goo blog サービス終了のお知らせ 

宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

天体の衝突で地球はほぼ蒸発… そして月ができたようです。

2016年09月23日 | 月の探査
月が形成される起源については、いくつかの仮説が提唱されてきました。

有力なのは、地球に火星くらいの大きさの天体テイアが斜めに衝突し、
バラバラになったテイアと地球の一部がまとまって月になった。
というジャイアント・インパクトという説です。

でも、1970年代にアポロ計画で採取された月のサンプルを再分析してみると、
その衝撃波は、これまでの仮説よりもはるかに強大だったことが分かってきます。

さらに、地球の一部とテイアから形成されたはずの月が、
地球と成分が似すぎているのも問題でした。

そう、「テイアだけでなく地球もほとんどが蒸発するほどだった」という可能性が、
高まってきたんですねー

今回発表された論文によると、
テイアが地球にぶつかる衝撃は「スイカをスレッジハンマーで叩くようなもの」だそうです。
地球とテイアが正面から激しくぶつかり合い、
極端な高温と強い衝撃によってテイアも地球の大半も蒸発、
そして凝縮することで月が形成された。


過去のサンプルを新技術で再分析

これまでジャイアント・インパクト説が支持されてきたのは、
月の大きさや軌道上の位置について、すんなり説明できたからです。

でも21世紀に入ってから、
アポロ計画で採取された月の石の組成を新しい技術で再分析してみると、
これまでの説では説明できないことが出てくることに…

最近進歩した技術で、1970年代のアポロ計画によるサンプルを再分析すると、
以前よりはるかに小さな違いを測定することができます。

1970年代には気付かなかった多くのことを発見するのですが、
古いモデルでは、この新たな分析結果を説明できません。

40年前の仮説が正しければ、
月を形成する物質の半分以上はテイアに由来するもののはず。

でも月の石を分析すると、地球の石と非常に似通っているんですねー


月の石と地球の石

月の形成時の状況を推定するためには、カリウムの同位体の分析が有効とされています。

そこで今回の研究では、カリウムの同位体をこれまでの10倍の精度で分析できる手法を開発し、
月の石と地球の石の違いを見出そうとしています。

その結果、たしかに違いはあったのですが、
むしろ月と地球の緊密な関係を、さらに裏付けるものとなります。

その違いとは、月の石にはカリウム41というカリウムの中でも重い同位体が、
地球の石より0.4パーミル多く含まれていること。  パーミルは1000分の1。

その状態を作り出すには、
これまでの仮説で考えられるより、はるかに高温な状態が必要とされ、
説明するには「地球とテイアが正面から激しくぶつかり合った」と考えるのが、
適切というわけです。

このモデルでは、
極端な高温と強い衝撃によってテイアも地球の大半も蒸発することになります。

そして、蒸発したものが地球の500倍のサイズまで広がった後に、
それらが冷えて凝縮した結果が「月」だということです。

今回の研究結果から、月の形成にははるかに大きな衝撃が必要だと分かりました。

これまでのジャイアント・インパクトのエネルギーでは足元にも及ばない、
極度のジャイアント・インパクトがあったようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 月の誕生に新説

残念… 中国の月面探査車“玉兎” ついに稼動停止

2016年08月18日 | 月の探査
月のウサギに「おやすみ」を言う時が来たようです。

月面探査車“玉兎”の稼働停止を、
8月3日に中国の国家国防科技工業局が発表したんですねー

ソーシャルメディアを通じて多くの人に愛された月面探査車“玉兎”が、
とうとう最後の時を迎えてしまいました。

2013年12月14日に月面着陸に成功した無人月探査機“嫦娥三号”に搭載され、
“玉兎”が月面に降り立ってから2年が経過してのことでした。
“嫦娥三号”が2013年12月23日に撮影した、4枚の写真からなるモザイク画像。
探査車“玉兎”の右側のソーラーパネルが、
傾いた日光をうまくキャッチ出来るように少し下向きに調整されている。


