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原始星を取り巻く大型有機分子が惑星系の特徴を決めている!?

2016年07月05日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡を用いた原始星の観測から、
星を取り巻いて回転するリング構造が見つかりました。

リングは原始星に落下してきたガスと、
惑星系を作る回転円盤の境界面とみられていて、
大型有機分子が豊富に含まれているのですが、
有機物の種類は原始星によって異なることも明らかになっています。

エンベロープガス

恒星は星間ガスが自己重力で収縮して形成されます。

そして、その形成過程において、誕生したばかりの星“原始星”の周りには、
回転するガスの円盤“原始惑星系円盤”が作られます。

今回研究チームが行ったのは、
アルマ望遠鏡により観測された若い原始星“IRAS 16293-2422 A”のデータ解析。

  “IRAS 16293-2422 A”は、
  へびつかい座の方向約400光年にあり太陽程度の質量を持っています。


そして明らかになったのが、
原始星を取り巻くエンベロープガスから“原始惑星系円盤”に至る、
物理構造と化学組成でした。

原始星と、その周りのガスの様子。
原始星を中心に半径50天文単位程度の“原始惑星系円盤”があり、
さらに外側を半径200天文単位程度のエンベロープガスが覆っている。

まず、エンベロープガスと“原始惑星系円盤”の境界上に、
飽和有機分子(メタノール、ギ酸メチル)が、
半径50天文単位(太陽~土星の約5倍、約75億キロ)のリング状に分布し、
原始星の周りを回転していることを発見。

これは、星間空間で形成され星間チリに蓄えられた有機分子が、
境界面で温められ蒸発してきたことを意味しています。

“IRAS 16293-2422 A”は、これまでに原始星近傍の暖かい領域に、
大型有機分子(メタノールなど6原子分子程度以上の有機分子)を、
豊富に含むことが報告されています。

でも、その分布と起源は不明でした。

この研究結果は、星間空間で形成された有機分子が、
確かに“原始惑星系円盤”までもたらされていることを、
観測的に初めて明らかにした重要なものになります。


円盤の多様性

また、これまでに観測研究を行ってきた、
複数の原始星近傍におけるガスの構造や化学組成の変化の比較から、
円盤の多様性も明らかにされています。

たとえば、おうし座にある若い低質量原始星天体“LI527”は、
エンベロープガスに炭素鎖分子を多く含んでいて、
“IRAS 16293-2422 A”とは化学的特徴が大きく異なっています。

“LI527”でもエンベロープガスから“原始惑星系円盤”にかけて、
化学組成の劇的な変化がとらえられています。

でも飽和した大型有機分子は、まったく見つかっていないんですねー

“LI527”では、炭素鎖分子が境界面の外側にだけ存在し、
境界面より内側では星間チリに凍りついてしまっているようです。

原始星付近のガスの化学組成の様式図。

今回の成果は、
エンベロープガスの化学組成が“原始惑星系円盤”に受け継がれること、
原始星によって“原始惑星系円盤”へもたらされる有機分子の種類が大きく異なることを、
初めて明らかにしたことでした。

これにより、これまで分かっていなかった“原始惑星系円盤”の形成と、
そこでの物質進化の理解が大きく進むことになります。

さらに“原始惑星系円盤”では、
将来、惑星系が形成されるので化学組成の特徴は、
惑星系へと受け継がれていくことが考えられます。

この研究は、
太陽系の物質的起源を理解する上でも新しい視点を提供してくれるようです。

太陽系が宇宙の中で普遍的なものなのか、
特殊な存在であるのかを判断する重要なカギになるのかもしれません。


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