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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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衛星タイタンではメタンが蒸発して雲の中で凝縮、雨になって地表に降り注いでいる? 小さくて深い湖から分かったこと

2019年04月30日 | 土星の探査
探査機“カッシーニ”による探査データから分かったこと。
それは、土星の衛星タイタンの北半球にある小さな湖の深さが100キロ以上もあることでした。
しかも湖があるのは丘や台地の上… なぜか標高が高いところに存在しているんですねー


液体が安定して存在している衛星

惑星の水星よりも大きな土星の衛星タイタン。
その表面にはエタンやメタンで満たされた湖や海が広がっています。
地表に液体が安定した状態で存在するのは、太陽系では地球とタイタンだけなんですねー
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探査機“カッシーニ”によるタイタンの近赤外線カラーモザイク画像。
北極の海が太陽光を反射して輝いている。
2017年4月22日のこと、NASAの土星探査機“カッシーニ”はタイタンへの最後のフライバイ(接近通過)を行います。
その時に得られたデータから得られたのは、タイタンの湖について興味深い発見でした。
  “カッシーニ”は2017年9月にミッションを終了している。
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探査機“カッシーニ”は土星大気に突入してミッションを終えた。
1つ目の発見は、タイタンの北半球に見られる湖に関するもの。
これらの湖は差し渡しは小さく数十キロほど… でも、深さが100キロ以上もあることが明らかになったんですねー

また、小さく深い湖はタイタンの西半分に存在し、丘や台地の頂上にあって標高が高いことも分かります。
東半分は標高が低く大きな海が存在していることと比べると対照的な地形をしていて、湖も海もほとんどメタンで満たされています。

これらの小さく深く高い湖は、周囲の氷や土壌が溶けたり崩れたりして、残されたものだと考えられています。
地球で石灰岩が雨水に侵食されて造られる“カルスト湖”に似ていますよね。

もう1つの発見は、“一過性の湖”と呼ばれる地形に関するもの。
レーダーや赤外線による探査データから示されたのは、湖の液位が大きく変化することでした。

このことから考えられるのは、タイタンの季節変化に応じて、メタンが蒸発したり地下に浸透したりして、液位が下がって湖が浅くなるということ。
蒸発したメタンは雲になり、雨になって地表に降り、地下にも広がっていくことになります。
  タイタンの気象は、地球と同じように季節ごとに変化していて、
  1年は長く地球の約30年にあたり、季節は7年ごとに変化している。


こうした物質の循環がタイタンで起こっているということは、これまでにも知られていました。
この物質の循環説を今回の2つの成果が強く裏付けたことになったということです。


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土星の自転周期は? 環はいつ作られたの? 探査機“カッシーニ”の最終ミッションから分かってきたこと

2019年01月28日 | 土星の探査
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土星探査機“カッシーニ”の最後のミッションから得られたデータが役に立ったようです。

そのデータから分かってきたのは、環は土星本体よりもずっと後になってから形成されたということ。
さらに、土星の正確な自転周期も環の観測データから判明しているんですねー


発見は“カッシーニ”最後のミッションのおかげ

NASAの土星探査機“カッシーニ”は、2017年9月に土星大気に突入してミッションを終えました。
でも、13年以上に及んだ探査で得られたデータの解析は、現在も続けられているんですねー
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土星の環の面を通過するNASAの土星探査機“カッシーニ”(イメージ図)。
今回の研究を進めたのはイタリアにあるローマ・サピエンツァ大学の研究チーム。
土星の環の質量が小さければ環の年齢は若いという過去の研究をもとに、土星本体の質量と環の質量を割り出しています。

研究チームは、“カッシーニ”と1980年代初めに土星を探査した“ボイジャー”がそれぞれ取得したデータを用いて、これまでより高い精度で環の質量を見積もり、そこから環の年齢をより正確に推測。
その結果、土星の環は今から1000万年前から1億年前までの間に形成されたことが分かります。

土星本体が形成されたのは他の惑星と同じく約45億年前。
なので、環は本体よりもずっと後になってから形成された若い構造という可能性が示されたことになります。
このことは、土星の環のもとになっているのは、土星に近づいてバラバラになった彗星や、破壊された氷衛星であるという理論を支持する結果でした。

