一期一会

日々是好日な身辺雑記

私の履歴書 /五百旗頭 真

2019年03月03日 | 雑記


日経新聞朝刊に連載の(私の履歴書)が好きで毎朝愛読しており、各界で活躍された方々の半生を綴ったこのエッセイは興味深いものだ。
過去に連載された中でも、ボクサーから独学で建築家になり、世界的な評価を得た安藤忠雄氏のその半生には感銘を受けた。
安藤忠雄氏とは別の意味で感銘を受けたのが、先月連載されていた政治学者五百旗頭氏の(私の履歴書)だ。
氏については防衛大学校校長としての印象があったが、私の履歴書では(政治外交史家)となっていた。
その印象から同じ学窓の京都大学中西輝政名誉教授と同じような政治的立ち位置かと思っていたが、
政治討論番組BSフジ(プライムニュース)での発言を聞くと中西氏との違いを感じたが、そう思う部分が私の履歴書の中にあった。

28日まで連載されていたものを改めて日経電子版で読み返し、その半生で交わってきた恩師猪木正道氏や高坂正堯氏、
ハーバード大学教授で駐日大使だったライシャワー氏、歴代総理との逸話が尊敬と感謝の視点から語られているのが印象的で、
そのお人柄が分かるような話だった。
小選挙区制の政治改革を実現し退陣した細川首相の退陣を爽やかとし、小渕首相のクリントン大統領、金大中大統領との間で築いた外交関係を評価し、
沖縄サミット前に急逝された事を日本とアジア太平洋にとって大きな損失だと述べている。
平成の元号紹介の官房長官としての印象から、軽量首相と思っていたがその業績について意外な高評価だった。
防衛大学校校長への就任を要請された小泉首相へは、外交政策は賛同出来ないものがあり躊躇するが、
説得され就任後にイラク自衛隊派遣や靖国参拝を批判し、右翼から防大校長罷免運動を起こされるが、
日米関係強化と陸上自衛隊の早期撤退を評価し、首相退任後に家族全員と防大生10人を三崎港の旅館で
マグロ1匹の料理を小泉ファミリーで慰労されるなど、度量が大きく情愛ある人だと述べている。
その他にも福田康夫首相や民主党の北沢防衛大臣などがリスペクトを持って述べられているが、森、麻生両首相についての記述はない。

また防大校長時代に田野神空幕長の日本が戦争したのはルーズベルトや蒋介石の陰謀だという論文を、
新聞のコラムで厳しく批判したら、右翼から官舎や西宮の留守宅も襲撃されたと言う。
防大校長が右翼から襲撃されるという事からも、氏の政治的スタンスが分かるし、中西輝政氏の田野神論文評価と比べると
同じ京大猪木正道門下生でもその政治学者としての立ち位置は違うようだ。

ライシャワー教授との交遊や家族でのロンドン大学留学生活話など、毎日興味深く読ませてもらったが、
一番印象に残ったのは、京大高坂正堯教授から一ヵ月のアメリカ出張を言われ、国立公文書館で国務省の対日占領政策の文書を
調べて見つけた統合参謀本部が終戦の翌日に作成した日本分割占領案の話だ。
スターリンが北海道北半分をソ連軍の占領下に置きたいと要求した案は、米国の主導権を重視するトルーマン大統領に否認されたが、
この分割案を新聞に掲載され、日米関係史研究の学会からパッシングを受ける事になるが、ワシントンから3000ページの原文書を取り寄せ、
それを基に学会報告を行い反対学者からも認めてもらえた。
最後は長年連れ添った奥様が膵臓ガンで亡くなる時の話だったが、末期ガンでの最期の様子は心に沁みるものだった。



(私の履歴書)を読んでる途中で、氏の著書を読んでみたいと思い、図書館の蔵書を作者名で検索して28冊の蔵書の中からトップ写真を借りて読んだ。
高坂正堯教授は学者らしくない洒脱な人柄と京都弁での軽妙な語り口が印象に残っており、昔は藤本義一が司会する(11PM)や、
島田紳助と田原総一朗司会の(サンデープロジェクト)などに出演していた。
民主党前原誠司氏のゼミの教授としても知られているが、その政治的立ち位置は現実主義の保守リベラル・護憲派だったと思う。
なかなか読み応えのある本だったが、長くなるので書かないが、次は政治学者としての著作(宰相吉田茂)を読んでみたい。
現在図書館には8冊が予約され、手元には原田マハ(暗幕のゲルニカ)、北欧ミステリーのオーサ・ランソン(赤い夏の日)、(黒い氷)がある。
オーラン・ハッサンの2冊は2週間前に読んだ(オーロラの向こう側)の女性弁護士レベッカ・マーティンソンのシリーズだ。
ピカソのゲルニカはマドリードの美術館で観たが、作品の時代背景なども知っていたが正直なところあまり心動かされなかった。

1930年代のパリ、マドリードでのピカソの話と2003年のニューヨークの話が平行して進む構成のようだが、どんな小説になっているのだろう。
次の予約本が届く前に、3冊を2週間で読まないといけないが、完全リタイアの身なのでその時間は充分にある。
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