月面で最も長く活動

月の仙女とそのペットのウサギ(兎)にちなんで名付けられた、
“嫦娥三号”と“玉兎”が着陸したのは、“雨の海”と呼ばれる月の北部にある海でした。

これにより中国は、
ソ連(現ロシア)、アメリカに次いで、月面への軟着陸を成功させた3番目の国になったんですねー

そして月に探査機が軟着陸するのは、実に37年ぶりのことでした。

“玉兎”による月面ミッションは、すべてが順調だったわけではありません。

2014年2月には、
月の夜の厳しい寒さにより、一度活動停止状態に陥っています。

数週間後に“玉兎”は息を吹き返し、地球にデータを送信する機能は回復するのですが、
走行はできない状態に…
“嫦娥三号”と周辺の景色をとらえたパノラマ画像。
(“玉兎”が2014年1月13日に撮影。)
この日から地球時間で2日後にモーターユニットの故障で“玉兎”は動けなくなる。

それでも通信機能が生きていたことにより、
“玉兎”は2015年10月、月面で最も長く活動した探査車になります。

“玉兎”から地球に送信されたデータは、
100本以上の学術論文に使用され月の地質研究に寄与することになります。

さらに、アメリカやソ連のミッションでは見つかっていなかった、
新しい種類の月の岩石の存在も明らかにしています。
“玉兎”が撮影した6枚の画像から作られた“ピラミッド・ロック”のモザイク画像。
この巨大な岩は“嫦娥三号”の着陸地点付近にあり、
太古の衝突で現在ある場所に吹き飛ばされてきたもの。

一方で“嫦娥三号”に搭載された機器は、着陸から2年以上がたった今でも、
月面にある唯一の望遠鏡を含め、順調に稼動を続けています。

現在、中国は地球に月のサンプルを持ち帰るため、新たな探査機を送り込む計画を進めています。
“嫦娥三号”に仲間が加わるのは2017年になるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 37年間も月面着陸が行われなかった理由は?


月に水があるのは小惑星が運んできたからです?

2016年06月04日 | 月の探査
アポロ計画で月から地球に持ち帰られたサンプルの分析、
そして探査機の観測で、月に水が存在していることは明らかになっています。

でも、その月の水はどこからきたのでしょう?

最新の研究によると、月の水の大部分は小惑星がもたらしたそうです。


南北の極付近に位置するクレーター内部

月は約45億年前に、
火星サイズの天体が、地球に衝突して誕生したと考えられています。

その後、月では1000万年以上にわたって、
水を豊富に含む炭素質コンドライトの小惑星の衝突が続いていたようです。

月や地球に水をもたらした天体は、
小惑星だけでなく彗星も考えられています。

ただ、アポロ計画で月から持ち帰られたサンプルを分析した最新の研究成果によれば、
小惑星の寄与が大半だったそうです。
月のサンプル採取。
1972年12月11日のアポロ17号の着陸地点“タウルス・リットロウ”。

現在の月にどのくらいの量の水が存在しているのか?

この事については、よく分かっていないのですが、
1000兆トンのオーダーで月の内部に水が含まれている可能性があるんですねー

本当にこれほどの量が存在する場合、
水はおそらくヒドロキシル(HO)分子の形で、
鉱物中に閉じ込められているそうです。

そして、月の表面の露出したところに水があるとしたら、
その場所は太陽光が届かないところが考えられます。

月の南北の極付近に位置するクレーター内部の深くなら、
太陽光が届かず、水が氷として10億トンはあるそうです。

こうした水の氷は30億年から40億年もの間、
閉じ込められてきたと見られています。

月に水があれば、将来の探査では水を分解して酸素を作り、
月面基地に滞在する宇宙飛行士に提供できそうです。

また水素は、ロケットや鉱物資源の掘削のための燃料にも使えます。

まるでSFのような話ですが、火星探査よりは現実味がありますよね。

こうした実用的な点が、
ヨーロッパ宇宙機関やNASAなど各国の宇宙機関が月探査を計画し、
氷の量をより正確に見積もろうとしている理由の1つになっているんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ 月の砂に含まれる水は、太陽風で作られていた

日本も月面探査へ! 2019年打ち上げの探査機は三菱電機が製造

2016年05月25日 | 月の探査
月面探査というとアメリカやロシア、そして中国が進めていて、
日本は遅れているイメージがありますよねー

でも、そんな状況ももうすぐ変わりそうです。

18日の日本経済新聞によると、
三菱電機が日本初の月面探査機の製造を受注したそうです。
打ち上げ予定は2019年になります。

JAXAは以前から、
無人月探査機“SLIM(Smart Lander for Investigating Moopn)”を、
2019年度の後半に打ち上げると発表していました。

