宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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月に新しい兄弟を発見!? いえいえ地球を回っているように見える準衛星です

2016年06月25日 | 宇宙 space
準衛星って知ってます?

地球の周りには衛星になる“月”だけでなく、
準衛星と呼ばれる小惑星も存在しています。

準惑星は常に地球の近くにあって、地球と共に太陽の周りを公転する小天体。
私たちから見て地球を周回しているように見えるんですねー

今回は、この疑似的な月のような準衛星が新たに発見されというお話しです。

地球と似た軌道を公転する小惑星

今年の4月27日、ハワイにあるパンスターズ1望遠鏡による観測で、
大きさが40~100メートル程度の小惑星“2016 H03”が発見されます。

ただ、この小惑星が特徴的だったのは、
常に地球の近くにあって、地球と共に太陽の周りを公転していること。

近いといっても、その距離は地球から月までの約38倍ほど…

“2016 H03”を離さないように地球の重力が働いているので、
地球から“2016 H03”までの位置は、1450万キロ以上近づくことはなく、
3860万キロ以上離れない位置を維持しています。

このような天体を“準衛星”と呼びます。

準衛星は地球の周りを回るように運動するのですが、
これはあくまでも見かけ上のことになります。

力学的な運動中心は太陽であり、
中心が地球である月とは本質的に異なるんですねー
黄色は“2016 H03”の軌道で、水色が地球の軌道、中心には太陽がある。

計算によれば、小惑星“2016 H03”は、
過去100年ほどの間、安定して準衛星であり続けていて、
今後も数百年間にわたり、
準衛星として地球と共に太陽の周りを回り続けるようです。

“2016 H03”は、
約半年間は地球よりも太陽に近い軌道を動き地球よりも先行し、
残る半年間は太陽から遠ざかり地球より遅れて公転することになります。
また、軌道が地球の公転軌道に対して少し傾いているので、
小惑星は1年に1度、地球の軌道面に対して浮かび上がり、
再び潜り込むという動きを繰り返します。

“2016 H03”は、
2006年に発見された小惑星“2006 RH120”以来の準衛星になり、
これで地球は3つのお月さま(衛星)を持つことになったんですねー


クエーサーから噴き出すガスの変動には明るさが関わっていた?

2016年06月24日 | 宇宙 space
信州大学などの研究グループが、クエーサーを3年以上にわたってモニター観測し、
クエーサーから放出されるアウトフローが、時間変動する原因を確認したんですねー

どうやらクエーサーからの放出には、
クエーサーの明るさの変動が関わっているようです。


アウトフロー

遠方宇宙の銀河には、
その中心部分が銀河全体に比べておよそ100倍以上の明るさで輝く、
“クエーサー”というタイプのものがあります。

そして“クエーサー”からは、
アウトフローと呼ばれるガスが高速で噴き出しています。
クエーサーから吹き出すアウトフローのイメージ図(白く竜巻状に描かれた部分)

アウトフローには、大きなエネルギーと様々な元素が含まれていて、
自身が属する銀河だけでなく、周辺各所に大きな影響をもたらしているんですねー

なので“クエーサー”の研究において、
アウトフローは重要な要素の1つになります。

ただ、アウトフロー自身は輝かないので、
背後にある発光領域の光を吸収した痕跡(吸収線)を調べることになります。


吸収線の変動

アウトフローの吸収線は、
数か月から数年という長い時間スケールで変動していて、
このことは、アウトフローのガス密度や温度が変動していることを示しています。

でも、時間変動の原因はよく分かっていないんですねー

変動を説明する様々な仮説のうち最も有力視されているのは、
“クエーサー”の明るさが変化すると、アウトフロー中の特定イオンの相対的な量が変化し、
対応する吸収線の強度が変化するというもの。

この説は“電離状態変動シナリオ”と呼ばれ、
検証するには長期にわたるモニター観測が必要になります。


モニター観測

今回の研究では、
  東京大学木曽観測所の木曽105センチ シュミット望遠鏡/
    KWFC(木曽広視野カメラ)
  国立天文台岡山天文天体物理観測所の188センチ反射望遠鏡/
    京都岡山可視低分散分光撮像措置(KOOLS)
が用いられています。

