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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

大気も無いのに… 月の周りにはいびつな雲がある?

2015年08月11日 | 月の探査
「月は常に、いびつな形のチリの雲に包まれている。」
っということが分かったそうです。
アポロ計画の宇宙飛行士たちは、月の地平線上に謎の光を目撃している。
写真はアメリカの月探査機“クレメンタイン”が撮影したもの。

大気のない月の周りに雲がある?
ってだけでも奇妙なんですが、
なんと、このチリの雲を作り出した犯人は彗星なんですねー

彗星は小さなチリ粒子をまき散らしながら、太陽の周りを回っています。

この軌道に残ったチリ粒子が月に衝突すると、
月のチリが一時的に宇宙空間に舞い上がるそうです。


流星群の時期に増えるチリ

観測によると、月の上空には常に平均120キロのチリが漂っていて、
このチリは、月面からまき上げられてから約10分間上空にとどまっているようです。

最初の5分で高度100キロまで上昇し、
残りの5分で下降して、そっと月面に戻るんですねー
月のまわりには常にいびつな形のチリの雲がある。
イラストの雲の色はチリの量を示し、灰色の円は月面に衝突するチリ粒子と、
月探査機“LADEE”の軌道を示している。

これらのデータを収集したのが、
NASAの月探査機“LADEE”に搭載された“LDEX”という実験装置。

“LDEX”は半年にわたり、
月の高度20キロ~100キロを舞うチリを採取していました。

地球の大気には毎日約100トンの宇宙チリが降り注いでいます。
月にも同じペースで宇宙チリが降り注いでいるなら、
毎日約5トンの宇宙チリが月面に衝突している計算になります。

“LDE”は、衝突により舞い上がった直径0.3ミクロンの月のチリを、
毎分平均1個検出していました。

でも流星群の時期には、その数が大きく増えることに…

流星群は、
地球(と月)が彗星の軌道に残されたチリ粒子の雲の中を通り、
そのチリ粒子が降り注ぐ現象です。

月を包む雲は、いびつな形をしていて、
月の昼の側と夜の側の境界線(明暗境界線)付近で、
厚くなっています。

このような雲ができるのは、月面に衝突するチリ粒子の多くが、
彗星に由来しているからだと考えられます。

小惑星の場合は軌道が円に近いので、
放出されたチリ粒子が月に衝突する速度は小さくなります。

これに対し、離心率の大きい軌道を運動する彗星の場合には、
放出されたチリ粒子の速度がひじょうに大きくなるんですねー


宇宙飛行士が見た謎の光

“LADEE”による観測結果は、
半世紀前から科学者を悩ませてきた「謎の月面発光現象」の解明にも、
大きく関わっています。

1960年代のこと、
NASAの無人月着陸機“サーベイヤー”に搭載されたテレビカメラが、
日の出の直前に、地平線の上空が光っているのを記録しました。

その後、アポロ計画の宇宙飛行士の数人も、
同じく日の出の直前、
地平線上の高い位置に明るい光が見えたと報告しています。
彗星の軌道に残されたチリ粒子が月に衝突すると、
月面のチリがまき上げられることがある。

宇宙飛行士たちは、
「上空にまき上げられた月面のチリに太陽光が反射している」
っと思っていました。

ただ、大気のない天体で、
そんなに高いところまでチリがまき上げられる仕組みが、
分かりませんでした。

なので、1972年に最後の宇宙飛行士が月に降り立ったときには、
月面のチリを分析するための装置を持ち込んでいます。

この装置によって、月の昼の側から夜の側に入るたびに、
チリの量が顕著に増加することが明らかになることに…

そして科学者たちは40年にわたり、
この測定結果の意味を解明しようと努力することになります。

いま有力なのは、月面でときどき静電気が強まると、
重力に打ち勝ってチリが宇宙空間にまき上げられるという説。

“LADEE”は、高い位置までチリがまき上がっている証拠を発見しました。

でも、このチリは宇宙飛行士の目で確認できるほど、
分厚い雲ではありませんでした。

だとすると、アポロ計画の宇宙飛行士たちが見た光は何だったのか?

この謎を解くのには、
もう一度、人を月に送り込む必要があるのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ おつかれさん“LADEE”。ミッション完了で月面へ制御落下

月の裏側にも! アポロのデータから震源を決定

2015年06月15日 | 月の探査
アポロ計画で測定されたデータから、
月の地震の震源が、新たに5つ突き止められたんですねー

うち1件は、月の裏側で発生したものだということも、
明らかになっています。


月はアポロ月震観測により、
地球以外で唯一、地震活動のネットワーク観測が行われた天体です。

アポロ12、14、15、16号には、月震計が搭載され、
1969年から1977年まで、4点のネットワークで月震観測を行っていて、
1万2000件以上の月の地震“月震”が観測されています。

そして観測データからは、
月の内部構造に関する研究が進められ、
  厚さ約60キロの地殻、
  その内側には岩石でできた“マントル”と呼ばれる層、
  さらに内側には金属でできた核、
があると考えられています。

