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【 打ち上げ成功!】 原始惑星のコアだったかも? 金属が豊富な小惑星を目指すNASAの探査機“サイキ”は10月13日以降の打ち上げへ

2023年10月13日 | 太陽系・小惑星
2023年10月18日更新
小惑星“プシケ(16 Psyche)”を目指すNASAの探査機“サイキ(Psyche)”の打ち上げが迫ってきました。

直近の打ち上げ予定は2023年の10月5日でしたが、窒素コールドガススラスターの問題に対処するため、打ち上げは延期。
スラスターを温度制限内で運転することは、ユニットの長期的な健全性を確保するために不可欠だったため、この問題への対処が行われています。

探査機“サイキ”の打ち上げに利用するスペースX社のファルコンヘビーロケットは、静止燃焼テストを完了。
この打ち上げは、ファルコンヘビーロケットにとって8回目のミッションになります。

探査機“サイキ”は、アメリカ・フロリダ州にあるケネディ宇宙センターから、10月12日以降に打ち上げられる予定です。
NASAの小惑星探査ミッション“Psyche(サイキ)”の探査機を搭載したスーペースX社のファルコンヘビーロケット。ケネディ宇宙センター39A射場にて2023年10月11日に撮影。(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)
NASAの小惑星探査ミッション“Psyche(サイキ)”の探査機を搭載したスーペースX社のファルコンヘビーロケット。ケネディ宇宙センター39A射場にて2023年10月11日に撮影。(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)

打ち上げ目標を10月13日夜に延期

日本時間2023年10月12日夜に予定されていた小惑星探査ミッション“Psyche(サイキ)”の探査機打ち上げが、1日延期されたことをNASAが発表しました。

直近の打ち上げ目標は、日本時間の2023年10月12日23時16分(アメリカ東部夏時間同日10時16分)でした。

悪天候が予想されることから1日延期。
新たな打ち上げ目標は、日本時間の2023年10月13日23時19分(アメリカ東部夏時間同日10時19分)になっています。

NASAでは、英語の解説付きライブ中継を日本時間同日22時30分からYouTube公式チャンネル、SNS、NASA公式アプリなどで配信するそうですよ。
▼“Psyche(サイキ)”ミッション打ち上げライブ配信URL(YouTube)。
https://www.youtube.com/watch?v=npIDMxrzm_o
スペースX社は、日本時間の2023年10月13日23時19分(アメリカ東部夏時間同日10時19分)にファルコンヘビーロケットの打ち上げを実施。
搭載されていた探査機“サイキ(Psyche)”が、ロケットから正常に分離されたことで打ち上げは成功しています。
“Psyche(サイキ)”ミッションの打ち上げライブ配信(YouTube)。(Credit: NASA)

“Psyche”の日本語表記について、小惑星はラテン語の読み方の“プシケ”、NASAのミッションおよび探査機は英語の読み方の“サイキ”を用いています。

図1.小惑星“プシケ”を観測する探査機“サイキ”のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech/Arizona State Univ./Space Systems Loral/Peter Rubin)
図1.小惑星“プシケ”を観測する探査機“サイキ”のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech/Arizona State Univ./Space Systems Loral/Peter Rubin)

原始惑星のコアだった可能性がある小惑星

小惑星“プシケ”が位置しているのは火星と木星の間に広がる小惑星帯で、太陽~地球間の3倍ほど離れた軌道を公転しています。

ジャガイモのような不規則な形をしていて、幅は最大で280キロほど。
おそらく岩石と金属が混合してできていて、金属が体積の30~60%を占めると見られています。
小惑星“16 Psyche(プシケ)”は、鉄やニッケルといった金属を豊富に含む“M型小惑星”に分類されている。
小惑星“プシケ”に含まれる金属は、地球上では1,000京ドル(約14垓円)の価値があると考えられています。
世界経済全体よりも大きいと試算されている“プシケ”の経済価値ですが、探査機“サイキ”の目的は小惑星の探査。
磁力計やガンマ線・中性子分光計、多波長イメージャなどを用いて、小惑星の組成や統制を詳しく調査することにあります。
図2.小惑星“プシケ”のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)
図2.小惑星“プシケ”のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)
このような金属が豊富な小惑星を目指すミッションは史上初めてのこと。

