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小惑星ベンヌのサンプルを収めたカプセルは9月24日に帰還予定! NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が軌道修正操作を実施

2023年07月30日 | 太陽系・小惑星
NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”を地球へ接近させるための軌道修正操作が7月26日に実施されました。

“オシリス・レックス”のミッションは、日本の“はやぶさ”や“はやぶさ2”と同様に小惑星からサンプルを採取して地球に持ち帰ること。

小惑星ベンヌ(101955 Bennu)から採取されたサンプルを収めたカプセルは、現地時間2023年9月24日に地球へ帰還する予定です。

地球近傍小惑星の一つであるアポロ群に属しているベンヌは、1999年に発見された直径約560メートルの小惑星で、そろばんの玉のような形をしています。

有機物(炭素を含む化合物)や水を多く含む“C型小惑星”と呼ばれる天体に分類されていて、これは“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウと同じ特徴といえます。
現在のベンヌの軌道から、将来的に地球に衝突する可能性がわずかにあることも知られている。
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
こうした小惑星は、46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保持している“化石”と考えられているんですねー

なので、探査や持ち帰ったサンプルを詳しく分析することで、太陽系初期の様子や惑星形成などに関する手掛かりが得られるはず。
さらに、生命の起源の謎を解く手がかりも得られると期待されています。
小惑星ベンヌの表面に向けて降下する小惑星探査機“オシリス・レックス”(イメージ図)。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
小惑星ベンヌの表面に向けて降下する小惑星探査機“オシリス・レックス”(イメージ図)。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
アメリカ版“はやぶさ”とも呼ばれる“オシリス・レックス”は2016年9月に打ち上げられ、ベンヌに到着したのは2018年12月。
“オシリス・レックス”はNASAとロッキード・マーティン社、アリゾナ大学などが開発した小惑星探査機。打ち上げ時の質量は約2110キロで、同じようなミッションを背負った日本の“はやぶさ2”の約3.5倍にもなる。2016年9月9日午前8時5分(日本時間)に、フロリダ州のケープカナベラ空軍ステーションからアトラスVロケットで打ち上げられた。
周回軌道上からの観測を重ねた後の2020年10月に表面からのサンプル採取が実施。
目標の60グラムを大幅に上回るサンプルが集められた判断されていたんですねー

2021年5月にベンヌを出発した“オシリス・レックス”は、カプセルの地球帰還に向けて飛行を続けていました。
2022年7月~2023年10月にかけての小惑星探査機“オシリス・レックス”の軌道を示した動画。(Credit: NASA Goddard Space Flight Center, Scientific Visualization Studio, Kel Elkins)
NASAによると、2023年7月26日にスラスターを約63秒間噴射する軌道修正操作“TCM10(Trajectory Correction Maneuver)”を実施。
“オシリス・レックス”は軌道修正操作前よりも地球へわずかに近付く軌道に入っています。

7月26日の時点で“オシリス・レックス”は、地球から約3860万キロ離れた空間を時速3万5000キロ(秒速約9.7キロ)で移動中。
今後は“TCM10”の実施前後に取得されたデータを元に、軌道修正操作が計画通りに実施できたかどうかを分析することになります。

今回、実施されたのは地球帰還に備えた最終段階の軌道修正操作。
NASAによれば、回収予定地になっているアメリカ・ユタ州のユタ試験訓練場にカプセルを正確に進入させるための軌道修正操作が、9月10日と9月17日にも実施される予定です。

また、ユタ試験訓練場では現地時間7月18日から20日にかけて、回収作業の本格的なリハーサルを実施しています。
アメリカ・ユタ州の試験訓練場で実施されたカプセル回収のリハーサルの様子(現地時間2023年7月19日撮影)。(Credit: NASA/Keegan Barber)
アメリカ・ユタ州の試験訓練場で実施されたカプセル回収のリハーサルの様子(現地時間2023年7月19日撮影)。(Credit: NASA/Keegan Barber)
なお、探査機“オシリス・レックス”本体はカプセル分離後のミッション延長がすでに決定しています。

ミッション名は“オシリス・アペックス(OSIRIS-APEX)”に改められ、2029年に小惑星アポフィス(99942 Apophis)に到着して周回探査を実施する予定です。


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なぜ、地球以外の天体の内部構造を明らかにしたいのか? 観測で見えてくるもの

2022年07月31日 | 太陽系・小惑星
史上初めて火星に地震計を持ち込んだNASAの探査機“インサイト”。
ミッションでは火星で起こる1300以上もの“火震(地球での地震)”を検出してきました。

