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初期の太陽は、もう一つの恒星と連星を成していた? この連星により“第9惑星”が太陽系に取り込まれたのかも

2020年08月23日 | 太陽系・小惑星
一部の太陽系外縁天体に見られる極端に偏った軌道を説明するため、しばしば未知の“第9惑星”が登場することがあります。
今回発表されたのは、この“第9惑星”が太陽系で形成された惑星ではないということ。
初期の太陽は、もう一つの恒星と連星を成していて、この連星により“第9惑星”が太陽系に取り込まれたようです。
太陽と連星を成していた恒星のイメージ図。(Credit: M. Weiss)
太陽と連星を成していた恒星のイメージ図。(Credit: M. Weiss)

太陽が連星だった時期に外部から取り込まれたのが“第9惑星”かもしれない

現在、太陽系で確認されている惑星の数は8つあります。

その中で太陽から最も遠い海王星(第8惑星)の外側、太陽から数百天文単位離れたところには、地球の5~10倍の質量がある未発見の惑星が存在するのではないかと考えられています。
1天文単位は太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当し、太陽~海王星間の距離は約30天文単位。
それは、一部の太陽系外縁天体に見られる極端に偏った軌道は、未知の“第9惑星”の重力的な影響により、似た軌道に押しやられた結果だと考えられているからです。

そして今回発表されたのは、「初期の太陽は、もう一つの恒星と連星を成していた」 っという研究成果でした。

さらに、コンピュータシミュレーションによる研究から指摘されているのは、“第9惑星”が太陽系で形成された惑星では無いということ。
未発見の“第9惑星”および彗星の故郷と考えられている“オールトの雲”に存在する天体は、太陽が連星だった時期に外部から取り込まれた可能性があるそうです。

研究では、太陽から1000天文単位ほど離れたところに太陽と同程度の質量の恒星が存在していたと仮定して分析を実施。
すると、この恒星が太陽とともに“第9惑星”の捕獲に関わった可能性が示されたそうです。

過去の研究でも、連星は周囲の天体を捕獲し易いことが示されてきました。
連星は単独の恒星よりも、はるかに効率的に天体を捕獲できるようです。

まずは“第9惑星”を見つけること

“第9惑星”以外にも、捕獲された複数の天体が、太陽系内の同じような軌道を周回しているとしたら。
これら天体を見つけ、太陽系の外部から捕獲されたことを明らかにすれば、過去の太陽が連星だったとする説を支持する材料になるはずです。

ただ、“第9惑星”は、まだ見つかっていないんですねー

それは、太陽から遠く離れた“第9惑星”の軌道は非常に大きく、観測に必要な範囲が非常に広くなってしまうためです。

そこで、期待されるのが、来年の観測開始が予定されている南米チリのヴェラ・ルービン天文台。
この天文台の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡“LSST”は、口径が8.4メートルもあり非常に広視野なので、位置が特定できなくても天球のどこかで“第9惑星”の存在を拾える可能性があります。
未だ見つかっていない“第9惑星”のイメージ図。(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC) )
未だ見つかっていない“第9惑星”のイメージ図。(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC) )
また、これまでの理論では、海王星の外側を公転する“散乱円盤天体”と“オールトの雲”に存在する天体の比率を、上手く説明することはできませんでした。
でも、連星による天体の捕獲を想定したモデルを用いれば、この問題を大幅に改善できそうです。
“散乱円盤天体”は、海王星の重力によってエッジワース・カイパーベルトから外側に散乱させられた太陽系外縁天体の名称。

“オールトの雲”に存在する天体は、地球の歴史において水の起源や大量絶滅の原因といった大きな役割を果たした可能性があります。
今回の研究は、その起源を理解するためにも重要なものと言えそうです。

一方、太陽と連星を成していたとされる、もう一つの恒星はどこへ行ったのでしょうか?
銀河系の約半数が連星系の恒星と見られていて、連星系は珍しい存在ではない。

太陽が誕生した星団を通過していた別の恒星の重力によって、連星を成していた恒星と太陽は引き離されてしまったのかもしれません。
はるか昔に離れ離れになった恒星は、今もどこかで輝き続けているのでしょうか。