今回の発見につながるデータが得られたのは、“カッシーニ”が最後のミッション“グランドフィナーレ”で、土星のすぐ近くを通り本体と環の間を何度も通り抜けるという探査を行ったおかげでした。
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土星大気に突入する“カッシーニ”
また、土星の赤道付近の大気の自転速度が、最外層から深さ約9000キロ(半径の15%ほど)のところで中心核の自転と同期していること。
つまり、中心よりも高速で自転する大気が、比較的深いところから存在していることも分かってきます。
さらに、核の質量が地球の15~18倍ということも分かりました。


ガス惑星の自転周期を測る方法

一方、環の観測ついて発表されたのは、土星の自転周期に関する研究成果でした。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究チームが明らかにしたのは、土星の自転周期が10時間33分38秒であること。

“ボイジャー”の観測データからは10時間39分23秒、“カッシーニ”の観測データからは10時間36分から10時間48分と見積もられていたので、それよりも数分早い結果でした。

土星はガス惑星なので、表面の地形を参照して自転周期を測ることはできません。

木星のように自転軸と磁場の軸がズレていれば、磁場の軸の動きで発生する周期的な信号を測定して自転を調べることができます。
でも、土星の磁場の軸は自転軸とほぼ一致しているんですねー なので、この方も使えません。

そこで、利用されたのが土星の環です。
土星本体の内部の振動の影響が、地震計のように環に現れるので、環の観測から土星内部の動きと自転周期を調べることが可能になりました。

こうしたアイデアが提案されたのは1982年のこと。
“カッシーニ”最期のミッション“グランドフィナーレ”によって、ようやく実現したというわけです。


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2019年01月03日 | 土星の探査
土星の環にある氷の粒子が、土星本体へ雨のように降り注いでいることを知ってます?

土星の環はほとんどが氷でできているので、氷の粒子が降り続ければ、いずれ環は無くなってしまうんですねー

しかも、かなりの勢いで土星本体に降り注いでいるので、環の寿命は1億年もないんだとか…
さらに土星は、形成された後に環を構成する物質を獲得し、環の年齢は1億年未満だと考えられます。

そう、40億年以上にも及ぶ土星の歴史の中で環が存在している期間は2億年も無いことになります。

私たちが思い浮かべる環を持つ土星はレアな姿で、その姿を見ることができたのは幸運なことなのかもしれませんね。
土星


土星には降り注ぐ氷の粒子

土星本体には、環から氷の粒子が雨のように降り注いでいます。

これは探査機“ボイジャー2号”が1981年に撮影した画像に見られた現象で、北半球の中緯度域の成層圏内に存在する3本の暗い縞模様がきっかけになって明らかになりました。

そこで、NASAゴダード宇宙飛行センターの研究チームは1986年の研究論文で、この模様と土星の強力な磁場との関係を発表。

その内容は、環の中で帯電した氷の粒子が磁力線に沿って土星の環から土星本体に移動し、成層圏の靄を流し、その部分が反射光では暗く見えている、というものでした。


3億年で土星の環は消えてしまう?

土星の環はほとんどが氷でできていて、その粒の大きさは肉眼では見えないチリほどのサイズから、数メートルの岩塊ほどまであります。

土星本体から受ける重力と、環が回転することによる遠心力とが釣り合っているので、氷の粒は環に留まっていられます。

でも、太陽の紫外線の影響によって氷の粒が帯電すると、バランスが崩れて、氷は磁場に沿って土星本体へと降っていくことになります。

NASAゴダード宇宙センターの研究チームは、2011年に行ったハワイのケック望遠鏡による赤外線波長での観測から、H3+イオンが土星の南北の両半球で帯状に輝いている様子を観測。