“火震”のデータは、それ自身が火星の内部構造を反映しています。

なので、データを調べることで直接見ることのできない核から地表までの内部構造が明らかになり、火星の形成や進化を解明していく上で欠かすことのできない情報を得ることができます。

そう、“火震”の検出は科学的価値が極めて高いものなんですねー

ただ、そのミッションも今夏その役目を終えることになりそうです。
原因は、太陽電池パネルに降り積もったチリのようです。

火星の地質調査を行う探査機

NASAの低予算プログラム“ディスカバリー”の候補に挙がっていた3つの計画。
この中から選ばれたのがインサイトミッションでした。

選ばれた理由は、スケジュールがズレ込む可能性や、予算の上限を超える可能性が低かったこと。
ただ、搭載機器の“地震計”に問題が発生し打ち上げは延期…
“地震計”の改良や、完成している探査機本体や機器の保管などに更に予算が必要になってしまいます。

それでも2018年5月に火星探査機“インサイト”は打ち上げに成功。
2018年11月には、火星の赤道付近にあるエリシウム平原地域の“ホームステッド”と呼ばれる浅いクレーターに着陸します。

NASAにとって火星への着陸に成功した8機目の探査機インサイト。
火星の内部構造の調査の始まりでした。
2018年12月にNASAの火星探査機“インサイト”が初めて撮影したセルフィ―(Credit: NASA/JPL-Caltech)
2018年12月にNASAの火星探査機“インサイト”が初めて撮影したセルフィ―(Credit: NASA/JPL-Caltech)

火星は熱で溶けた状態の大きな核を持っている

“インサイト”が検出した火震の速度と波形を調べて分かったこと。
それは、火星には予想外に大きい核があることでした。

さらに、確認されているのは、火星の核が地球の核と同じように熱で溶けた状態であること。

これまで、火星は地球よりもはるかに小さいので、惑星形成時に持っていた熱を早く失い、地球に比べより早く冷却されたと考えられていたんですねー
このため、火星の核は固体になっているだろうという説がありました。

また、“インサイト”は火星の核の密度が低いということも明らかにしています。
核の主な構成成分の鉄とニッケルより軽い元素が混じっていることで融点が下げられていることも、核の固化を遅らせている原因なのかもしれません。

様々な発見をしてくれた“インサイト”ですが、その役目も今年の夏に終えることになりそうです。
理由は太陽電池パネルに降り積もったチリによる電力の不足でした。
2022年4月24日に撮影された、“インサイト”最後のセルフィ―。太陽電池パネルにチリが積もり、得られる電力がコントロール不能なレベルまで低下してしまった。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
2022年4月24日に撮影された、“インサイト”最後のセルフィ―。太陽電池パネルにチリが積もり、得られる電力がコントロール不能なレベルまで低下してしまった。(Credit: NASA/JPL-Caltech)

次の観測は土星の衛星タイタンへ

地球以外での天体における地震観測は、“インサイト”と共に終わるわけではありません。

2027年に打ち上げを予定しているNASAの探査ミッション“ドラゴンフライ”。
このミッションの目的地は土星の衛星タイタンです。

タイタンは水星よりも大きく、太陽系の衛星としては木星のガニメデに次ぐサイズの天体です。

大きな特徴の1つは、衛星としては唯一、大気が存在すること。
その主成分は地球と同じ窒素で、表面気圧は地球の1.5倍あります。

このミッションがインサイトミッションと異なるのは着陸機にあります。
着陸機にはタイタンの様々な場所を飛行し移動するマルチロータードローンが使われます。

この着陸機に搭載されるJAXA開発の地震計は、表面を氷に覆われたタイタンの内部をのぞき込むことになります。

この地震計が軽量なんですねー
“インサイト”の地震計パッケージの11キロという重量に比べると、なんと300グラムという軽さで開発されています。
ドラゴンフライミッションの概略図。降下~着陸~地上活動~飛行など。(Credit: Johns Hopkins/APL)
ドラゴンフライミッションの概略図。降下~着陸~地上活動~飛行など。(Credit: Johns Hopkins/APL)