“SLIM”というのは、
「小型軽量な探査機システム」と「重力天体への高精度着陸技術」の、
2つの実現を目指す工学実験。

これらの技術を小型探査機による月面着陸によって実証する計画です。

無人機の月面着陸は、
これまでに旧ソ連やアメリカ、中国が成功しているのですが、
目標地点に対しての誤差は数キロもありました。

それを“SLIM”は、
将来の惑星探査も視野に入れて誤差を100メートルまで縮め、
ピンポイントで目標地点への軟着陸を目指します。


周回観測から月面探査へ

日本の月探査は、2007年に打ち上げられ、
月を周回観測した月周回衛星“かぐや”以来になります。

“かぐや”は月面に縦穴を見つけていて、
縦穴は月内部を探る手がかりになると同時に、
将来の有人探査の際には基地になる可能性もあるそうです。

なので“SLIM”はこの縦穴への着陸も視野に入れています。

小惑星探査機“はやぶさ”が小惑星イトカワに着陸したのが2005年、
小惑星の重力は微小なのに対して、月には地球の6分の1程度の重力があります。

今回の月着陸は、この重力を制御できるかが成功へのカギになるのかもしれません。

“SLIM”の打ち上げには、
国産の固体燃料ロケット“イプシロン”が使われるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ “SELENE-2”は着陸船と探査車を使った次期月探査ミッション

月の内部はどうなっている? アポロのデータと最新データから分かってくること

2016年01月07日 | 月の探査
40年前のアポロ計画で得られたデータと、
月探査機“グレイル”による測定などから、月の内部構造が推定されたんですねー

これにより“マントルオーバーターン仮説”と呼ばれる、
月の形成史を指示する結果が得られたそうです。


アポロ計画のデータ

月の内部構造を知ることは、
月の誕生や進化を理解するカギの1つになると言われています。

約40年前に実施されたアポロ計画の観測では、
月にも月震と呼ばれる地震があることが分かっているんですねー

そしてアポロ計画のデータからは、月の内部構造の研究は進むのですが、
月の表面から約1200キロより深い部分(中心から540キロ以内の部分)については、
いまも不確かさが残ったままになっています。


内部構造を知る手がかり

月の内部構造を知る手がかりは、
月の回転や変形を詳しく調べることで得ることができます。

月の回転は、
すでにアポロ時代からレーザーで観測され続けています。

さらに月の変形に伴うわずかな重力変化は、
NASAの月探査機“グレイル”によって高精度に観測。

これらの測月観測から、
月の変形のし易さや、内部の密度分布についての情報が得られています。


月の内部構造モデル

でも、最新の測月データと月震データを組み合わせた、
月の内部構造の研究はされていませんでした。

今回、国立天文台の研究チームは、
月震データと最新の測月データとの双方を説明できる、
新しい月の内部構造モデルを構築。

このモデルでは、先行研究の結果と比べて、
マントルの底にあると考えられる軟らかい層がより厚く、
密度がより大きい結果になりました。
月の内部構造(概略図)

ただ、この新しいモデルの密度は、
“マントルオーバーターン仮説”と呼ばれる月の進化理論に、
一致していたんですねー

作られたばかりの月には大規模な融けたマグマの海があり、
それが冷えるにしたがって、マントルを作る岩石が沈んでいったと考えられています。

岩石中のチタンは融けた部分に残りやすいので、
マグマの海が固まる最終段階では、
チタンを多く含む層はマントル上部に作られていくことになります。

でも、チタンに富む層は下層に比べて重いので、深部に沈みはじめ、
最終的にはマントルの層構造が反転した可能性があるんですねー

このような反転現象“マントルオーバーターン”が起こったと考えれば、
マントルの密度が高いことを説明することができます。

今回の研究では、アポロのデータと最新データから、
月の進化の議論につながる内部構造モデルが導かれました。

軟らかい層の厚さについては、
さらにデータを積み重ねて、月中心付近にある核の大きさや、
月の起源・進化の議論を深めていく必要があるようですね。


こちらの記事もどうぞ
  月のマントル最深部には、暖かくて軟らかい層がある?
  月の裏側にも! アポロのデータから震源を決定