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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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探査機“カッシーニ”が最終ミッションを開始! 今度は土星の環を通過

2017年01月12日 | 土星の探査
長く活躍してきたNASAの土星探査機“カッシーニ”の最終ミッションが、
ついに幕を開けました。

“カッシーニ”は今後4か月にわたって、土星の環のぎりぎりを何度もかすめることになり、
12月4日には最初のチャレンジになる、F環への接近を成功させているんですねー
土星の環と、科学者たちを悩ませ続けている北極の六角形状のジェット気流


観測は衛星から土星の環へ

“カッシーニ”はバスほどの大きさの探査機で、
NASAが1997年に打ち上げ、2004年に土星を周回し始めています。

そして12年という長期間にわたって土星や衛星を観測し、多大な成果を残すことになります。

そのほとんどは土星から距離を保ちつつ、
謎に満ちた62個の衛星のいくつかに近づいて観測するというものでした。

ただ、探査機の燃料は尽きかけているので、
今後9か月間は土星を周回しながら、土星と土星の輪の観測を行うことになります。

そう、今回から“カッシーニ”の探査対象が大きく変わるんですねー

白い軌道が土星の環をかすめる今回開始した軌道
(青は以前の軌道)

すでに11月末には“カッシーニ”はこれまでの軌道から向きを変えていて、
2017年4月下旬までにF環の端を20回かすめる軌道に突入。

12月4日にF環に最接近したのは、20回のうちの最初の1回目でした。

このとき“カッシーニ”は、
土星の極地や、衛星のテティス、エンケラドスを観測しつつ、
地球に向けて無線信号を送信してきています。


惑星成長のメカニズム解明へ

F環のすぐ内側には巨大なA環があるので、
今回のミッションはA環の外縁部を詳しく観測する絶好のチャンスにもなります。

もし、A環の氷の粒子にプロペラ状の痕跡を発見できれば、
それは環の内側に小衛星が隠れている証拠になるかもしれません。
画像の左上に小衛星によるA環のプロペラ形の痕跡が見える


もちろん、こういった微細な小衛星の発見は、
なにも単なる好奇心で行われるわけではありません。

理由は小衛星が、
形成過程にある惑星と似たような振る舞いをする可能性があること。

なので小衛星を観測することで、太陽系で惑星が成長したメカニズムや、
遠い星々のまわりの世界がどのように形成されるかを解明する手がかりが、
得られるかもしれないんです。

さらに、“カッシーニ”が土星の上を通過するときに、
土星の北極付近にある奇妙な六角形の様子を詳しく観測できると期待されています。

六角形のジェット気流は、研究室では再現できているのですが、
  なぜ長期間にわたって継続しているのか?
  なぜ他の場所では似たような現象が起こらないのか?
など、まだ分かっていません。

なぜ円形でなく、六角形の形状が保たれているのか…
太陽系内でもユニークな現象の解明が待たれますね。


土星の環くぐり

“カッシーニ”がリングをかすめる軌道を離れる4月以降には、
本当に刺激的なステージが始まることになります。

“カッシーニ”の探査チームが考えているのは、探査機のミッションが終了する前に、
今までどの探査機も入ったことがない場所に“カッシーニ”を向かわせること。

今度は単に土星の環に近づくだけでなく、土星の環の間に入り込むんですねー

このミッションは“グランドフィナーレ”と呼ばれ、
22回にわたって土星と環の間の狭い空間を通過する予定になっています。
グレーが環をかすめる軌道で、青が環の間を通過する軌道
そしてオレンジ色は最後に土星に突入する軌道

もちろん、この計画にはリスクが伴うことになり、
“カッシーニ”が土星の環を構成する氷の粒子と衝突すれば、
致命傷になる恐れがあります。

でも“カッシーニ”は最初に土星と環の間に突入する際に、
長距離アンテナを盾にして機体を保護できるので、
さほど心配はされていないんですねー

それでも、氷の粒子が重要な部分にぶつかってしまうと、
“カッシーニ”は機能を停止してしまうかもしれませんが…
ただ計画が順調に進めば、
この軌道から土星の磁場や高圧ガスでできた本体を、
今までにない精度で観測することが可能になります。