長期モニターは2012年から3年以上にわたり、
9つの“クエーサー”の観測を行いました。

線幅が広いBALという分類の吸収線を持つ“クエーサー”のモニター観測では、
すでに仮説を支持する結果が得られています。

なので今回の研究では、
観測対象を幅の狭い吸収線であるNALを持つ“クエーサー”に絞ることになります。

かんむり座の方向にあるNALを持つ“クエーサー”“HS 1603+3820”では、
3年間の間にクエーサーがまず暗くなり、その後明るくなりました。

一方、アウトフローによる吸収強度は増加後に減少し、
変動パターンに数か月のズレがあるものの両者の同期が確認できました。

クエーサーの変光によってイオンの電離や再結合が起こり、
吸収に寄与するイオンが増減したことが変動の理由だと考えられ、
NALを持つクエーサーに対しても“電離状態変動シナリオ”が適用できることを、
示す結果になりました。
“HS 1603+3820”の明るさの変化(上)と吸収線の強さの変化(下)。
明るさの変化から数か月遅れて吸収線の強さも似た傾向で変動している。

ただ、“HS 1603+3820”で確認された光度変動の最大値は、
およそ0.23等級(クエーサーからの光の量が20%減)になり、
この値は吸収強度の変化を説明するには小さすぎるという問題が残ることに…

他のクエーサー8天体の変光幅も0.3等級程度で、
吸収強度の変化に必要な変光量には遠く及びませんでした。

どうやら、アウトフローの時間変動を説明するためには、
クエーサーの変光の他にも、何か別のメカニズムが同時に働く必要がありそうです。

アウトフローよりも高温状態にある別のガス(暖かい吸収体)の変動が、
可能性のある要因の1つと考えられるので、
研究グループではX線での同時モニター観測を計画しているそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 100億光年彼方のクエーサーを複数アングルから観測


シグナス補給船で火災発生!? 実は宇宙船の安全性向上を狙った実験でした

2016年06月23日 | 宇宙 space
もし宇宙船内で火事が起きたら…

このような致命的な事故になりうる火災に備えるため、
「火事」を起こすという実験が行われたんですねー

場所は国際宇宙ステーションへの補給を終えた、
オービタルATK社の補給船“シグナス”の船内。

ステーションから分離された状態で行われたので、
宇宙飛行士に危険は無かったそうです。

宇宙船の安全性向上へ

“シグナス”補給船は3月26日に、
国際宇宙ステーションへの補給物資や実験機器を搭載して打ち上げられ、
ステーションにドッキングしていました。

そして搭載物資はステーションのクルーによって運び出され、
6月14日にはステーションを離脱。

その後、地上スタッフによって起動されたのが、
補給船内に搭載されていた“サファイア-1”という火災実験装置でした。

この実験の目的は、無重力下における火の挙動などを観測することと、
観測されたデータを宇宙船の安全性向上に活かすこと。

これまでにもNASAは、
制御可能な程度の小さな火災実験を行ってきたのですが、
今回のように補給船を使った大きな規模の火災実験は初めてでした。

シグナス補給船は、
実験時には国際宇宙ステーションから分離されているので、
宇宙飛行士にも危険は及びませんでした。

しかも実験後のシグナス補給船は、
数日後に大気圏に突入して燃え尽きることになります。
サファイア-1(Spacecraft Fire Experiment)

実験に使われた“サファイア-1”装置の内部には、
40×100センチのコットン・ファイバーガラスと点火用のホットワイヤー、
それに送風用のファンが備え付けられています。

温度、酸素、一酸化炭素濃度センサーが火災時のデータを記録し、
燃焼時間は20分程度続いたそうです。
そして火災の様子は、カメラで撮影され地上へ送信されています。

将来長期にわたって人が宇宙船に滞在する場合に備え、
致命的な事故になりうる火災で、どのように物が燃えるのかを知ること。
というのが、NASAが説明した今回の実験の意義です。

確かに逃げ場のない宇宙船内での火災は、
即座に致命的な事故につながります。

以前にアポロ1号が発射台上で火災を起こし3名が亡くなったという、
痛ましい事故を経験しています。

安全な宇宙開発のためにも、
今回の実験結果を活かし安全装置などの対策が進めばいいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 1年振りの打ち上げ! 無人補給船“シグナス”が国際宇宙ステーションに到着

火星は氷河期から脱しつつある?