アポロ計画による月震の観測は、1977年に終了しするのですが、
その後も計算機能力の向上や、地震波解析技術の発展にともなって、
新たな発見があったりするんですねー

ただ、既存の月震観測データが少ない観測点数で得られていること、
月の表側にのみ設置された観測機器による小さな観測ネットワークなど、
問題も存在しています。

そこで研究チームでは、
約40年前にアポロ17号によって設置された、
月面重力計を地震計として利用。
月震の震央分布と観測地点。
△印はアポロ計画で月震計が設置された地点。
大きい△印はアポロ17号の月面重力計が設置された地点、
○印は震央で色は深さを表す。
青枠○印は本研究で新たに明らかになった震央。

重力計のデータと他の地震計の観測結果、
これらの整合性がとれていることなどを確認した上で、
震源位置を再決定したところ、
過去の研究結果と一致するんですねー

さらに震源が未定だった、
月の地下900キロ前後を震源とする月震“深発月震”60件のデータを解析。

新たに5件の震源位置を決定することに成功しています。

そのうちの1件は、
月の裏側で発生した“深発月震”であることも分かったんですねー

月の裏側における“深発月震”は、
これまでに、8つしか特定されていない珍しい現象…
裏側で「なぜ“深発月震”が少ないのか?」は、よく分かっていません。

ただ可能性として、
  表側と裏側で“深発月震”の活動性が違う、
  月の内部に月震波の伝搬を阻害する層があるため、
  表側の観測点に届かない、
などがあるようです。
重力計で観測された月震波シグナルの波形。
過去のデータでは震源が決まっていなかった、
震発月震の震源を決定できた。


月の誕生に新説

2015年05月17日 | 月の探査
およそ45億年前のこと、
地球が誕生して間もない頃に、火星サイズの天体テイアが衝突…

これによりテイアは粉々になり、
融解した高温の破片が、地球の周りの軌道に撒き散らされることになります。

この破片が数億年かけて融合し、地球の夜空に輝く天体“月”になったんですねー

っと言うように、どのようにして地球が月という小さな友人を得たのかは、
たいたいのところ、ジャイアント・インパクト説で分かっています。

でも問題は、重要な観測事実のいくつくが、
このジャイアント・インパクト説と合わないこと…

今回、この問題を解決できるかもしれない、3本の論文が発表されたんですねー
生まれたばかりの地球に、
火星サイズの天体が衝突したときに、月が生まれた…
でも、このシナリオの詳細は、まだ完成していない。

最大の問題は、ジャイアント・インパクト説のシナリオを、
そのまま採用するには、地球と月の組成が似過ぎていることです。

月が主としてテイアの破片から出来ているなら、
その化学組成はテイアのそれに似ているはずです。

そして、従来から言われている通り、
テイアが太陽系内の遠くの場所からやって来たのなら、
月とテイアの成分は、地球の成分とは違っていることになります。

そして、そのことは、
さまざまな同位体(陽子の数は同じだが、中性子の数が違っている元素)の存在比の、
違いとして観測できるはずです。

ところが、アポロ計画により持ち帰られた月の石を調べてみると、
地球と月の同位体比は、ひじょうに良く似ていました。

そう、ジャイアント・インパクト説は、
数々の重要な観察事実をうまく説明できる、すばらしいモデルなんですが、
同位体比の近さを説明することができないんですねー


それでは、この同位体比の問題は、どう説明すればいいのでしょうか?

1つの考え方は、2012年の報告のように、
月はテイアの破片ではなく、
地球から飛び出した破片から形成されたというものでした。

ただ今回の論文は、もっとシンプルな説で、
それによると、生まれて間もない太陽系のコンピュータ・シミュレーションの結果、
地球とテイアは近くの場所で成長し、そのため組成も似ていた可能性が高いというもの。