高感度月震計のネットワークを月に配置する

“インサイト”と“ドラゴンフライ”に搭載されている地震計はそれぞれ1台です。
でも、JAXAには月面に複数の地震計を設置するという構想があるんですねー

アポロ計画において宇宙飛行士が月面に地震計を置いて観測した月の地震“月震”は、地球の重力が生み出す潮汐力の影響で月がたわんで発生していると考えられています。

月の内部を解明することで、地球―月系の理解に役立つだけでなく、将来の有人基地建設にも必要な情報が得られるはずです。

このことからも、“インサイト”による火震の長期間の観測、そこから得られた火星内部構造の解明は素晴らしい成果でした。
内部構造の探査は、今後の太陽系探査の大きなテーマと言えます。

地震大国である日本も、独自の高感度月震計を月にネットワーク的に配置して、未だ不確定な月の内部構造を詳しく知るという計画を検討しています。

これは月面基地や月面天文台といった大規模構造物を月に展開する際にも重要な知見となると考えられます。

木星の氷衛星を探査する計画“JUICE”

岩石型天体の内部構造を明らかにする主な方法として地震計があります。

一方、もし内部が固体でない場合にはどうするのでしょうか?

もちろん、それに代わる方法もあるんですねー
それは、2023年の打ち上げを目指しているヨーロッパ宇宙機関が主導する木星氷衛星探査計画“JUICE”です。

このミッションでは、表面の氷の下に巨大な地下海が存在すると考えられている木星の氷衛星を複数探査。
ミッションの最後には氷衛星ガニメデを周回して精査する予定です。

“JUICE”に搭載予定の機器のうちJAXAが担当するのは、GALA(ガニメデ高度計)など、いくつかのハードウェアの一部。
このGALAによって、氷衛星ガニメデの地下海の詳細が明らかになる可能性があります。

惑星の探査が進むにつれて、地球以外の天体の内部構造も次第に明らかになっていくはずです。

木星氷衛星探査計画“JUICE”は、木星の氷衛星と呼ばれているエウロパ、ガニメデ、カリストのフライバイ観測を行った後、ガニメデ周回衛星となって氷衛星の内部にあると考えられている液体の海の探査を行います。

日本が観測装置の一部を担当しているガニメデ高度計“JUICE-GALA”はJUICE衛星とガニメデとの間の距離を測定することで、木星の周りを回るガニメデ衛星の形状変化をとらえて、ガニメデ衛星の地下海構造を明らかにする予定です。

私たちに初めて地球以外の惑星の詳細な内部構造を見せてくれたのが火星探査機の“インサイト”でした。
“インサイト”の観測データは今後も引き継がれ、惑星や衛星の形成についてこれまでよりはるかに多くの知見が蓄積されていくでしょう。

さらに、来年の4月には“JUICE”の打ち上げが予定されています。
今後の太陽系探査の大きなテーマ、内部構造の探査が進むことが期待されますね。


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太陽系形成前に生成された有機分子を“炭素質隕石”の中から直接検出することに成功

2020年12月10日 | 太陽系・小惑星
今回、研究成果を発表したのは、北海道大学と海洋研究所、九州大学、東北大学、東京大学からなる共同研究チーム。
12月8日に行われた発表によると、炭素質コンドライト隕石から太陽系形成以前の有機物質“ヘキサメチレンテトラミン”の検出に成功したそうです。
隕石ごとの“ヘキサメチレンテトラミン”の分布を明らかにすることで、宇宙における分子進化だけでなく、太陽系形成に至るまでの天体進化を紐解く上で重要な情報を得ることができるようです。

“C型小惑星”は太陽系形成時の情報を内包したタイムカプセル

太陽系に存在するほぼ全ての物質は、46億年前の太陽系創世の際に、その元になった星間分子雲に存在した物質から形成されたものになります。
まぁー、別の恒星系からやってきて太陽系に居ついた物質がある可能性もありますが…

でも、どのような化学物質がどのように変化したのかなど、宇宙における分子進化に関しては、まだ多くの謎が残されています。

星間分子雲に存在する水やアンモニア、メタノールなどの比較的単純な構造を持つ分子は、極低温(-263度)環境での光化学反応によって、より複雑な構造を持つアミノ酸や糖などの複雑な生体関連分子へと変化していきます。

そして、その一部は惑星系形成時に星の材料として取り込まれていくことになります。

それゆえ、有機分子を多く含むC型小惑星や、そのかけらである炭素質コンドライト隕石は、46億年前の太陽系形成時の情報を内包したタイムカプセルとして重要視されています。

先ほど地球へのサンプルリターンを成し遂げた“はやぶさ2”が探査した小惑星“リュウグウ”、NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”も“C型小惑星”と呼ばれる炭素質の小惑星になります。