今回の研究では、初期の太陽が、もう一つの恒星と連星を成していたという、突拍子もない仮定から始まり、もう一つの恒星も行方知れずになっています。

この証明に必要なのが、まだ見つかっていない“第9惑星”や同様の軌道を描く天体を見つけ、太陽系外から来たことを明らかにすること。

最近の研究のなかには、太陽系外縁天体に見られる極端に偏った軌道を説明するのに、“第9惑星”の存在は必要ないとするものもあります。

まだ見つかっていない“第9惑星”と、太陽と連星を成していたとされるもう一つの恒星… いずれ証明されるのでしょうか。


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準惑星ケレスの内部には地下海があり、そこから塩水が表面に湧き上がっている。NASAの小惑星探査機“ドーン”の観測データから分かったこと。

2020年08月17日 | 太陽系・小惑星
火星と木星の間にある小惑星帯で最も大きい天体が準惑星ケレスです。
今回分かってきたのは、ケレス表面のクレータに、地球の海氷で一般的にみられる物質が見つかったこと。
さらに、このクレーターの地下には塩水をたたえる海があることでした。
地球以外の天体で海の誕生につながる物質が見つかったことは、生命誕生がどんな天体でも起こりうることを意味しているのかもしれません。


海氷で一般的にみられる物質をケレスのクレーターで発見

準惑星ケレスは、火星と木星の間に存在する小惑星帯で最大の天体(直径960キロ)で、C型小惑星に分類されています。

C型小惑星と呼ばれる天体は、有機物や水などの揮発性物質を多く含む“炭素質コンドライト”という隕石とスペクトルが似ているので、水や有機物が多く存在する天体だと予想されているんですねー
小惑星探査機“はやぶさ2”が探査を行った“リュウグウ”や、NASAの“オシリス・レックス”が探査中の“ベンヌ”もC型小惑星になります。

ケレスの表面には、今から約2200万年前の微惑星衝突で形成されたと考えられている、直径約92キロの“オッカトル・クレーター”があります。

今回、NASAの小惑星探査機“ドーン”による重力測定データから分かってきたのは、“オッカトル・クレーター”の地下およそ40キロには、今も幅数百から1,000キロにわたって塩水が溜まっていることでした。
“ドーン”はNASAが打ち上げた準惑星ケレスおよび小惑星ベスタを目標とする無人探査機。低コストで効率の良いミッションを目指した太陽系内の探査計画“ディスカバリー”の1つ。

さらに、“オッカトル・クレーター”の中央に存在しているのが“ケレアリア・ファキュラ”と呼ばれる明るい領域。
この領域では、ハイドロハライト(含水岩塩)という海氷で一般的にみられる物質が見つかっていて、地球以外では初めてのことでした。

“ケレアリア・ファキュラ”のハイドロハライトは、今から約750万年前と約200万年前に地表へと湧き上がってきた塩水に由来していると考えられています。
ハイドロハライトという物質は、非常に不安定な存在で時間の経過とともに消失してしまうので、噴出し始めたのは最近2万年の出来事と考えられる。

地球以外の天体で海の誕生につながる物質が見つかったことは、生命誕生がどんな天体でも起こりうることを示唆しています。

地球上で海が誕生したのも、今回ケレスで発見されたような事象が、ごく短期間に何度も繰り返されたからかもしれません。
NASAの小惑星探査機“ドーン”が撮影した準惑星ケレス(疑似カラー画像)。中央付近にあるのが“オッカトル・クレーター”で、この中に明るい領域“ケレアリア・ファキュラ”が存在する。(Credit: NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)
NASAの小惑星探査機“ドーン”が撮影した準惑星ケレス(疑似カラー画像)。中央付近にあるのが“オッカトル・クレーター”で、この中に明るい領域“ケレアリア・ファキュラ”が存在する。(Credit: NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)


ケレスで起きている“潮汐加熱”をともなわない独特な低温火山活動

今回、研究チームが注目したのは、“オッカトル・クレーター”の活動時期でした。

“ケレアリア・ファキュラ”のハイドロハライトの大部分は、クレーター形成時の熱で溶けた地下の浅いところからもたらされたものの、その熱は衝突から数百万年程度で失われたと見られています。

ただ、“ドーン”のミッション中に“オッカトル・クレーター”を断続的に覆う薄いもやの兆候が見つかっていること。
さらに、“ドーン”がケレスに到着する前の2014年には、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”によってケレスから水(水蒸気)が噴出していることも明らかになっています。

時にはかなり爆発的だったとされる初期の低温火山活動と比ると、なぜ現在の活動は落ち着きながらも続いているのでしょうか?