地球などの岩石惑星は、かつて微惑星が衝突・合体をして形成されたと考えられています。

小惑星“プシケ”は、微惑星の外層が衝突によって剥ぎ取られて核が露出したもの、あるいは核の一部である可能性があると考えられています。

岩石惑星の核は、天体の中心部にあるので直接観測することはできません。

小惑星“プシケ”を探査することで、岩石惑星の核がどのように形成されたのかについて、新たな知見が得られるはず…
一方、“プシケ”が微惑星の核ではない場合、これまで誰も見たことのない、非常に珍しい種類の原始の太陽系天体であることが判明するかもしれません。

約6年間をかけて小惑星“プシケ”へ

10月12日だと、打ち上げは23時16分(日本時間)に実施されます。

何らかの理由でその時刻に打ち上げができないと、打ち上げは翌日以降に持ち越されることになります。
打ち上げ可能な期間は10月25日までありますが、打ち上げ時刻は30分程度しか変わりません。

打ち上げ後の探査機“サイキ”は約6年間をかけて小惑星“プシケ”へ。
小惑星“プシケ”に到着するのは2029年8月の予定になっています。

その間、2026年5月に火星フライバイを実施。
火星への最接近時に探査機“サイキ”は、火星上空3000~4400キロを飛行するそうです。
探査機が、惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、速度や方向を変える飛行方式。燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行える。積極的に軌道や速度を変更する場合をスイングバイ、観測に重点が置かれる場合をフライバイと言い、使い分けている。
特徴的なのは、“サイキ”がソーラーパネルから得た電力を用いて推進する“太陽電気推進”を採用する点です。
これは、搭載するキセノンガスを電気でイオン化してスラスターから噴射する方式。
得られる推力は弱いものの、少ないガス搭載量で長期間のミッションが可能になります。

さらに、“深宇宙光通信(Deep Space Optical Communications; DSOC)”の技術実証も予定。
このデモは、打ち上げから約3週間後、探査機が地球から約700万キロ離れた時点で実施され、光レーザーを用いて深宇宙との広帯域データ通信を実証します。
この技術が実用化できれば、深宇宙探査において得られるデータ量が格段に増す可能性があります。

観測は異なる高度の4つの軌道から

小惑星“プシケ”に到着後の探査機“サイキ”は、少なくとも26か月間“プシケ”を周回する予定です。
図3.小惑星“プシケ”に到着後の探査機“サイキ”の軌道。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
図3.小惑星“プシケ”に到着後の探査機“サイキ”の軌道。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
“サイキ”は、異なる高度の4つの軌道から小惑星の観測を行います。(図3)

4つの軌道は高度の高い順にAからDまでのアルファベットが付けられていますが、必ずしもアルファベット順にミッションが進行するわけではありません。

現段階で想定されているのは、A→B1→D→C→B2の順。
軌道A(ORBIT A)は709キロの距離を32.6時間で1周し、56日間で41周することになります。

軌道B(ORBIT B)は303キロの軌道を11.6時間で周回。
軌道B1では92日間で190周、軌道B2では100日間で206周する予定です。

軌道C(ORBIT C)は190キロの高度を7.2時間で周回し、100日間で333周。

軌道D(ORBIT D)は小惑星に最も接近し、高度は75キロで3.6時間で1周します。
100日間で666周することになっています。

“ディスカバリー計画”14番目のミッションとして2017年に選定された小惑星探査ミッション“サイキ”。

ディスカバリーと言えば、1992年に当時のNASA長官が提唱した、「より速く、より良く、より安く」のスローガンを体現する計画。
過去のディスカバリー計画の探査ミッションには、小惑星“ベスタ”と準惑星“ケレス”を探査した“ドーン”、太陽系外惑星探査を行う“ケプラー”、彗星を探査した“メッセンジャー”などがあります。

そう、低コストのミッションなのに高パフォーマンス!
どれも素晴らしい結果を残しているんですねー

なので、このミッションも原始惑星やそのコアについて新たな知見を与えてくれるはずですよ。


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