そのデータの分析から明らかになったのが、環から降る雨の量が、30年以上前に“ボイジャー”の探査データから計算された驚くほど大きな値とよく一致することでした。

環から降る雨の量は、30分でオリンピックのプールを一杯にできるほどの勢いで土星本体に降り注いでいたんですねー

これだけ量があると、環全体は3億年で消えてしまうことになります。


土星の赤道域にも氷の粒は降り注いでいる

実はこの現象は、NASAの土星探査機“カッシーニ”による観測でも発見されていました。
ただ、環の物質が降り注いでいたのは土星本体の両半球ではなく赤道域でした。

そう、この現象を加えると降り注ぐ量は増えるので、土星の環はもっと早く消えてしまうことに… 1億年未満で土星の象徴が無くなってしまうそうです。
40億年以上にも及ぶ土星の歴史と比べると、ずっと短い時間での出来事になるんですねー
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土星の環が内側から外側の順に消えていく様子。
土星本体と環は一緒に形成されたのか、本体形成後に環を構成する物質を土星が獲得したのかは、はっきりと分かっていません。

でも、今回の研究結果は後者のシナリオを支持していて、環の年齢は1億年未満だと考えられます。
ちょうど土星の環は寿命の中頃にあり、環を持つ土星の姿を見ることができた私たちは幸運なのかもしれません。

研究チームは、南半球のさらに高緯度にも光を放つ帯を発見しています。

このことが意味しているのは、間欠泉が存在する土星の衛星エンケラドスからの水蒸気や氷の粒の一部も、磁場に沿って土星本体に降り注いでいるということ。

土星が29.4年の周期で太陽を公転する間に、環への太陽光の当たり方が変化すると、環から降る雨の量にも変化あるはずです。

今後、研究チームでは、季節ごとの雨の降り方の違いを明らかにしていくそうですよ。


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謎の光る点は砂丘から舞い上げられた砂塵の雲? 活発な衛星タイタンに新しい特徴を発見

2018年10月20日 | 土星の探査
地球以外で唯一、地表に安定した液体が存在しているのが土星の衛星タイタンです。

意外に思うかもしれませんが、厚い大気と湖、川、海を持っていて、太陽系の中で最も地球に似た天体と言えるんですねー

ただ、極寒の地表にあるのは水ではなく、メタンやエタンのような有機分子の液体…

地球では水の雨が降り、川となって海に流れ、蒸発してまた雨になるのですが、タイタンではエタンやメタンと言った炭化水素が循環しています。

今回、そのタイタンに新しい特徴が見つかりました。
どうやら、タイタンの赤道領域では大規模な砂嵐が発生しているようです。


土星探査機の観測データから分かった新しい特徴

NASAとヨーロッパ宇宙機関などが運用した土星探査機“カッシーニ”は、2004年から2017年まで土星とその衛星を周回して探査を行っていました。

今回、その膨大なデータの一部から、土星最大の衛星タイタンの赤道領域に、大規模な砂嵐と思われるものが発生していたことが分かってきました。

砂嵐が観測されているのは太陽系内では地球と火星のみ。
なのでタイタンは、太陽系では3例目の天体になります。

タイタンと言えば、地形や一風変わった炭化水素の循環について知られていました。
そこに、砂嵐という新しい特徴が加わることになります。


メタンやエタンが循環する極寒の環境

太陽系内の衛星として唯一、豊富な大気を持つ天体がタイタンです。

さらに、地球以外で表面に安定的に液体が存在する唯一の天体でもあります。

ただ、タイタンの表面温度は摂氏マイナス180度ほどで、存在している液体は水ではなく、主にメタンとエタンなどの液体のガス。

タイタンでは炭化水素の分子が蒸発して雲の中で凝縮、雨となって地表に降り注いでいるんですねー
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液体のメタンやエタンが地表に存在するタイタン(イメージ図)


赤道付近に現れる謎の光る点

タイタンの気象は、地球と同じように季節ごとに変化します。
1年は長く地球の約30年にあたり、季節は7年ごとに変化。

特に、約15年ごとに訪れるタイタンの春分や秋分の頃には、赤道付近で巨大な雲が形成され、激しいメタンの嵐が発生しています。

“カッシーニ”は、タイタンの北半球が春分を迎えていた2009年頃に赤道付近を赤外線で撮影。
すると、通常とは異なる3つの光る点が見つかります。

当初、この光る点はメタンの雲だと思われていました。

ただ、タイタンで雲が形成される仕組みから考えると、この時期にこの領域にメタンの雲が発生することは物理的に不可能なんですねー

そして、この模様を詳しく調べてみて、雲とは違うものだと分かってきます。
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3つの明るい模様(矢印の先)
中断の画像が模様が最も明るいときのもので、
上下は胴領域をその前後の期日にとらえたもの。