シミュレーションによって、惑星が成長して衝突する過程を追跡したところ、
大規模な衝突のすくなくとも20%は、良く似た天体同士の間で起きることが分かります。

同じ環境で成長した惑星同士は衝突しやすいんですねー

20%というと、あまり大きい数字ではないと思うかもしれません。

でも、過去の研究で見積もられた確率は、この10分の1程度…
それに比べれば、高い確率になります。


ただ、これで全ての問題が解決するわけではありません。

月の石と地球のマントルの成分は、完全には一致しておらず、
ある元素の同位体比には、無視できない違いが出ています。

その元素はタングステンで、
タングステンにはいくつもの同位体があります。

今回問題になるのは、タングステン182という軽い同位体。
月の石は地球に比べて、タングステン182の存在比がずいぶん高いんですねー

今回の論文の説明はシンプルで、
地球と月が形成された後に、冥王星サイズの天体がいくつか衝突した結果、
タングステンの重い同位体がもたらされたというもの。

衝突が起こるまでは、
月と地球のマントルのタングステン182の存在比は、同じだったそうです。


ところが、当初のタングステン同位体比が同じというのは、
ジャイアント・インパクト説にとっては、困ったことになります。

これは、2つの天体が同じ場所でできたからといって、
タングステン同位体比が同じになるわけではないから…

タングステンの同位体比は、2つの天体の元々の組成とは無関係で、
中心核が形成されてからの時間に強く依存するからです。

地球とテイアの中心核が、同時に形成されたとは考えにくいんですねー


そして、月と地球の当初のタングステン182存在比が、同じになるような説明を考える中で、
“空飛ぶマグマの海”という奇妙な仮説が登場します。

ジャイアント・インパクト説では、
地球のまわりの軌道に、超高温のチリとガスの雲が撒き散らされることになります。

融解した破片からなる回転円盤は、ある期間その場に残っていたのでしょう。

地球と月は数十年間、もしかすると数百年間も数千年間も物質を交換しつづけ、
化学成分の差を解消していったのかもしれません。


たしかに空飛ぶマグマの海と、冥王星サイズの天体の衝突は、
タングステンの同位体比を説明できているようです。

でも、オリジナルのジャイアント・インパクト説のシナリオに、
なじまない部分も残っているんですねー

ただ、月がその秘密を明かしてくれるまでまでには、
まだ、もう少し時間がかかるようです。

月のクレーターから伸びる“光条”? どうやってできた?

2015年05月12日 | 月の探査
月のクレーターから放射状に伸びる明るい筋“光条”の、
不均一なパターン。

これが、どのような条件で作られるのかが、
月探査機“かぐや”の観測データや、シミュレーションなどから、
明らかになってきたんですねー
“かぐや”の地形カメラが撮影したケプラークレーター(右下)。
放射状に伸びた“光条”が見える。

月のクレーターを天体望遠鏡で見ると、放射状に伸びる明るい筋“光条”が見えます。

隕石などの衝突でクレーターが作られた際に、
噴射物が飛び散ってできたパターンが“光条”です。

“光条”が、
なぜ、明るく見るのかについては、
過去にも多くの研究が行われているのですが、
なぜ、不均一に分布するのかについては、
これまで、あまり研究されることがありませんでした。

この研究では、衝突実験の結果と、
月周回探査機“かぐや”の観測データを用いた解析結果、
そしてシミュレーション計算とを、組み合わせることによって、
“光条”の不均一な分布が、どのようにして生成されるのかを調べています。


ガラスビーズなどを利用した衝突実験の結果、
衝突による噴出物は、ゆるい網の目状に分布することが分かります。

そして、この網の目状のパターンは、
“かぐや”が地形カメラでとらえたクレーターの“光条”パターンと、
ひじょうに良く似ていることも確認されました。

さらに、シミュレーション計算によって、
粒子間の反発係数が小さい(跳ね返りにくい)状態だと、
このような明瞭な網の目状のパターンが、
出来やすいことも明らかになることに…

この研究結果では、
これまで良く分からなかったクレーターの“光条”の形成プロセスが、
粒子の物性に影響されていることが示されたんですねー

このことは、今後の天体表面における地史の解明に、
大きな手がかりを与えてくれるようですよ。
ガラスビーズを用いた衝突実験でできた、
網目状の噴出物のパターン。



こちらの記事もどうぞ ⇒ 月の“うさぎ”は天体の衝突で生まれた? 月探査機“かぐや”

月の砂に含まれる水は、太陽風で作られていた

2014年10月14日 | 月の探査
月の砂に含まれる水は、どこから来たのか?

これまで月の水の起源は、
「彗星や隕石の衝突によってもたらされた」と考えられてきました。

でも今回の研究で水の起源は、
太陽風の中の陽子が、砂の中にある酸素に衝突することで生成されたものがほとんどで、
彗星や隕石由来のものは少ないと分かってきたんですねー
NASAの月探査機
“ルナー・リコナサンス・オービター”が、
2009年6月に撮影した月。

NASAの宇宙飛行士が、
初めて月から石と砂を持ち帰った頃。
月面は乾いた場所で、水など存在しないと考えられていました。

でも、その後に進歩した技術によって、月面の一部の領域に水が存在すること、
さらに月面の砂の中にも、
少ないながらも水が存在することが
明らかになってきます。

そうした水の起源は、彗星や隕石の衝突であると考えられてきたのですが、
今回の研究では、違う結果が出たんですねー

それは、太陽風の中の陽子と、
月の砂に含まれるケイ酸塩中の酸素が衝突して、
化学変化を起こし水が作られるというものでした。

研究では、月面で採取された斜長石のリチウム同位体比率から、
水素の同位体比率(重水素と水素の比率)を計算し、
実際にサンプルに含まれる水と比較しています。

すると、砂粒に含まれる水のうち平均して15%が、
おそらく彗星や隕石によって外部からもたらされたもので、
それ以外が、太陽風との相互作用で生成されたものであることが、
明らかになりました。

さらにサンプルの中には、
太陽風との相互作用で生成された水のみのものもありました。

ただ今回の研究結果は、
あくまでも月の表面で発見された水に関するものなので、
表面下に存在する水の起源については、まだ分かっていないんですねー