宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

終末期を迎えた星を連続で観測すると、星の最終進化が分かってくる?

2016年06月14日 | 宇宙 space
一生の終末期を迎えた星の観測。

この観測を、日韓共同VLBI観測網“KaVA”を用いて行ってみると、
星を取り巻くガスから放射される一酸化ケイ素メーザーの複雑な形状が、
鮮明にとらえられたんですねー

この成果は“KaVA”によるもので、
本格運用開始により、星の最終進化における物質放出の研究が、
大きく進むと期待されているようです。


VLBI観測

恒星の寿命は数千万年から数十億年に及びます。

そして、その終末期のわずか数千年のうちに、
大量の物質を周囲の星間空間にまき散らすことが知られています。

このようなガス流の中には、メーザー放射(分子からのマイクロ波)が見られ、
数百~数千キロ離れた複数の電波望遠鏡を用いたVLBIによる観測で、
高解像度で撮像することができます。

でも、大掛かりな観測を何度も連続して実施することは、
これまで出来ていませんでした。

  VLBIはVery Long Baseline Interferometry(超長基線電波干渉計)の略。
  VLBI観測とは、遠い場所にある複数の電波望遠鏡が協力して観測を行うこと。



終末期の星を観測

ここ数年、日本と韓国では、
それぞれのVLBI専用電波望遠鏡を組み合わせた共同VLBI観測網“KaVA”により、
連続撮像を実行するための準備が進められてきました。

その一環として行われたのが、
うお座WX星に見られるSiO(一酸化ケイ素)メーザーの撮像観測です。

うお座WX星は約1900光年彼方に位置する、一生の終末期を迎えた星で、
660日周期で変光していて、星から吹き出した物質が周囲を取り巻いています。

この観測では、短時間で十分な画質が得られるか、
また異なる波長のメーザー放射像が合成可能かどうかが試されています。

その結果、2種類のSiOメーザー放射の精密な強度分布が得られ、
うお座WX星を取り巻くようなリング状の分布が鮮明に描き出されました。
うお座WX星を取り巻くガスから放射されるSiOメーザーの分布。
色の違いは2種類のメーザー放射に対応しているため。

さらに、2種類のメーザー放射の分布がとても似ていて、
お互いにほぼ近傍していることも分かります。

この類似した分布は、
星の周期的な明るさの変化に伴って少しずつ変化するはずなので、
そうした変化を追跡できる性能を“KaVA”が持っていることが、
実証されたことになるんですねー

メーザー放射は、
特殊な物理条件(ガスの密度・温度・メーザー放射をする分子の割合)でのみ再現するもので、
今回の2種類のメーザー放射も必要な温度が大きく異なるはずです。

それらが、ほぼ同じ部分で見られることが示された今回の観測は、
この条件を満たす仕組みを説明する物理解釈モデルに、
非常に強い制限を与えることになります。

星の最終進化における物質放出の観測的研究が、
“KaVA”によって大きく発展すると期待されるんですねー

今後、研究グループでは、
アルマ望遠鏡との共同連続撮像でメーザー以外の電波放射も観測し、
星周縁のダイナミックな全貌を解明することを目指すそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ メーザー源を調べてみると、大質量星形成領域の構造が分かってきた