2016年06月22日 | 火星の探査
「火星は現在、氷河期から脱しつつある」という研究結果が発表されました。

この研究の根拠となっている極地域のレーダー画像が、
火星の気候サイクルに関する新たな手がかりをもたらしてくれたそうです。

研究によると、
火星の氷は約37万年前に極地域に向けて後退を始めたそうです。

今回の成果は、10年間にわたり火星を周回している、
NASAの火星探査機“マーズ・リコネサンス・オービター”で収集された観測データに、
基づくものになります。


火星の氷河期

火星の氷河期については、過去のモデルを用いた研究で、
約40万年前に終了したことが分かっています。

今回の研究は、その結果を裏付けるものにもなるんですねー

また今回の研究は、
「火星上で起きる気候変化と、それが地球とどのように異なっているか」
に関する理解を深めるものにもなりそうです。

地球では氷河期に突入すると、極および高緯度の地域で数千年間、
気温が平均を下回る状況が続きます。

これが原因で氷河が中緯度地域に向かって成長することになります。

一方の火星では、自転軸の傾きが大きくなるので、
極が低緯度地域より気温が高くなり、変化が起きることになります。

その結果、火星の極冠の後退と、赤道方向へ水蒸気の蓄積が起きることで、
地上に氷ができ、中緯度地域に氷河が形成されることになります。
NASAの火星探査機“マーズ・リコネサンス・オービター”が撮影した火星の北極冠。


氷の量

現在では直近の氷河期が終わったので、再び両極で氷の蓄積が進行していて、
極冠全域での氷の厚さが320メートルに達していることも分かっています。

この数値は、
2003年と2007年にモデルを用いて算出された過去の予測値と一致し、
直近の火星の氷河期と、それ以降の極氷の再生の記録が、
実際に特定されたことを示唆しています。

なので、これらの測定値を利用すると、
「極地域とその他の地域との間に、どれくらいの量の水が移動しているのか」
に関してさらに理解を深めることができます。

このことは、火星の気候に関しても理解を向上させる助けになるんですねー

NASAは早ければ2030年代に火星の有人探査を計画していて、
水は火星探査の前哨基地にとって不可欠な資源になります。

そう水は、飲料や推進剤の生成に必要になるはずです。

将来の有人探査にとって、
火星の氷に関する研究は重要な意味を持つことになります。


こちらの記事もどうぞ
  火星には、表面を覆い尽くせるほどの氷がある
  火星に氷河?

生命誕生にもつながる? 惑星誕生領域で初めてメタノールを発見

2016年06月21日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡が若い星を取り巻く円盤にメタノールを検出したんですねー

惑星の誕生現場になる円盤にメタノールが発見されたのは初めてのこと。

このことは、惑星誕生過程における化学反応や、
最終的に生命の誕生にもつながるような化学反応の理解を助けてくれるものかもしれません。


原始惑星系円盤

地球から170光年の距離にある約1000万歳の若い恒星が“うみへび座TW星”です。

その周囲には、惑星が誕生する円盤“原始惑星系円盤”が広がっていて、
太陽系が誕生してから1000万年ほどたったころの姿に似ていると考えられています。

“原始惑星系円盤”を持つ星としては最も地球から近い場所にあり、
円盤を真正面から見ることができるという好都合な点から、
盛んに観測が行われています。


有機分子の発見

オランダにあるライデン天文台の研究チームが、
アルマ望遠鏡を使って“うみへび座TW星”を電波観測すると、
星の周りの“原始惑星系円盤”に気体状態のメタノールが検出されます。

メタノールはメタンをもとにして作られる分子で、
“原始惑星系円盤”で見つかったものとしては、これまでで最も大きな有機分子になります。
“うみへび座TW星”を取り巻く“原始惑星系円盤”と、
その中に含まれるメタノール分子(イメージ図)。

このメタノールの発見をもとにして研究を進めれば、
誕生した赤ちゃん惑星に、どのようにして有機分子が取り込まれていくのか、
が分かるかもしれません。

メタノールは、
アミノ酸のようなさらに複雑な有機分子の材料にもなるので、
生命誕生に必要な物質を作り出すための化学反応を理解する上でも、
重要な発見になるんですねー


気体状態になった理由

さらに分かったことは、メタノールが中心の星の直近に集中しているほか、
半径30天文単位と100天文単位のところにリング状に分布していること。

メタノールは“原始惑星系円盤”に含まれるチリの粒子の表面で作られ、
その後、表面から離脱することで気体の状態になると考えられています。

でも“うみへび座TW星”の場合、中心星から遠くて温度が低く、
普通であればメタノールがチリの表面に凍りついているはずの場所でも、
気体状態のメタノールが存在していたんですねー

この理由については、
メタノールは単にチリの温度が上がって昇華したのではなく、
星から降り注ぐ高エネルギーの紫外線分子によって叩き出され、
気体状態になったのではないかと考えられています。

こうした研究により、星間空間におけるメタノールの気化のメカニズムや、
より一般的な宇宙での化学反応についても理解が進むんでしょうね。


こちらの記事もどうぞ
  若い恒星の集団に見つかった浮遊天体の正体は?
  若い恒星の周りに、地球に似た軌道を持つ惑星の誕生現場を発見。