そう、“はやぶさ2”や“オシリス・レックス”は、C型小惑星からのサンプルリターンのために、それぞれの小惑星に向かったわけです。

小惑星上で分子生成反応の材料になったもの

これまでの研究から分かってきたことがあります。

それは、より複雑な分子の生成に必要不可欠なのが、ホルムアルデヒドとアンモニアなどの分子であること。
ただ、どちらの分子も揮発性が極めて高いという問題があるんですねー

なので、それらの分子がどのようにして小惑星において反応の材料になり得たのか、その詳細はあまり明らかになっていませんでした。

その謎を解明するカギになりそうなのが“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”です。

この化合物は揮発性が低く、星間分子雲における光化学反応の主生成物のため、太陽系形成時に星の材料になったと考えられています。

さらに、水と共に加熱するとホルムアルデヒドやアンモニアなどが生成されることから、小惑星上での分子生成反応の材料として期待されていました。

でも、これまでの宇宙望遠鏡を用いた赤外・電波天文観測や、隕石による分析から、“ヘキサメチレンテトラミン”が検出された例はありませんでした。

“炭素質隕石”から有機物質“ヘキサメチレンテトラミン”を精製

今回、共同研究チームが試みたのは、これまでと異なる手法で炭素質隕石を分析し、“ヘキサメチレンテトラミン”を直接検出しようというもの。

サンプルに選ばれたのは、アミノ酸などの有機化合物を豊富に含んだマーチソン隕石、タギッシュレイク隕石、マレー隕石という3種類の炭素質隕石でした。

“ヘキサメチレンテトラミン”を分解してしまわないように高濃度の強酸や熱湯の使用を避けたうえで、それらの隕石から水溶性成分が抽出され、“ヘキサメチレンテトラミン”を含む画分の精製が行われました。

その後、高速液体クロマトグラフ超高分解能質量分析計を用いて、分子レベルでの精密な分析を実施。
分析の結果、3種類の炭素質隕石全てから“ヘキサメチレンテトラミン”が検出され、その濃度は最大で隕石1グラム当たり846ng含まれることが判明します。

さらに明らかになったのは、検出された量が同じ隕石に含まれるアミノ酸量に匹敵するほど多いことでした。

また、隕石を用いないブランク実験や隕石落下地点の土壌サンプルの分析では、ほとんど“ヘキサメチレンテトラミン”が検出されませんでした。
このことから、検出された“ヘキサメチレンテトラミン”は隕石固有であると結論付けられています。

太陽系形成前に生成された有機分子

比較的湿度の高い小惑星環境では、“ヘキサメチレンテトラミン”が生成するよりも分解する方が有利になります。

このことから考えられるのは、今回の研究で検出された“ヘキサメチレンテトラミン”が、主に約46億年前の太陽系形成よりも以前の時代、星間分子の光化学反応で生成されたことです。

これまで、太陽系形成以前の化学反応の関与を示唆する要素として、隕石有機物に一般的にみられる高い重水素濃集が認識されてきました。

でも、今回の研究により、太陽系形成前に生成された有機分子が具体的に確認されることになりました。

研究では、検出された“ヘキサメチレンテトラミン”が、隕石ごとにその濃度が大きく異なることも明らかになっています。

その原因の一つとして示唆されているのが、小惑星での熱水活動の程度の違いや、小惑星誕生時の“ヘキサメチレンテトラミン”量の多様性などです。

つまり、隕石ごとの“ヘキサメチレンテトラミン”の分布を明らかにすることで、宇宙における分子進化だけでなく、太陽系形成に至るまでの天体進化を紐解く上で、重要な情報を得ることができるはずです。
星間分子雲から太陽系形成に至るまでの分子進化の模式図。星間分子雲では光化学反応により“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”が生成、小惑星上での熱水活動によりアミノ酸や糖が生成される。(Credit: Hokkaido University)
星間分子雲から太陽系形成に至るまでの分子進化の模式図。星間分子雲では光化学反応により“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”が生成、小惑星上での熱水活動によりアミノ酸や糖が生成される。(Credit: Hokkaido University)
今後は、今回の研究で用いられた3種類以外の隕石や、“リュウグウ”から持ち帰られたサンプル、そして“オシリス・レックス”が2023年に持ち帰る予定の“ベンヌ”からのサンプルなどからも、“ヘキサメチレンテトラミン”の検出を試みるそうです。

その存在量を比較することで、宇宙の物質進化の理解が進むといいですね。


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アメリカ宇宙探査史上初めての小惑星からのサンプルリターン! NASAの“オシリス・レックス”がベンヌへの着地とサンプル採取に成功