考えられる可能性は、クレーターが形成された際の衝撃で地殻に亀裂が生じ、地下の塩水が表面へと湧き上がる経路ができたことです。
この亀裂を通して今も塩水が地表へと湧き上がり、ほとんどが昇華によって失われているのかもしれません。

太陽系で知られているものとしては、独特な低温火山活動が起きている準惑星ケレス。

木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドス、海王星の衛星トリトンといった天体では、惑星の潮汐作用による内部の過熱“潮汐加熱”を熱源とした低温火山活動によって、地下から水などの物質が噴出していると見られています。

今回、ケレスは少なくとも比較的最近まで地質活動をしていたことが明らかになりました。
このことが示唆するのは、氷に富んだ天体では“潮汐加熱”が起きなくても、ケレスと同様の活動が生じているかもしれないということ。

さらに、ケレスにおけるごく最近の地質活動の証拠は、「小天体は地質学的に活発ではない。」 っとする一般的な認識を覆し、惑星科学に新たな方向性をもたらしたようです。


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太陽系のハビタブルゾーンに惑星が少ないのは木星が原因かも

2020年08月09日 | 太陽系・小惑星
惑星の表面で水が液体の状態で存在できる領域“ハビタブルゾーン”。
これまでに4000個以上も発見されている太陽系外惑星に目を向けてみると、“TRAPPIST-1”のようにハビタブルゾーンを複数の系外惑星が公転している惑星系が見つかっているんですねー
でも、太陽系のハビタブルゾーンを公転しているのは、生命の存在が知られている唯一の惑星“地球”のみ…
なぜ、太陽系のハビタブルゾーン内を公転する惑星は少ないのでしょうか?
どうやら、木星の強い重力が関係しているようです。


太陽のような恒星ではハビタブルゾーンに最大6つの惑星が存在できる

みずがめ座の方向約40光年彼方に位置する赤色矮星“TRAPPIST-1”。
この恒星系では、地球に近いサイズの系外惑星が全部で7つも見つかっていて、その中の3つの惑星“TRAPPIST-1 e”、“TRAPPIST-1 f”、“TRAPPIST-1 g”はハビタブルゾーン内を公転していると見られています。
“TORAPPIST-1”で見つかった7つの系外惑星(TRAPPIST-1b~1h)と地球を比較したイメージ図。(Credit: ESO/M. Kornmesser)
“TORAPPIST-1”で見つかった7つの系外惑星(TRAPPIST-1b~1h)と地球を比較したイメージ図。(Credit: ESO/M. Kornmesser)
一方、太陽系ではハビタブルゾーン内を公転しているのは地球だけです。
恒星のハビタブルゾーンに存在できる惑星の数には、どんな法則があるのでしょうか?

今回、この謎を解くため研究を進めたのは、カリフォルニア大学リバーサイド校の研究グループでした。

研究グループでは、恒星を周回する様々なサイズの惑星を再現できるシミュレーションモデルを作成。
重力による相互作用により、惑星の軌道が数百万年以上の時間をかけて変化する様子を調べています。

その結果示されたのが、一部の恒星ではハビタブルゾーンに最大で7つの惑星が存在できる可能性があるというものでした。

太陽を含むG型の恒星の場合だと、最大で6つの惑星がハビタブルゾーンを周回していることも考えられるようです。

さらに、今回のシミュレーションでは、それぞれの惑星の軌道が円(真円)に近く、木星のような巨大惑星が存在しない場合に、複数の惑星がハビタブルゾーン内を公転したそうです。

