一期一会

日々是好日な身辺雑記

ホセ・ムヒカ

2016年06月12日 | 雑記



一昨日10日(金)に図書館から予約図書到着お知らせメールが届いた。
貸出期間が2週間なのと、この本「悪役 世界で一番貧しい大統領の本音」は、
次の予約が入っているので、ミャンマーへ出発前に読み終え返却しないといけない。
この日は午後から大船の実家に行き、一泊する予定だったので、読みかけの
「ミャンマー 民族と国家」を家に置き、この本を駅前のコンビニで受け取り、
車中で読み始めた。

昨日は13:30からのミューザ川崎でのクラシックギタリスト木村大の
コンサートへ行く予定だったので、それまで実家で読み続けた。
(情熱のアランフェス)と題したこのコンサートの一部では、YouTubeでよく聴く
ヴィヴァルディの四季の中の(プレスト)と、チック・コリアの(スペイン)が
演奏されたが、沖仁とのギターデュオと比べると今ひとつだった。

休憩を挟んでの二部ではライム・レディースオーケストラという女性だけの
フルオーケストラとの、アランフェス協奏曲は良かった。
第2楽章 アダージョでのイングリッシュ・ホルンとギターが奏でる旋律は
何度聴いても素晴らしい。
村治佳織と新日本フィルの(Aranjuez)のCDを何年も前から持っているので、
アランフェス協奏曲は何回も聴いている。
アンコールはレッドツェッペリンの(天国への階段)という構成だった。

帰りの川崎からの車中で(天国への階段)を検索したら、ハートというバンドが
カバーした演奏にあたった。優れた芸術家に贈られるケネディ・センター名誉賞を
2012年にレッドツェッペリンが受賞した時のもので、このハートの演奏に聴き入り
涙する,じいさんになったレッドツェッペリンのメンバーの様子や、
オバマ大統領夫妻、演奏にリズムをとるヨーヨー・マの姿が見れる。
このカバー曲の演奏がなかなか良くて昨日から何回も聴いている。


  ハート /天国への階段

そしてレッドツェッペリン絡みで、同じハードロックグループのディープ・パープルの
(Smoke on the water)。あの懐かしのイントロとロンドン シンフォニー オーケストラ
との大迫力の名演奏だ。

ディープ・パープル/Smoke on the Water

全くレッドツェッペリンとは関係ないが、この一ヶ月よく聴いているのが
ラテンの懐メロ(ベサメムーチョ)で、Cesaria Evoraの野太い声と、
バックバンドのジャズ風にアレンジされた演奏とのハーモニーが何とも良い。

Cesaria Evora/Besame Mucho

クリックするとYouTubeに繋がりますので、音楽が好きでデータ容量に
余裕がある方のみクリックして下さい。


17:30に帰宅してからは、義妹と姪、娘が来ての食事と言うか宴会が始まった。
ビールから始まりワインが開き、それが2本目になった20:30頃には部屋に
引き取らせてもらい本を読んでいた。
この間、(8日には友達と飲み、昨日も飲んだのでしょう)との、カミさんの言葉により、
薄いウィスキー水割り2杯でのお付き合いだった。

そして今日の午前中に、ウルグアイ前大統領ホセ・ムヒカを描いた本を読み終えた。
この「悪役 世界で一番貧しい大統領の本音」は、今年読んだ本の中で
一番強い印象が残った。(強い印象)という以外の適当な形容詞が思い浮かばない。

この本はウルグアイのジャーナリスト二人による、2005年から10年間にわたる
ホセ・ムヒカへのインタビューを基に書かれている。
そのホセ・ムヒカのこれまでの人生が、民族解放運動トゥパマロスのゲリラとして
4回投獄され、その内2回脱獄し、最後に捕まった1972年からは、13年間の牢獄生活をおくり、
2010年にウルグアイの大統領になるという、小説になるようなものだが、
そういうアングルから描かれた本ではない。

その長い牢獄生活中に読んだ膨大な量の本、特に人生のかなりの部分を歴史の勉強に
費やしたというムヒカの人生哲学、政治哲学が、二人のジャーナリストと、
太字でのムヒカ自身の言葉で語られている。
その金言のような言葉が、この本の中に何ヶ所も出てくる。
自分の本であれば朱線を引くところだが 、図書館の本なのでポストイットを貼って
いたら、それが20枚近くなった。

それ以外にも大統領としての政策、同性婚や人口妊娠中絶の合法化についても
語られている。
興味深かったのは世界中の首脳と会った時のエピソードや、ムヒカの口から語られる
その各首脳に対する人物評価とコメントだ。
特に、亡くなる前まで友人としての交流があったという、反米・社会主義路線を進めた
ベネズエラのチェベス大統領評価と、それと別な道を歩むとチェベスに告げたという
エピソードは、人としての交流と政策評価は別というものだ。

キューバとアメリカの歴史的和解を仲介したという、オバマ大統領とのエピソードや、
カストロ兄弟との交流、最近表舞台には登場していないフィデル・カストロについては、
二人でラテンアメリカの政治について話し合い、アメリカとの関係改善の可能性を分析し、
「フィデルは今世界で起こっている事を全て把握していた」と、
90歳になるフィデル・カストロの明晰さに感銘を受けたと二人のジャーナリストに語っている。

その仲介の裏話として、アメリカからの要請により、キューバ国内にあるテロの被疑者が
収容されているグアンタナモ収容所から、6人の囚人をウルグアイに受け入れる事を、
ラウル・カストロに相談したエピソードも語られている。

この本では語られていないが、4月に来日した時に、今まで会った人物で最も印象深いのは、
との記者の質問に、しばらく考えた後に(チェ・ゲバラ)と答えている。
チェ・ゲバラとの接点はトゥパマロスのゲリラとして活動してた時なのだろう。

ホセ・ ムヒカが世界に広く知られたのは、2012年のブラジル・リオデジャネイロでの
地球サミットでの演説からだろう。
そして大統領としての給与の90%を財団に寄付し、大統領官邸には住まず、
奥さんのルシアと二人で小さな農園で暮らすという質素な生活ぶりも知られている。
奥さんはゲリラ活動時代からの同志で、お互い50歳頃まで牢獄生活をしていたので
子供はいない。奥さんも国会議員だそうだ。

その質素な生活ぶりを聞かれて、

「自分は貧しいのではない、自由でいる為に質素である事を選んでいるだけで、
 その為には身軽でいる事が必要なのだ」と述べている。

この清廉な生き方を、どこぞの知事に教えてあげたいものだ。
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