2020年10月26日 | 太陽系・小惑星
NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が小惑星ベンヌへの着地に成功しました。
“オシリス・レックス”のミッションは、日本の“はやぶさ”や“はやぶさ2”と同様に小惑星からサンプルを採取して地球に持ち帰ること。
順調に進めば、小惑星からのサンプルリターンは日本に続き2番目の成功になり、アメリカ宇宙探査史上でも初めてのことになるんですねー
サンプル採取の成否は今月末にかけて確認されるそうです。
“オシリス・レックス”のカメラがとらえた着地の様子。機体が降下し(左)、ロボットアームの先端がベンヌの地表に触れると、小石などが舞い上がっている。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
“オシリス・レックス”のカメラがとらえた着地の様子。機体が降下し(左)、ロボットアームの先端がベンヌの地表に触れると、小石などが舞い上がっている。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)

小惑星ベンヌへの降下

“オシリス・レックス”が小惑星ベンヌへ降下を開始したのは日本時間10月21日午前2時50分。
北半球にあるクレーター“ナイチンゲール”の中を目指していました。
“オシリス・レックス”はNASAとロッキード・マーティン社、アリゾナ大学などが開発した小惑星探査機。打ち上げ時の質量は約2110キロで、同じようなミッションを背負った日本の“はやぶさ2”の約3.5倍にもなる。2016年9月9日午前8時5分(日本時間)に、フロリダ州のケープカナベラ空軍ステーションからアトラスVロケットで打ち上げられた。

“オシリス・レックス”はスラスターを噴射して、地球から約3億2000万キロ離れた小惑星ベンヌ上空の周回軌道から離脱。
上空約800キロで長さ3.35メートルのサンプル採取アーム“TAGSAM”を伸ばし、4時間かけて高度を約125メートルまで下げています。

ここで、スラスターを噴射してベンヌへ一気に降下し、10分後に再びスラスターを噴射して減速。
“オシリス・レックス”の動きをベンヌの自転速度に合わせたんですねー

最後の11分間は、“オシリス・レックス”の自動航行システム“ブルズアイTAG”を使い、岩石を避けてナイチンゲールを目指しています。
“ブルズアイTAG”ではベンヌ表面の画像を使い探査機が表面に接地するまで高い精度で誘導する。
直径約8メートルの“ナイチンゲール”は、予想外に岩塊に覆われているベンヌの表面の中で、比較的開けている数少ない地点の一つでした。

サンプルの採取方法

“オシリス・レックス”のサンプル採取方法は“タッチ・アンド・ゴー(Touch And Go:TAG)”と呼ばれています。

“はやぶさ2”は地表に向けて弾丸を発射して舞い上がった地表物質を採取します。
これに対して、“オシリス・レックス”が採用したのは、地表に窒素ガスを吹き付けて舞い上がった物質を採取する方法。
採取時には、探査機本体から“TAGSAM”と呼ばれるアームを伸ばし、その先端をベンヌの表面に接地すると同時に窒素ガスを噴射します。

送られてきた信号によれば、21日午前7時8分に“オシリス・レックス”は無事タッチダウンし、サンプルの採取に成功したとみられています。

サンプル採取アーム“TAGSAM”先端のサンプリングヘッドが、ベンヌの表面に接地していたのは6秒間ほど。
その間に窒素ガスを噴射して、巻き上げられた地表物質を容器に回収し、その後“オシリス・レックス”は正常に上昇しています。

小惑星からのサンプルリターンを世界で初めて成功させたのは2010年の“はやぶさ”でした。
彗星からのサンプル回収を2006年に成功させたアメリカですが、小惑星では今回が初めての挑戦になります。
サンプル採取のため小惑星ベンヌへ降下する“オシリス・レックス”のイメージ図。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
サンプル採取のため小惑星ベンヌへ降下する“オシリス・レックス”のイメージ図。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)

サンプルが採取されているかの確認

サンプル採取の成否確認も“オシリス・レックス”と“はやぶさ”では異なっています。

“はやぶさ”が地球帰還後にカプセル内を調べて確かめるのに対して、“オシリス・レックス”のサンプル確認は現地で行われます。

“TAGSAM”先端のカメラ“SamCam”がタッチダウンの前後に撮影した82枚の画像や、機体を回転させて回収装置の重さの変化を調べ、採取されたサンプルの量を見積もることになります。
“オシリス・レックス”のカメラが撮影した画像から作成されたタッチダウン時の動画。(Credit: NASA)
サンプルが少なくとも60グラム採取されていることが確認できれば、“TAGSAM”から探査機本体のカプセルへとサンプルが格納されます。
もし、目標量に達していない場合は、2021年1月12日に再びタッチダウンを実施。
2度目のサンプル採取地点は、ベンヌの赤道付近に位置するクレーター内にある比較的岩塊の少ない“オスプレイ”と呼ばれる場所になります。