このことから考えられるのは、太陽系のハビタブルゾーン内を公転する惑星が少ないのは、木星の存在にあるということ。

木星の質量は、太陽系の他の惑星の合計質量に対して約2.5倍もあるんですねー
この質量からくる強い重力の影響によって、ハビタブルゾーンに存在できる惑星の数が制限されたというわけです。
“TRAPPIST-1”で見つかった系外惑星(上)と太陽系の水星から火星まで(下)の公転軌道を比較した図。“TRAPPIST-1”では3つの系外惑星(TRAPPIST-1e、f、g)がハビタブルゾーンに存在すると考えられている。(Credit: NASA/JPL/Caltech)
“TRAPPIST-1”で見つかった系外惑星(上)と太陽系の水星から火星まで(下)の公転軌道を比較した図。“TRAPPIST-1”では3つの系外惑星(TRAPPIST-1e、f、g)がハビタブルゾーンに存在すると考えられている。(Credit: NASA/JPL/Caltech)
太陽系形成の初期に木星が内部太陽系へと移動したという“グランド・タック・モデル”と呼ばれる仮説があります。

このとき、惑星同士の重力が強く影響し合って互いの軌道が重なり、誕生して間もない岩石惑星間で激しい衝突が何度も起こったと考えられています。

衝突で生まれた破片の多くは太陽に引きつけられて飲み込まれ、内部太陽系には惑星がなくなってしまうんですねー

そして衝突の後には、惑星の残骸が散らばって混沌とした状態に…
そこから“第2世代”の惑星が内部太陽系に生まれることになります。

現在、木星が外部太陽系にあるのは、隣にある巨大なガス惑星の土星に引っ張られた結果で、木星が太陽から遠く離れてしまったことで、地球など今ある内部太陽系の岩石惑星が誕生したと考えられます。

現在、研究グループでは、地球からおよそ27光年先に位置する“りょうけん座ベータ星”を有望な観測対象の一つとしています。

“りょうけん座ベータ星”は太陽によく似た恒星で、過去の観測データの分析によると、主星から10天文単位以内に土星よりも質量が大きな系外惑星は存在しないことが分かりました。
1天文単位は太陽~地球間の平均距離、約1億5000万キロに相当する。


今後の観測によって期待されるのは、ハビタブルゾーン内を公転する複数の系外惑星が発見されること。
さらに、太陽系に似た恒星系が見つかれば、なぜ太陽系のハビタブルゾーンには地球しか存在しないのか? っという謎の解明に近づけるかもしれませんね。


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小惑星からのサンプルリターンはアメリカ宇宙探査史上初! “オシリス・レックス”の着陸候補地点4か所を選定

2019年08月24日 | 太陽系・小惑星
2016年に打ち上げられた探査機“オシリス・レックス”の着陸候補地点が4か所選ばれました。
予定では、来年の後半に小惑星ベンヌに着陸して試料採取を行うことになります。

小惑星からのサンプルリターンはアメリカの宇宙探査史上でも初めてのこと。
アポロ計画で月の物質を持ち帰って以来、最大量のサンプルを持ち帰る計画なんですねー

小惑星は、46億年前に太陽系を作った物質が残されている貴重な研究対象になります。
初期太陽系の姿の解明に役立つ発見があるといいですね。


神話に登場する鳥の名前が付けられた着陸候補地点

NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が小惑星ベンヌに到着したのが2018年12月。
以来、ベンヌ全球の地形を観測し、試料採取を安全に行える場所を探してきました。

今回選定されたのは4か所の候補地点。
それぞれに、Nightingale(サヨナキドリ)、Kingfisher(カワセミ)、Osprey(ミサゴ)、Sandpiper(シギ)と、エジプトに生息する鳥の名前が付けられています。

探査機の名前“オシリス・レックス(OSIRIS-REx)”と小惑星“ベンヌ(Bennu)”は、エジプトの神々にちなんだもので、ベンヌ表面の地形には神話に登場する鳥の名前が付けられることになっています。
○○○
試料採取を行う4か所の候補地点(各画像の円部分)。


着陸候補地点の特徴

Nightingale(サヨナキドリ)北緯56度
4つの中で最も北にあり、試料採取できそうな場所が複数存在している。
直径140メートルの大きなクレーターの内部にある小クレーターの内側の地点。
粒子が細かく暗い色をした物質が存在していて、反射率や表面温度は4地点の中で最も低い。

Kingfisher(カワセミ)北緯11度
ベンヌの赤道に近い小クレーターの内部にある。
このクレーターは直径8メートルで岩塊に囲まれているが、エリア内に大きな岩はない。
4か所の中で含水鉱物のスペクトルが最も強い。