それによって、この巨大な惑星がどのように出来たのかを、
知る手がかりが得られるかもしれません。

でも、もっと楽しみなのは、“カッシーニ”の調査によって、
土星の環がいつから出来たのかを解明する手がかりが得られること。

環は土星が誕生した時からあったもの、
あるいは若い衛星の残骸、土星に近づき過ぎて重力により破壊された彗星など、
今のところ科学者たちの意見は分かれています。

ミッションの最終段階では、土星の環の質量も計測できる予定なので、
ここからも手がかりが得られるかもしれません。

そして2017年9月。
“カッシーニ”は最後に土星に突入する予定になっています。

土星の大気圏で燃え尽きる最後の瞬間まで、
“カッシーニ”は地球にデータを送り続けてくれるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 土星の環が一部破れる現象“ジェット”


土星の衛星タイタンで液体メタンに浸かった渓谷を発見

2016年08月19日 | 土星の探査
窒素とメタンで覆われた衛星タイタンは、
地球以外で唯一、地表に安定した液体が存在する天体です。

今回、NASAの土星探査機“カッシーニ”が、メタンに浸かった渓谷の証拠を発見しました。

発見があったのは、土星最大の衛星タイタンの北に位置するリゲイア海。

“カッシーニ”のレーダー装置により、
タイタンには炭化水素(メタン)に浸かった荒々しい渓谷が確認されました。
“カッシーニ”がとらえたメタンに浸かった渓谷の画像

これまでもタイタンには、液体メタンで出来た川や海があることは分かっていました。
でも、その渓谷が観測されたのは今回が初めてのこと。

この渓谷は“Vid Flumina”と呼ばれ、40度という鋭い角度の壁が存在していて、
渓谷の幅は0.8キロ以下で、炭化水素の深さは最大で570メートルもあります。

この渓谷は勾配が急なので、
地殻運動や海面レベル変化によって現れたものと考えられています。


メタンが循環する環境

土星の衛星タイタンは厚い大気と湖、川、海を持ち、
太陽系の中で最も地球に似た天体と言えます。

でも、その極寒の表面にあるのは水ではなく、
メタンやエタンのような有機分子の液体なんですねー

地球では水の雨が降り、川となって海に流れ、蒸発してまた雨になるのですが、
タイタンではエタンやメタンといった炭化水素が循環しています。

また、タイタンの大気は、
太陽光と土星の磁場のエネルギーによって、
多彩な有機分子が作られる“天然の化学工場”として、
長く研究者の興味を引き付けてきました。

現在のタイタンの大気は、
生まれて間もないころの地球の大気と、
化学的な特徴が似ていると考えられています。

地球に似ているとはいえ、タイタンの地表温度はマイナス170度…
液体メタンが流れる環境で暮らすのは難しそうですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 衛星タイタンに“魔法の島”が出現


土星の環が一部破れる現象“ジェット”

2016年07月04日 | 土星の探査
土星の環の中に何かが潜んでいるのでしょうか?

NASAが6月に発表した土星の画像に、
土星の環のひとつで、比較的外側にある細いF環の一部が、
崩れている様子が写っていました。
NASAの土星探査機“カッシーニ”からの画像。
比較的外側にあるF環の一部が崩れている様子がはっきり分かる。

この氷の環の崩壊は、
環の中に埋もれていた、見えない物体の仕業である可能性が高いんですねー


ジェット

実はこの特徴は研究者たちにジェットよ呼ばれていて、
よく見られる光景のようです。

NASAの土星探査機“カッシーニ”は、
2004年に土星を周回し始めて以来、多数のジェットを観測しています。

こうしたジェエットが作られる原因として考えられているのが、
土星の衛星プロメテウスの引力です。

プロメテウスは細長いジャガイモの形状をした小さな衛星で、
土星を周回しながら、その重力によってF環の形を維持する“羊飼い衛星”の一つです。

  “羊飼い衛星”とは、衛星の重力作用により惑星の環に影響を与え、
  環の崩壊を防いでいる衛星のこと。


でも、プロメテウスの軌道は完全な円では無いので、
不均一な重力によってF環の内部に雪玉の塊が作られることになります。

それがジェットとして噴き出す。
というのがF環の一部が崩れる現象“ジェット”の原因のようです。

過去にはジェットの影響で、
環が網目状、塊状、波状の構造になったこともあったんだとか…

F環が崩れている最新の画像は4月8日に撮影されたものなんですが、
6月10日のさらに新しい画像では、傷は自然に修復されていたそうです。
科学者にとってジェットジェットは、それほど驚く現象ではありません。
でも、その拡大画像は以前にも増して貴重なものになりそうです。