その後の運用チームにより、サンプルの採取装置はベンヌの地表に対して水平に接地し、数センチもめり込むほど完璧なタッチダウンだったことが確認されました。
装置内部はチリや石で一杯になっていて、60グラム以上という目標をはるかに上回る量が採取できたそうです。

一方、判明したのが採取したサンプルの一部がこぼれだしていること。
運用チームは、やや大きめの石が入っていたので、採取装置の蓋が締まりきらず、その隙間から小さな断片が通過していると考えています。

当初、探査機を回転させることで採取装置に入ったサンプルの量を測ったり、探査機にブレーキをかけるためスラスターを噴射したりといった運用を計画していたのですが、探査機を動かすとサンプルがさらに失われる可能性があるので、これらを取り止めています。
まず、サンプルを回収カプセルに収容することを優先させるそうです。

サンプルを格納した“オシリス・レックス”は、2021年3月にベンヌを出発し、2023年9月24日にサンプルを地球へ届ける予定です。

地球近傍小惑星の一つであるアポロ群に属しているベンヌは、1999年に発見された直径約560メートルの小惑星で、そろばんの玉のような形をしています。

有機物(炭素を含む化合物)や水を多く含む“C型小惑星”と呼ばれる天体に分類されていて、これは“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウと同じ特徴といえます。
現在のベンヌの軌道から、将来的に地球に衝突する可能性がわずかにあることも知られている。
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
こうした小惑星は、46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保持している“化石”と考えられているんですねー

なので、探査や持ち帰ったサンプルを詳しく分析することで、太陽系初期の様子や惑星形成などに関する手掛かりが得られるはず。
さらに、生命の起源の謎を解く手がかりも得られると期待されています。

一方、今年12月6日の地球帰還に向けて、“はやぶさ2”は地球から約1700万キロの位置を航行しています。
日本とアメリカは小惑星からのサンプルリターンで成果を競うかたちになりますが、回収したサンプルを交換して分析するなどの協力関係も結んでいるようですよ。


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はるか彼方“オールトの雲”からやって来る長周期彗星の軌道分布には偏りがある

2020年10月06日 | 太陽系・小惑星
200年以上の公転周期を持つ長周期彗星は、あらゆる方向から満遍なくやってくるのではないようです。
今回、国立天文台が発表したのは、長周期彗星の軌道の向きが特定の2つの面に集中していること。
解析的手法を用いた研究で予測され、さらに数値計算と彗星カタログによっても確認したそうです。

太陽系を球殻状に包む雲

太陽系は、無数の小天体が球殻状に広がっている“オールトの雲”と呼ばれる想像上の天体群に包まれていると考えられています。

想像上とされているのは、現時点で直接“オールトの雲”に属する天体を観測していないから。
海王星の外側の軌道、冥王星などを含む太陽系外縁天体が含まれるエッジワース・カイパーベルトとはまた別の天体になります。

カイパーベルトは太陽からおよそ30~50天文単位の距離に、およそ黄道面に沿って“第2の小惑星帯”とも言うべきリング状に存在しています。
1天文単位は太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当し、太陽~海王星間の距離は約30天文単位。
黄道とは地球から見た太陽の天球上の通り道。
それに対して“オールトの雲”が存在しているのは、1万天文単位から10万天文単位(約1.5光年)…
もはや、恒星間空間ともいえるような光年単位の遠距離にまで広がっていると考えられているんですねー

太陽圏を脱出したといわれている探査機“ボイジャー1号”ですら、実はまだ150天文単位を過ぎたところを飛行しています。

“オールトの雲”から来た長周期彗星

“オールトの雲”は“彗星の巣”や“彗星の故郷”などと言われ、原始惑星系円盤の残りであり、惑星になり損ねた(取り込まれ損ねた)氷やメタンなどの小天体からなると考えられています。
原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
そう、太陽系創成期の記録をとどめたタイムカプセル的な小天体で構成されているのが“オールトの雲”というわけです。