Osprey(ミサゴ)北緯11度
直径20メートルの中にあり、試料採取できそうな場所が複数存在している。
周囲に様々なタイプの岩石が存在するため、Osprey内部の砂(レゴリス)も様々な種類からなる可能性がある。
4か所の中で炭素質の物質のスペクトルが最も強い。

Sandpiper(シギ)南緯47度
直径63メートルの大きなクレーターの壁の上にある比較的平らな場所。
含水鉱物が存在していて、変成を受けていない水に富んだ物質を含む可能性がある。


粒子の細かい物質が存在する場所を特定する

当初、地球からの観測で推定されていたのは、ベンヌの表面には粒子の細かい物質が堆積した大きな平坦地がありそうなこと。

でも、“オシリス・レックス”がベンヌに到着して表面を撮影すると、ベンヌの地形は岩だらけだと分かります。

そのため、岩塊で埋め尽くされたベンヌの表面で、サンプリングできる物質が存在する安全なエリアを見つけることが運用チームの課題に…
でも、こうした予想外の事態に対応する準備もされていて、“オシリス・レックス”のミッションの日程には300日以上の余裕が見込まれています。

もともと運用チームが予定していたのは、今夏までに着陸地点を2か所まで絞り込むこと。

それを変更し、今回4か所の候補地点を選び出し、今後4か月かけて詳しく調査していきます。
特に各地点の高解像度観測を行って、粒子の細かい物質が存在する場所を特定することに重点を置くそうです。


狭い着陸地点へ探査機を誘導する方法

4地点の安全性を評価するにあたって活用されたのは、今年初めに一般のボランティアも参加して作成されたベンヌ表面の岩塊の分布図でした。

元の計画では着陸地点は半径25メートルの円を想定。
でも、この広さの岩塊のない場所はベンヌには全く存在せず…
運用チームは半径5~10メートルの範囲で平坦なエリアを探し出すことにします。

こうした狭い場所へ探査機を正確に着陸させるため、運用チームでは探査機の航法誘導の要求精度を厳しくし、“ブルズアイTAG”と名付けられた新たなサンプリング方法を編み出しています。
  “はやぶさ2”で用いられたのは“ピンポイントタッチダウン”と呼ばれる誘導方法。
  リュウグウ表面に投下済みのターゲットマーカーをカメラの視野内に捕捉し続けることで、
  マーカーから指定の距離・方向にシフトした場所へ着陸する。


“ブルズアイTAG”では、ベンヌ表面の画像を使い探査機が表面に設置するまで高い精度で誘導。
これまでの運用実績から、新たな要求精度を十分にクリアできる見込みです。


着陸地点の詳細な分析を行う“偵察”フェーズ

“オシリス・レックス”の試料採取方法は“タッチ・アンド・ゴー(Touch And Go:TAG)”と呼ばれています。

探査機本体から“TAGSAM”と呼ばれるアームを伸ばし、その先端をベンヌの表面に接地。接地時間はわずか5秒程度だそうです。

アームの先端には鍋の蓋のようなカバーが取り付けられていて、接地すると同時にカバーの内側に窒素ガスを噴射。
これによってベンヌ表面の物質が巻き上げられ、カバー内にキャッチされる仕組みなんですねー
“TAGSAM”で取り込める物質は、粒径が2.5センチ以下のものに限られているそうです。
  “はやぶさ2”もリュウグウ表面に接地するのは数秒程度。
  接地すると弾丸を地表に発射して舞い上がった地表物質を採取し上昇する。

試料採取アーム“TAGSAM”の動作を解説する動画。

今回選ばれた4地点は、地理的な位置も地質学的な特徴も異なっています。

採取可能な物質がどのくらいの量存在しているかはまだ分かりません。
でも、4か所とも徹底的に安全評価が行われていて、探査機が降下して表面に接地しサンプルを採取しても安全であることは確認済みです。

今秋には、この4地点の詳細な分析を行う“偵察”フェーズが始まります。

このフェーズの第1段階では、探査機は4地点を高度1.29キロから観測。
着陸の安全性や試料採取が可能であることを確認します。

また、各地点の近接撮影も行われ、探査機を自動誘導する際に目印となる特徴的な地形をマッピング。
この観測で得られたデーを使って、最終的に第1候補地点と予備地点の計2か所が12月に決定される予定です。

偵察フェーズの第2・第3段階が始まるのは来年の初め頃。
より解像度の高いデータを得るため、最終候補地点の2か所を低高度から観測します。

試料採取は来年の後半になる見込みで、地球にサンプルを持ち帰るのは2023年9月24日になるそうですよ。
4つの候補地点の解説動画。


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なぜ、天王星や海王星には地球の数十倍も強い磁場があるの?