“カッシーニ”のミッションは終了が近づいていて、
運用終了予定は2017年9月15日になるんですねー

2016年末には土星の北極上空に移動して、土星と最も内側の環の間を飛行した後、
“カッシーニ”は大気に突入することになります。

“グランドフィナーレ”と名付けられたこのステージでは、
“カッシーニ”が土星の上層大気を採取し、貴重なデータを送信した後、
最期を迎えるそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 土星を取り巻く“Fリング”の謎… 解明したのはコンピュータシミュレーション


エンケラドスの地下には衛星全体に広がる海がある!?

2015年09月28日 | 土星の探査
表面を氷の地殻で覆われた土星の衛星エンケラドス。

今回、探査機“カッシーニ”の観測により、
この地殻の下に、全球的な規模の海が広がっていることが、
分かってきたんですねー
エンケラドスの直径は500キロ。氷の外殻の下には全球を覆う海があり、
南極の“タイガーストラップ(虎縞)”と呼ばれる地形(画像左側)から、
海水が噴出しているのが確認されている。
こうした海は、地球外生命体探査の重要な候補になる。


大きくふらついているエンケラドス

土星の衛星エンケラドスの南極からは、水蒸気や氷が間欠的に噴き出しているので、
氷の地殻の下に水が存在することが分かっています。

これまで、その水は南極付近に部分的に存在すると推測されていました。

今回の研究では、
NASAの探査機“カッシーニ”が撮影したエンケラドスの画像7年分を人力で分析。

クレーターなど地形の位置について慎重に地図を作成し、
エンケラドスの動きを正確に測定しています。

そして発見したのが、
エンケラドスが土星の周りを公転しながら、わずかにふらついていることでした。

このふらつきは非常に小さなものなんですが、
表面から核まで完全に固体であるような衛星のふらつきとしては、
大きすぎるんですねー

表面と核が強固につながっていたら、
核がおもりになるので、ふらつきは観測よりずっと小さくなるはずです。

今回の観測結果をうまく説明するには、
表面と核の間に、全体を覆う液体の層があると考える必要があるようです。

そう、エンケラドスの外殻は、全球を覆う液体に浮いている状態なんですね。
“エンケラドス”の海。“カッシーニ”が撮影した画像7年分以上を分析した結果、
エンケラドスの氷の外殻と岩石からなる核の間に、全球を覆う液体の海があることが分かった。


地球外生命の探査

エンケラドスには間欠泉があり、
宇宙空間に向かって塩水と有機分子を噴き出しています。

この現象をプルームといい、2005年にカッシーニが初めて発見して以来、
エンケラドスは「宇宙生物学者が行ってみたい場所ランキング」の上位にあるんですねー

それは、宇宙生物学者が探しているのが、
化学物質を豊富に含み、長い年月にわたって存在していると考えられる、
液体の水からなる海だからです。

そう、そこに生命が誕生しているかもしれないんですねー

ところが、エンケラドスについては、プルームこそ確認されているものの、
それが長い年月にわたって存在している海に由来している証拠は、
ほとんど得られていませんでした。

初期の理論では、
「おそらく衝突によって形成された局所的な小さい海がある」と、
考えられていました。

でも、そのような海は新しすぎて、生命が誕生しているとは考えにくくなります。

今回の研究結果のように、
エンケラドスの海が全球を覆っているのなら、
海は、長期にわたって安定的に存在することができるので、
微生物が誕生している可能性が出てきます。

