主演級となったことが決め手となったようだが、二人が夢に歩み出した時に出会ってから14年間の友情が育んだ作品が今作『犯罪都市』なのだ。
 
だからか、今作のキャスティングは、人気や実績ではなく実力を重視して抜擢させてほしいと要望を出し、大々的なオーディションを行ったそう。
それによって、ユン・ゲサンはイメージを塗り替える凶悪な悪役に初挑戦し、映画では小さな役しかやっていなかった40歳のチン・ソンギュが敵の子分の一人ソンラク役で起用される。ソンラク役の大きさは10番目くらいの位置なのだが、独特の存在感を見せ、いくつも助演男優賞を受賞するに至った。

映画自体も、酸いも甘いも噛み分けて実力はあるが副班長に甘んじるベテラン刑事が、期待されるチームに自分の事件を奪われそうになるが、なけなしの中で仲間の力を存分に用いて、見事、大作戦を成し遂げ、凶悪なギャングをぶちのめすという内容で、現実と呼応している部分がある。

脇キャラ愛が強く、多くのキャストに見せ場があるのが嬉しくなってくる。
新米刑事のホンソクがいったん夢の強力班の刑事をあきらめた後、目の前の悪に動き出し、自信をつけて刑事に戻る様、15歳の給仕の少年が商店街の大人に勇気をうながす様、情報屋の二人が見事に偽装作戦に成功する様、ボスを殺され女を蹂躙され負け犬となり下がったスンウが意地を見せるも散ってしまう様、その恋人の本音を吐く様、凶悪ながらもボスに忠誠を誓うソンラクが嬉しそうにボスのところに戻って来た様、保身と出世にしか目がない班長の人間臭い様、ボス3人の情けなさと意地を張っていく生き様死に様、いくつもの顔が浮かぶ。

 

マ・ドンソクは韓国映画では、いつも警察が無能に描かれるのが納得いかない、知り合いにもちゃんとした警官もいるし、自分自身も刑事になりたいと思った時期もあったから、かっこいい警察映画をつくろうと企画したそう。だから、最後の警察への声援のような一文があるのだろう。
今回のヒットから、第二弾の企画を作り始めているそう。

 

 

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