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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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土星を取り巻く“Fリング”の謎… 解明したのはコンピュータシミュレーション

2015年09月05日 | 土星の探査
その衛星の重力作用により、惑星の環に影響を与え、
その崩壊を防いでいる衛星…

この衛星のことを羊飼い衛星といいます。

今回、土星の環の1つ“Fリング”とその羊飼い衛星“プロメテウス”、“パンドラ”が、
土星衛星の形成過程の最終段階で、自然な副産物として形成されることが、
コンピュータシミュレーションにより明らかになったんですねー


2つの衛星に挟まれている環

土星の環は、土星本体からの距離に応じて複数の部分に分かれています。

そのうち“Fリング”は、
1979年にNASAの探査機“パイオニア11号”が発見した幅数百キロの細い環で、
幅が数万キロに及ぶ主要な環の外側に位置しています。

また、“Fリング”の内側には“プロメテウス”、外側には“パンドラ”という、
2つの羊飼い生成があり、環の形状を保っているんですねー

NASAの探査機“ボイジャー”や“カッシーニ”によって、
“Fリング”と“プロメテウス”や“パンドラ”は、詳細に観測されました。

でも、その形成過程や起源は、これまで明らかになっていませんでした。
“Fリング”と羊飼い衛星“プロメテウス”(右の内側)、“パンドラ”(左)。


新しい環を作ったのは小衛星同士の衝突

今回の研究では、
国立天文台の計算機“GRAPE”などを用いてコンピュータシミュレーションを行い、
環と衛星が作られる過程に迫っています。

その結果、核を持つ小衛星同士が衝突を起こすと、
衛星が部分的に破壊され、生き残った2つの衛星が羊飼い衛星になり、
衛星の間に挟まれた軌道に分布する粒子が、“Fリング”になる様子が再現されたんですねー

最新の衛星形成理論によると、土星衛星系の形成過程の最終段階で、
密度の高い核を持つ小衛星が複数形成されると考えられています。

このことは“カッシーニ”による観測でも、
小衛星は密度の高い核を持つことが示唆されています。
今回の結果は、こうした先行研究や観測ともよく合うものでした。

なので、“Fリング”とその羊飼い衛星“プロメテウス”や“パンドラ”は、
土星衛星系の形成過程の最終段階で、自然な副産物として形成されたといえます。

環と羊飼い衛星のメカニズムは、
同様な環と羊飼い衛星を持つ天王星にも当てはめることができ、
太陽系内外の衛星系形成を解明する手掛かりになることが期待されているようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ カッシーニがとらえた、土星のもっとも内側の環

発見から300年 “カッシーニ”が衛星ディオネをフライバイ

2015年08月28日 | 土星の探査
8月17日に土星探査機“カッシーニ”が、
土星の衛星ディオネへの5回目となるフライバイを行いました。
フライバイ直前の17日に、
約6万3000~17万キロの距離から撮影された衛星ディオネ。
後ろを横切るラインは土星の環

土星の第4衛星ディオネは、
1984年に天文学者カッシーニが発見した直径1000キロほどの氷の衛星です。

発見者の名を冠した探査機“カッシーニ”は、
2004年から土星と、その衛星を探査していました。
ディオネへの接近通過“フライバイ”は今回で5回目、
そして最後になるそうです。
フライバイ時に撮影された画像。

今回のフライバイで、“カッシーニ”はディオネの上空474キロを通過。

重力や磁気圏、プラズマのデータから、
ディオネの内部構造や、内部構造が表面に及ぼす影響を知る、
手がかりが得られると期待されているんですねー
フライバイ後に広角カメラで約5万9000~7万5000キロの距離から可視光で撮影。


エンケラドスのフライバイへ

“カッシーニ”による土星の衛星フライバイは、
あと数回で終わりを迎えることになります。

そのなかで注目されるのが、
地質学的に活発な活動を見せている衛星エンケラドス。

エンケラドスには、
今年の10月14日と28日、さらに12月19日にフライバイを行う予定です。

10月28日のフライバイでは、エンケラドスの上空49キロまで接近。
表面のひび割れから間欠泉のように噴出する、
氷の粒子や水蒸気の中へ飛び込むように飛行するんですねー

これにより、エンケラドスの地下で何が起こっているのか?
を調べることになっています。

その後“カッシーニ”は、大きな衛星を遠くから数回観測し、
ダフニエ、テレスト、エビメテウス、アイガイオンなど、
いびつな形をした小衛星20個あまりを撮影。

そして2017年、
“グランドフィナーレ”と呼ばれる最後の1年間では、
土星の本体とその環の間を何度か繰り返し飛行する予定です。


こちらの記事もどうぞ。
  “カッシーニ”が発見。衛星テチス表面に複数の謎の赤い筋
  衛星エンケラドスから伸びる弦状構造って何?
  生命を生む熱水環境を土星の衛星エンケラドスに発見!