全球を覆うほどの海を、
一時的な現象として説明するのは困難なので、
生命が誕生している可能性にとって、プラスの材料になるということです。


謎の多い天体

エンケラドスの他にも、
氷の外殻の下に海の層がある天体は、いくつか知られています。

たとえば、木星の衛星エウロパやガニメデは、
木星や他の巨大衛星の重力の影響で発生する熱により、
内部の海が液体の状態を保っていられることが分かっています。

一方、土星のエンケラドスはと言うと、未知の部分が多いんですねー

海の深さや、海が液体でいられるための熱の発生要因、
そして南極の氷の外殻だけが、間欠泉が噴出するほど薄くなっている理由も、
分かっていません。

南半球の海底だけが活動しているとか、
土星の重力による潮汐作用で、これまで考えられていた以上の熱が発生している、
という説が考えられます。

エンケラドスの海と、その下の惑星物理学的活動をめぐるこの謎は、
氷の外殻によって覆い隠されているということですね。


“カッシーニ”の今後の探査計画

“カッシーニ”による衛星への接近通過“フライバイ”は、
あと数回で終わりを迎えることになります。

そのなかで注目されるのが、
地質学的に活発な活動を見せているエンケラドスです。

エンケラドスには、
今年の10月14日と28日、さらに12月19日にフライバイを行う予定で、
10月28日のフライバイでは、エンケラドスの上空49キロまで接近。

表面のひび割れから間欠泉のように噴出する、
氷の粒子や水蒸気の中へ飛び込むように飛行するんですねー

これにより、エンケラドスの地下で何が起こっているのか?
を調べることになっています。

その後“カッシーニ”は、大きな衛星を遠くから数回観測し、
ダフニエ、テレスト、エビメテウス、アイガイオンなど、
いびつな形をした小衛星20個あまりを撮影。

そして2017年、
“グランドフィナーレ”と呼ばれる最後の1年間では、
土星の本体とその環の間を何度か繰り返し飛行する予定です。

そして、最後には土星に突入する予定になっているので、
今後も新たな情報をもたらしてくれるはずです。


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なぜ土星の環は、Aリングだけ高密度で若いのか?

2015年09月23日 | 土星の探査
「土星のAリングは他の環よりも密度が高く若い」可能性があることが、
探査機“カッシーニ”による土星の環の温度変化データとモデル計算の比較から、
示されました。


土星の環の消失

土星は約29年で公転していて、
その半分にあたる約15年ごとに、赤道の真上から太陽が照らします。

地球での「春分、秋分」にあたるこのタイミングでは、
土星の環の真横から太陽の光が当たることになります。

なので見かけ上、土星の環が消失したように見えるんですねー

また、この前後の数日間には、
環の中に見慣れない影や、波立ったような構造が現れ、
環の温度が下がります。
“カッシーニ”がとらえた2009年の春分時の土星



なぜAリングの温度は下がらないのか

NASAのジェット推進研究所の研究チームは、
土星が春分を迎えた2009年8月ごろに、探査機“カッシーニ”が取得したデータを調査。

コンピュータでモデル計算した温度データと比較しています。

すると、環の大部分では温度の下がる様子がモデルと一致しました。

でも、明るい環のうちで一番外側にあるAリングの温度だけは、
モデル計算よりも高いことが分かるんですねー

さらに詳しく調べたところ、
Aリングを構成する粒子の大半が1メートルくらいの大きさで、
成分のほとんどが氷であると考えれば、
観測されたような温度に最もよく合うことが分かってきます。

粒子が一部分に集まっている原因として考えられるのは、
過去数億年以内に、衛星が巨大天体の衝突で破壊されたという可能性。

残骸が環全体に均等に拡散するほど、時間が経っていないということです。

あるいは、複数の小衛星が環の内部に移動し、
氷の粒を外から運んできたのかもしれません。

この小衛星たちが、土星や他の衛星の重力で破壊され、
氷塊がAリングに広がったという説です。

こうした説が正しければ、
Aリング(とくに温度上昇が顕著な中央部)の年齢は、
土星本体と同じくらい古いと考えられている他の部分よりも、
ずっと若いことになるんですねー


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  土星の1日は、予測よりも短かった