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太陽系もこうして作られた? 原始惑星系円盤の問題が解決

2017年02月22日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
アルマ望遠鏡による原始惑星系円盤の観測から、
ガスが円盤に降着する際に、角運動量の一部を円盤の垂直方向に放出していることが、
明らかになったんですねー

このことで「惑星系がどうやって作られたのか」が少しずつ分かってきたようです。

角運動量の放出が必要

星や惑星系は、星と星との間に漂うガスやチリからなる分子雲が、
自らの重力で収縮することで誕生します。

そして、生まれたばかりの原始星の周りには多くのガスが存在し、
そのガスが原始星へ引き寄せられ、渦を巻いて落下していくことに…

これにより原始星の周りでは、
惑星系の元になるガス円盤“原始惑星系円盤”が成長。

落下していくガス“エンベローブガス”は、
角運動量(回転の勢いを表す量)を持っているので、
原始星の周りには回転する円盤構造が形成されていきます。

ただ、ガスの角運動量の一部が外部に放出されなければ、
安定して回転する原始惑星系円盤を形成できないんですねー

それは、“エンベローブガス”が原始星にある程度まで近づくと、
原始星の重力よりも回転による遠心力が大きくなり、
ガスが原始星から離れていってしまうからです。

この角運動量を放出するメカニズムの問題は、
“惑星系円盤誕生における角運動問題”と呼ばれ、
円盤形成の研究で最大の謎になっていました。

この問題に対しては、理論的には研究されてきているので、
今度の課題は、実際に星が誕生する現場を詳しく観測することになります。


衝撃波による回転エネルギーの消費

観測の対象になったのは、
分子雲コアの中心に、生まれたばかりの太陽型原始星を持つ、
“L1527分子雲コア”でした。

研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、
地球から450光年離れた、おうし座にある“L1527分子雲コア”を観測。

“エンベローブガス”中に含まれる、
炭素鎖分子の一種“CCH分子”の分布を詳細に調査しています。

  炭素鎖分子は、多くの炭素原子が鎖状に結合した化合物。
  炭素鎖には水素・窒素・酸素・硫黄などが結合するが、
  不飽和結合のものが多く反応性が高い。
  このため、地球環境では通常存在せず、星間空間の分子雲に見られる。


すると、ガスが遠心力バリアの手前で厚く膨れていることが分かります。

  遠心力バリアとは、ガスが原始星に最大限近づける距離、
  原始惑星系円盤の端に相当する。


この観測結果から考えられるのは、外側から原始星に落下してきたガスが、
遠心力バリア手前で滞留・衝突を起すことで衝撃波が発生。

その衝撃波によって、回転のエネルギーが消費(角運動量が放出)され、
ガスが原始星に落下できるということです。

さらに、この衝撃によって円盤と垂直方向にガスが膨れ出ているようです。

おうし座“L1527”分子雲コアにおける、
原始惑星系円盤の周りのCCH分子の分布。
(赤・青)CCH分子の依存量が高い領域。
等高線は星間チリの分布でピーク位置(中心)に原始星がある。
南北方向に伸びた原始惑星系円盤を真横から観測している。
遠心力半径と遠心力バリアの間で、
円盤の垂直方向(東西方向)の厚みが変化していることが分かる。


回転エネルギーを円盤垂直方向に放出

また、衝撃波でガス中に放出された一酸化硫黄分子の温度を調べたところ、
“エンベローブガス”の温度よりも160度も高温になっていました。

さらに、遠心力バリア付近でのガスの回転速度は、
“エンベローブガス”の回転速度より明らかに低くなっていました。

これらの結果が示しているのは、
衝突によって回転のエネルギーが消費されるとともに、
円盤垂直方向への動きを得た一部のガスが角運動量を放出することで、
残されたガスの角運動量が減少したということでした。

つまり、“エンベローブガス”が円盤に降着する際に、
ガスが滞留・衝突し衝撃波が発生することで、
ガスが自ら角運動量の一部を円盤垂直方向に放出していることが分かったんですねー

観測で明らかになった惑星系円盤形成の様子(イメージ図)。
中心に原始星、
周りに原始惑星系円盤(断面で表面がオレンジ色、内部が紫色)が
形成されている。
赤線のように、外側から落下してきたガス(低温)が
遠心力バリア手前で滞留・衝突し、
生じた衝撃波によって円盤と垂直方向にガスが膨れ出し、
高温になっている。

今回の研究では、これまでほとんど観測されなかった、
円盤の“垂直方向の構造”に着目しています。

その構造を明らかにすることで、
角運動量問題解決への糸口を発見することが出来ました。

今後、他の円盤形成領域でも同様の現象が確認できれば…

角運動量問題の全容解明へとつながり、
「太陽系がどのように形成されたのか?」
という問いへの答えに結び付くのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 原始星を取り巻く大型有機分子が惑星系の特徴を決めている!?


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