10万天文単位ほどまで来ると、太陽の重力と近傍の恒星、および天の川銀河の重力などが釣り合うようになります。
なので、わずかな重力バランスの変動や、他天体との衝突などで小天体の軌道が乱されると、場合によっては太陽に向かって落下していくことになります。

そして、地球上なら地質学的ともいえるような長い時間の果てに、太陽近傍まで落下してきて、ときには長い尾を引いて壮大な天体ショーを見せてくれることもあります。

“オールトの雲”がリング上ではなく球殻状に存在すると考えられているのは、そこの出身である長周期彗星が様々な“軌道傾斜角”を持っているからです。
“軌道傾斜角”とは、黄道面に対して天体の軌道が傾いている角度のことをいう。

太陽系の惑星はみな太陽の赤道面(黄道面)におおよそ沿って公転しています。

ただ、小天体、中でも太陽の重力の影響が弱まるカイパーベルト近辺から先は、冥王星のように斜めに傾いている物も多くあるんですねー

“オールトの雲”を構成する無数の小天体たちが原始惑星系円盤から誕生したのであれば、46億年前の太陽系創成期には黄道面に沿って公転していたはずです。

でも、木星や土星などの巨大惑星や、他の恒星、天の川銀河などからの影響を受けて、徐々に軌道が乱されたとすれば、球殻状に太陽系を包むようになったのも理解できます。

長周期彗星の“軌道傾斜角”の分布

これまでの研究では、約46億年に及ぶ軌道進化の過程により、初期の軌道情報は完全に失われてしまうので、長周期彗星の“軌道傾斜角”の分布には偏りがないとされてきました。

でも、長周期彗星が空間的に一様に分布しているとは考えにくいんですねー

その理由は、“オールトの雲”を構成する小天体たちも、最初は黄道面にほぼ沿って公転していたはずであること。
もう一つは、天の川銀河や他の恒星などからの重力が46億年もの間、常に完全に均等に影響していたとは考えにくいことです。

そこで、今回の研究で着目したのは、長周期彗星の“軌道傾斜角”ではなく、やって来る向き。
彗星の描く軌道のうち、太陽から最も遠ざかる遠日点の方向でした。

遠日点の方向が同じなら、長周期彗星の場合は“軌道傾斜角”の違いは大きな意味を持ちません。

それは、長周期彗星の遠日点はカイパーベルトよりも遠方のものも多く、軌道全体を俯瞰すればほぼ同じ形状になってしまうから。
何しろ長周期彗星は、数百年の周期は短い方で、次に太陽近傍に戻って来るのに数万年というようなものもあります。
軌道傾斜角(i)が30度から90度までの異なる長周期彗星の軌道。黒丸は太陽を表し、メモリは天文単位(au)。(左)太陽近傍を拡大したもの。遠日点方向が同じでも、軌道傾斜角により軌道が大きう異なるのが分かる。(右)長周期彗星の軌道の俯瞰図。遠日点はカイパーベルトよりも遥か先にあり、もはや楕円軌道に見えない。このスケールになると軌道傾斜角の違いは意味をなさず、遠日点方向が同じ長周期彗星は、ほぼ同じ軌道に見える。(Credit: 国立天文台)
軌道傾斜角(i)が30度から90度までの異なる長周期彗星の軌道。黒丸は太陽を表し、メモリは天文単位(au)。(左)太陽近傍を拡大したもの。遠日点方向が同じでも、軌道傾斜角により軌道が大きう異なるのが分かる。(右)長周期彗星の軌道の俯瞰図。遠日点はカイパーベルトよりも遥か先にあり、もはや楕円軌道に見えない。このスケールになると軌道傾斜角の違いは意味をなさず、遠日点方向が同じ長周期彗星は、ほぼ同じ軌道に見える。(Credit: 国立天文台)

長周期彗星の遠日点方向は2種類ある

軌道進化の解析を実施して分かってきたのは、遠日点方向の緯度と経度が変化する周期の比に、特殊な関係が成り立つこと。
その特殊な関係とは、緯度が1振幅すると経度は約半周(180度)動く、緯度は変化するが経度はほとんど変化しないの2パターンでした。

個々の長周期彗星がどちらのパターンであるかを決めるのは、46億年前の初期の遠日点方向になります。

また、彗星が惑星のある領域に再び戻ってくるまでの時間は、緯度の変動周期と等しくなるようです。

このような特殊な関係が成り立つことから、初期に黄道面にいた超周期彗星が“オールトの雲”を経て再び惑星領域に戻ってくるときの遠日点方向は2種類あるとすることができます。