正体は大気中に広がる個体粒子の薄い層

この明るい模様は最短で11時間、最長でも5週間ほどで消えてしまったので、表面で凍結したメタンの雨や、内部から表面に流れ出て凍った物資である可能性は無いようでした。

さらに、化学組成の面からも表面の特徴ではないことが示されます。

考えられるのは、この特徴は表面に近い大気中に広がる固体粒子の薄い層だということ。

模様の位置がタイタンの赤道付近に存在する砂丘の真上にあたるので、この模様は砂丘から巻き上げられた砂塵の雲だと考えられます。

この砂嵐は、地球の乾燥した地域で発生する大規模な砂嵐“ハブーブ”と同じもののようでした。
“ハブーブ”は、雨で冷えた空気が下降することで突風が発生し、その風によってチリが舞い上げられる現象です。

タイタンの赤道付近では、メタンの嵐が同じような突風を発生させている可能性があります。

強い風や大規模な砂嵐によって、タイタンの砂丘は常に変化し続けているのかもしれません。
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タイタンの砂嵐(イメージ図)

液体のメタンが流れる川や、メタンの雨に浸食された地形、激しいメタンの嵐や大規模な砂嵐の発生…
とても活発な衛星タイタン、それでも太陽系の中で最も地球に似ている天体なんですねー


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環のすき間にくっきりと見えた土星の衛星ダフニス

2017年02月01日 | 土星の探査
昨年の12月から土星の輪の観測を始めている探査機“カッシーニ”が、
今度は衛星ダフニスの画像を送ってきたんですねー

地球に送り届けられた画像からは、
衛星ダフニスの模様だけでなく、環の微細な構造がとらえられているようです。


土星の環の中にある衛星と隙間

2005年にNASAの探査機“カッシーニ”の撮影画像から発見されたのが、
直径8キロほどの小さい衛星ダフニスです。

ダフニスが位置しているのは、
土星のA環の中にある幅42キロの“キーラー間隙”という隙間で、
この隙間があるのが、幅が約1万4600キロあるA環の外側から約250キロ内側。

その衛星ダフニスと“キーラーの間隙”を、
約2万8000キロの距離から“カッシーニ”が撮影(1月16日)した画像が公開されました。

解像度は1ピクセルあたり168メートルで、
これまでで最も精細にダフニスの姿がとらえられています。
“キーラーの間隙”と衛星ダフニス。
斜めから撮影しているので、
“キーラーの間隙”は実際よりも細く見えている。

この画像からは、土星の他の小衛星アトラスとパンのように、
ダフニスの赤道部分にも狭い隆起部を見ることができました。

表面はなめらかなので、
環から細かい粒子が降り積もっていると考えられています。

また、いくつかのクレーターや、赤道と平行にある別の隆起も見えていました。


環の様子

ダフニスだけでなく、環の様子も詳細に見えていました。

いくつかの幅の広い部分では、表面がざらざらしているように見えているので、
粒子同士が集まっている構造なのかもしれません。

また特徴的なのが、画像の左端に見られる“キーラーの間隙”の波の頂点が、
他のくっきりとした部分に比べてなだらかなことでした。

ダフニスの重力によって間隙の縁には波が生じます。

この現象は、おそらくダフニスが、
この部分に近づいた際に環を構成する細かい粒子が、
動かされ広がったものだと考えられます。

さらに、ダフニスのすぐ後(左側)には、
環の物質が細かくかすかな蔓状に見えています。

これは、ダフニスが環から一まとまりの物質を引きずり出し、
それが拡散しつつあるところかもしれません。

今後“カッシーニ”は、土星の環のそばを周回しながら、
さらに観測を続け、2017年9月には土星に突入する予定です。

それまでに沢山の成果を、
“カッシーニ”は地球に届けてくれるんでしょうね。


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