2019年08月01日 | 太陽系・小惑星
水を主成分とする試料をレーザーで圧縮する実験で、水が光を強く反射する金属状態になることが確かめられました。
地球の数十倍も強い磁場がある天王星や海王星。
その磁場の源が“金属の水”に流れる電流であることを示す結果になるそうです。

なぜ水を主成分とする氷惑星に強い磁場が存在するのか?

巨大氷惑星に分類される天王星と海王星は水を主成分とする惑星で、そこに少量の炭素と窒素を含む分子(メタンやアンモニア)が混じっていると考えられています。
“ボイジャー2号”が撮影した天王星(左)と海王星(右)。大きさは地球の約4倍、質量は天王星が約15倍、海王星が約17倍ある。中央に地球があるのは大きさの比較のため。
“ボイジャー2号”が撮影した天王星(左)と海王星(右)。
大きさは地球の約4倍、質量は天王星が約15倍、海王星が約17倍ある。
中央に地球があるのは大きさの比較のため。
1980年代に天王星と海王星に相次いで到達したNASAの“ボイジャー2号”によって明らかになったのが、これらの氷惑星の内部から地球の数十倍の強さの磁場が発生していることでした。

このような強い磁場が作られるのに必要なのは、氷惑星の内部に強い電流が流れ続けること。
でも、水は電気をあまり通さない物質… 惑星内部に強い電流が流れると考えるには無理があります。
なので、氷惑星の磁場の存在は長年の謎でした。

高温高圧の状態を再現すると水が金属状態になった

今回研究を行ったのは、フランスの教育研究機関“エコール・ポリテクニーク”と岡山大学惑星物質研究所の研究グループ。
巨大氷惑星の磁場の起源を明らかにするため、高強度レーザー施設を用いて実験を行っています。
今回の実験に利用された2つの大型レーザー施設。(左)エコール・ポリテクニークの“LULI 2000”と、(右)大阪大学の“激光XII号”。
今回の実験に利用された2つの大型レーザー施設。
(左)エコール・ポリテクニークの“LULI 2000”と、(右)大阪大学の“激光XII号”。
実験で準備したのは、惑星模擬溶液の試料として、純粋な水、炭素成分を少し含む水溶液、炭素と窒素成分を少し含む水溶液の3種類。

これらの試料を容器に封入し、そこに高強度レーザーを照射するというレーザーショック圧縮手法によって、通常では極めて実現しにくい高温高圧の状態を作り出し、約300万気圧という惑星内部の実際の圧力を再現しています。

ただ、この手法によって作り出される巨大な圧力を維持できるのは、1億分の1秒ほどという非常に短い時間。
そこで研究グループでは、一瞬の間に物質の性質を詳しく調べる方法を開発し、水溶液の圧力、密度、温度及び反射率などの性質をまとめて計測しています。

実験の結果、3種類の水溶液はいずれも、光を強く反射する状態へと一瞬のうちに変化することが分かります。
このことが示しているのは、調べている物質が金属状態になったことでした。

また、試料の水溶液が炭素を含む場合、純粋な水と比べて光の反射率が顕著に高くなることも分かりました。
炭素を含む混合液体からの光の反射率のグラフ。赤外線(1064nm)と可視光線(532nm)のいずれでも、純粋な水に比べて顕著に反射率が高い。
炭素を含む混合液体からの光の反射率のグラフ。
赤外線(1064nm)と可視光線(532nm)のいずれでも、
純粋な水に比べて顕著に反射率が高い。
今回の研究成果により分かったことは、天王星や海王星内部にある磁場の源が“金属の水(金属的な流体)”に流れる電流だということ。
そこに含まれるメタンが分解してできた炭素イオンが、水の性質に影響を与えているようですよ。


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