今回の研究で導かれたのは、初期値である黄道面か、銀河面に対して黄道面を反転させたもう一つの仮想的な面(研究グループでは空黄道面と呼んでいる)のどちらかであること。
ちなみに黄道面は銀河面に対して約60度傾いていて、空黄道面は銀河面を挟んで反対側に約60度傾いています。
黄色のリングが黄道面、水色のリングが空黄道面を表した概念図。“オールトの雲”からやって来る長周期彗星の軌道の向きは、黄道面もしくは空黄道面の2つであることが多い。また2つの面は、天の川銀河の銀河面に対して互いに正反対の向きに約60度傾いている。(Credit: 国立天文台)
黄色のリングが黄道面、水色のリングが空黄道面を表した概念図。“オールトの雲”からやって来る長周期彗星の軌道の向きは、黄道面もしくは空黄道面の2つであることが多い。また2つの面は、天の川銀河の銀河面に対して互いに正反対の向きに約60度傾いている。(Credit: 国立天文台)
遠日点方向は、惑星領域へ奇数回目に戻ってくるときは空黄道面に、偶数回目に戻ってくるときは黄道面になります。

仮に長周期彗星の軌道が満遍なく分布しているのであれば、遠日点方向の偏りはないと予想されています。
そのことから、もしこの2つの面、特に空黄道面への集中を確認することができれば、“オールトの雲”からやってきた長周期彗星はかつては黄道面にあったとすることができます。

そこで、研究グループが調べたのは、これまでに観測された長周期彗星の遠日点の分布。
NASA/JPLのカタログから、長周期彗星の軌道軸の銀河系座標における緯度と経度の分布を作成しています。
長周期彗星の遠日点方向の緯度と経度の正弦分布。赤線が黄道面、青線が空黄道面で表されている。プロットされた天体は近日点距離が1天文単位以上かつ軌道長半径が1000天文単位以上または離心率が1以上の小天体。離心率は軌道の形を表し、0が真円、0より大きく1未満は楕円になる。そして1と等しいときには放物線、1以上になると双曲線を描く。つまり、1以上の天体は二度と太陽の元に戻ってこないことになる。また、紫のプロットは人類が初めて確認した恒星間天体“オウムアムア”で、オレンジは2番目に確認された“ボリソフ”。データ元はNASA/JPL。(Credit: 国立天文台)
長周期彗星の遠日点方向の緯度と経度の正弦分布。赤線が黄道面、青線が空黄道面で表されている。プロットされた天体は近日点距離が1天文単位以上かつ軌道長半径が1000天文単位以上または離心率が1以上の小天体。離心率は軌道の形を表し、0が真円、0より大きく1未満は楕円になる。そして1と等しいときには放物線、1以上になると双曲線を描く。つまり、1以上の天体は二度と太陽の元に戻ってこないことになる。また、紫のプロットは人類が初めて確認した恒星間天体“オウムアムア”で、オレンジは2番目に確認された“ボリソフ”。データ元はNASA/JPL。(Credit: 国立天文台)
黄道面と空黄道面への集中をより定量的に評価するため、研究グループは銀河面からの傾きを表す角度εを導入。
ε=0が銀河面、ε=60度が黄道面、ε=-60度が空黄道面を表し、長周期彗星のεの分布を表したのが下のグラフです。

このグラフから分かるのは、黄道面と空黄道面付近が多いこと。
これにより、46億年前の太陽系創成期に、多くの長周期彗星は黄道面にあったということが判明します。

今回の研究成果は、長周期彗星のような太陽系の小天体の観測的研究を飛躍させる可能性があります。

長周期彗星は地球にかなり接近してからでないと発見するのが難しいので、観測期間が短くなってしまうことがよくあります。

でも、今回の成果により、長周期彗星がやってくる方向をある程度絞り込める可能性があるとしたら。
長周期彗星をまだ遠方にいる段階で発見できる確率を上げられ、観測期間を稼げるようになるはずです。
基準面から図った遠日点方向の経度(ε)の分布。ε=-60度が空黄道面に対応する。長周期彗星の遠日点方向の経度は、黄道面と空黄道面に多いことが分かる。(Credit: 国立天文台)
基準面から図った遠日点方向の経度(ε)の分布。ε=-60度が空黄道面に対応する。長周期彗星の遠日点方向の経度は、黄道面と空黄道面に多いことが分かる。(Credit: 国立天文台)


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