“カッシーニ”が発見。衛星テチス表面に複数の謎の赤い筋

2015年08月02日 | 土星の探査
探査機“カッシーニ”が撮影した画像から、
土星の衛星テチスの表面に、スプレーで描かれたような赤っぽい筋が発見されました。
4月に撮影された衛星テチス。色は強調してある。

土星の第3衛星テチスは、直径1000キロほどの小さな天体です。

表面には、いくつものクレーターが見られ、
直径450キロもあるオデッセウス・クレーターをはじめ、
大きなものが多くあります。

そのテチスに、細くカーブを描く赤っぽい不思議な筋模様が見つかりました。

同じく土星の衛星ディオスに見られるクレーターを除くと、
赤い色味の模様は、土星の衛星上では珍しいものになるんですねー

衝突クレーターなど古い地形を横切っているので、
おそらく、この模様は地質学的には若いもののようです。
テチス表面の赤っぽい筋。画像全体は490×415キロの範囲をとらえている。

2004年から土星や、その衛星を観測している探査機“カッシーニ”は、
ミッションの初期にも、この模様をかすかにとらえていました。

土星系ではここ数年、
北半球が夏を迎えていて、太陽の光がよく当たるようになっていました。

なので、赤い模様もはっきりと見えるようになっていたんですねー

赤い模様の起源や、その色は研究者にとって謎の1つになっています。

不純物の混ざった氷が露出しているという説や、
テチス内部からガスが噴出したためという説、
表面に割れ目のような地形がありそれと関連している、
という可能性などが考えられています。

でも、本当のところは分かっていません。
土星探査機“カッシーニ”

研究チームは赤い模様の追加観測を計画中で、
組成や原因の解明を目指し、11月には赤い模様を近くから撮影する予定です。

土星周回軌道に入って11年たっても、
“カッシーニ”は驚くべき発見をし続けてくれますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ “カッシーニ”がとらえた衛星ハイベリオンの最新画像

“カッシーニ”がとらえた衛星ハイベリオンの最新画像

2015年06月17日 | 土星の探査
このスポンジのような奇妙な姿は、
NASAの探査機“カッシーニ”がとらえたもの。

土星の第7衛星ハイベリオンへの最後のブライバイを実施した際に、
撮影されたものなんですねー
“カッシーニ”が5月31日に撮影したハイベリオン。
クレーターの底に暗い物質が見える。

ハイベリオンは直径270キロの衛星で、
表面には深いクレーターが無数に存在しています。

スポンジのようにも見える奇妙な姿は、
ハイベリオンの密度が、このような大型の天体としては異常に低いため、
水の半分ほどしかないそうです。

ハイベリオンの自転周期と自転軸は、不規則に変化し予測不可能なので、
特定の狙った領域を撮影することは難しくなります。

それでも2005年に505キロまで再接近するなど、
“カッシーニ”は、これまでにも何度かハイベリオンを探査していて、
ある程度は同じ領域をとらえているんですねー

また、ハイベリオンは公転中に土星の磁気圏を通過し、
プラズマにさらされて電気を帯びることに…

このハイベリオンからの電子ビームを、
2005年には“カッシーニ”のプラズマ分光器が検出したこともありました。

“カッシーニ”の次なるフライバイは6月16日になり、
氷の衛星ディオネに516キロの距離まで接近します。

そして、10月に予定されている最後のフライバイでは、
今最も注目されている衛星エンケラドスに、
わずか48キロまで近づくんですねー

その後、“カッシーニ”は土星の赤道面から離れ、
土星とその環の間を飛行する最後のミッションを行うことになります。

衛星エンケラドスから伸びる弦状構造って何?

2015年06月04日 | 土星の探査


土星の衛星エンケラドスのすぐ近くには、
長く曲がりくねった弦のような構造を見ることが出来ます。

この構造が、
エンケラドスの間欠泉から噴出した氷の粒で作られていることが、
シミュレーションの結果などから分かったそうです。


NASAの土星探査機“カッシーニ”が撮影した衛星エンケラドス周辺の写真に、
指のような形をした淡い構造が見られることがあります。

この弦状構造は、
おそらく、エンケラドスの間欠泉から噴出した氷で作られているようなんですが、
間欠泉と構造が、直接むすばれたことはありませんでした。

そこで、エンケラドスの南極に見つかっている間欠泉から噴出した氷粒が、
どのような軌道を描くかをシミュレーションすることに…

すると、撮影されたような弦状の形を、再現できることが分かったんですねー
エンケラドス周辺に見られる弦状構造(a、c)と、
それぞれを再現したシミュレーション画像(b、d)。

軌道は氷粒の大きさによって変化するのですが、
シミュレーションによって弦状構造を再現したときの氷粒の大きさは、
エンケラドスからの噴出物で作られる、
土星のE環に見つかっている粒子のものと一致していました。

さらに、弦状構造の形が時間の経過で変化するのは、
エンケラドスが土星を公転する間に受ける、潮汐力の変化からきているようです。

エンケラドスが大きな潮汐力を受けると、
間欠泉からの噴出物が増えて、弦状構造の形が変化するんですねー