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なぜ、恒星は7年間も暗いままだったのか? 原因はチリの円盤に囲まれた伴星にあるのかも…

2023年01月30日 | 宇宙 space
今回の研究を進めているのは、ワシントン大学の博士課程学生Anastasios Tzanidakisさんたちのチーム。
アメリカ天文学会の第241回会合で、“や座”の方向にある「変わった振る舞い」を見せた恒星“Gaia17bpp(2MASS J19372316+1759029)”について発表しています。
約7年間暗いままだった恒星“Gaia17bpp”(奥)と、チリの円盤に囲まれた伴星(手前)のイメージ図。(Credit: Anastasios Tzanidakis)
約7年間暗いままだった恒星“Gaia17bpp”(奥)と、チリの円盤に囲まれた伴星(手前)のイメージ図。(Credit: Anastasios Tzanidakis)

伴星を囲む円盤が光を遮っていた?

ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”などの観測データから、“Gaia17bpp”は2012年から2019年までの約7年間、最大で約4.5等級(約63倍)も暗くなっていたことが知られています。

研究チームでは、過去の記録を1950年までさかのぼって調査。
すると、66年以上にわたる観測期間のうち、“Gaia17bpp”が減光したのはこの1回だけでした。

また、“Gaia17bpp”の周辺に見える星は、このような減光をしていないことも分かりました。
拡大画像の中央の円で示されている星が“Gaia17bpp”。(Credit: Anastasios Tzanidakis/Pan-STARRS1/DSS)
拡大画像の中央の円で示されている星が“Gaia17bpp”。(Credit: Anastasios Tzanidakis/Pan-STARRS1/DSS)
では、なぜ“Gaia17bpp”は減光したのでしょうか?
分析を進めて分かってきたのは、減光の原因が“Gaia17bpp”をゆっくりと公転する伴星にあるというものでした。

“Gaia17bpp”は半径が太陽の55倍の赤色巨星で、その周囲を1000年近い周期で伴星が公転しているとみられています。

どうやら、この伴星はチリを多く含む大きな円盤に囲まれているようです。
そう、地球から見てこの円盤が“Gaia17bpp”を隠してしまったので、7年間にわたる減光が観測されたのではないかというわけです。

研究チームが考えている円盤の半径は1天文単位以上もあり、この円盤は“Gaia17bpp”からの光を約98%遮断していたそうです。
 1天文単位auは太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当。
さらに、いくつかの予備データからは、この伴星が白色矮星である可能性を示していました。
約27周期で減光する“ぎょしゃ座イプシロン星”(奥)と、チリの円盤に囲まれた伴星(手前)のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
約27周期で減光する“ぎょしゃ座イプシロン星”(奥)と、チリの円盤に囲まれた伴星(手前)のイメージ図。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
円盤を持つ伴星が減光の原因だと考えられている星といえば、“ぎょしゃ座イプシロン星”が有名です。

“ぎょしゃ座イプシロン星”の場合は、減光の開始から終了まで約2年間ですが、“Gaia17bpp”は約7年間と長いことが特徴的です。

また、“ぎょしゃ座イプシロン星”の減光は約27年周期で起きています。

でも、“Gaia17bpp”の場合は、次の減光が観測されるのは何百年も先と推定されているんですねー
なので、いま生きている人が“Gaia17bpp”の減光を再び目撃することはなさそうですね。


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