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ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが新型ロケット“ヴァルカン”の打ち上げに成功! 次は“ドリーム・チェイサー”搭載へ

2024年01月12日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
アメリカの民間宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は日本時間2024年1月8日、新型ロケット“ヴァルカン(Vulcan)”初号機の打ち上げミッション“Certification-1(Cert-1)”に成功しました。

ヴァルカンにはアメリカの民間宇宙企業アストロボティック(Astrobotic)の月着陸船“ペレグリン(Peregrine)”が搭載されていました。
図1.ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設から打ち上げられるヴァルカンロケット。(Credit: ULA)
図1.ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設から打ち上げられるヴァルカンロケット。(Credit: ULA)


ヴァルカン初号機の打ち上げミッションに成功

ペレグリンを搭載したヴァルカンロケットは日本時間の2024年1月8日16時18分(米国東部標準時同日2時18分)、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設を離床。
打ち上げから1分53秒後に固体ロケットブースター(SRB)を分離、打ち上げから5分30秒後に第2段エンジン“セントール(Centaur)”による1回目のエンジン噴射(約10分間)を実施し、打ち上げから43分45秒後には2回目のエンジン噴射(約4分間)を実施したそうです。

その後、打ち上げ50分後の日本時間同日17時9分にペレグリンを分離しています。

打ち上げから1時間19分後にはセントールが3回目のエンジン噴射を実施し、深宇宙に向けて飛行を開始。
そして、ユナイテッド・ローンチ・アライアンスによるミッション成功の報告があったのは、本時間同日18時ちょうどのことでした。


ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが開発した新型ロケット

現在運用されているアトラスVロケットやデルタIVロケットの後継になるのが、ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが開発した新型ロケット“ヴァルカン”です。

ヴァルカンのロケット1段目には、アメリカの民間宇宙企業ブルーオリジンが開発した新型エンジン“BE-4”を2基搭載。
BE-4は燃料の液体メタンと酸化剤の液体酸素とを組み合わせて使用し、2400kNの推力を出すことができます。

ロケット2段目のセントールには、1960年代から使用され改良を続けている“RL-10”の新型モデル“RL10C-1-1A”を2基搭載しています。
RL-10は燃料に液体水素、酸化剤に液体酸素を用いています。

ヴァルカンは固体ブースターロケットの本数やフェアリングの大きさをカスタマイズすることで、様々な大きさの衛星や探査機の打ち上げに対応可能なロケットです。
今回の“Cert-1ミッション”で使用されたのはヴァルカンの“VC2S”形態でした。

VCは、“ヴァルカン・セントール(Vulcan Centaur)”の略称。
2は2本の固体ブースターロケット、Sはショートサイズのフェアリングを使用していることを表しています。
図2.発射台で打ち上げを待つヴァルカンロケット。(Credit: ULA)
図2.発射台で打ち上げを待つヴァルカンロケット。(Credit: ULA)
ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが既に契約をしているヴァルカンロケットの打ち上げは70回以上。
そのうちの38回は、アメリカの民間企業アマゾンの衛星コンステレーション計画“プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)”で使用される衛星の打ち上げ契約になっています。

今回のヴァルカンロケットの打ち上げ成功は、アメリカの安全保障に関連した衛星の打ち上げにも影響を及ぼします。

アメリカの軍や安全保障に関連する衛星の打ち上げは、国家安全保障打ち上げプログラム(National Security Space Lunch program; NSSL)の契約で行われます。
でも、ヴァルカンロケットをこのプログラムで使用するには、2回の商業打ち上げ成功が要件となっています。

次の商業打ち上げミッション“Certification-2(Cert-2)”では、アメリカの民間宇宙企業シエラ・スペースが開発した有翼の宇宙往還機“ドリーム・チェイサー(Dream Chaser)”の初号機“テナシティ”が搭載され、今後数か月以内(4月頃)に実施する予定です。(※1)
※1.初号機“テナシティ”の試験打ち上げは、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”契約下で行われるもの。“商業輸送サービス2”では、“ドリーム・チェイサー”を使い最低6回の補給ミッションを行うことが決まっている。
“Cert-2”の打ち上げが成功すれば、2024年夏ごろにはNSSLで契約された衛星が打ち上げられる予定です。


ヴァルカン初号機の打ち上げミッション

“Cert-1”では、ヴァルカンロケットに2つのペイロードが搭載されていました。

1つ目は、アストロボティックの月着陸船“ペレグリン”です。
“ペレグリン”に搭載されたのは、NASAの5つの科学機器や日本の民間企業のタイムカプセルなど。
今後、NASAの商業輸送サービス(CLPS)の下で合計21のペイロードが搭載されることになります。
CLPSの枠組みで開発された月着陸船の打ち上げは、今回が初めてになります。

でも、ヴァルカンロケットから分離に成功した“ペレグリン”は推進システムで異常が発生。
太陽電池でバッテリーを充電するための姿勢制御が不安定になったことが、アストロボティックから発表されています。

“ペレグリン”では推進剤の重大な損失が起きている模様で、アストロボティックが日本時間2024年1月10日2時過ぎに発表したリリース(update #5 for Peregrine #5 for Peregrine Mission One)では、月面への軟着陸の見込みはないと述べられています。

この時点で、アストロボティックの完成チームは“ペレグリン”の運用期間を延ばす方法を模索。
次の月着陸船“グリフィン(Griffin)”の開発に向けて、関連するデータの取得を続けるとしています。
図3.ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの新型ロケット“ヴァルカン”のフェアリングに格納されるアストロボティックの月着陸船“ペレグリン”。(Credit: ULA)
図3.ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの新型ロケット“ヴァルカン”のフェアリングに格納されるアストロボティックの月着陸船“ペレグリン”。(Credit: ULA)
2つ目のペイロードは、宇宙葬を手掛けるアメリカの企業セレスティスのペイロードです。

このペイロードには、SFドラマ“スタートレック”の生みの親として知られるジーン・ロッデンベリーさんとその妻、同作に出演した俳優の遺骨が搭載されていました。
また、ジョン・F・ケネディさんら元アメリカ大統領の遺髪も含まれています。

セレスティスのペイロードはセントールに固定されていて、地球からさらに遠い深宇宙へと投入されました。


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小型スペースシャトル“ドリーム・チェイサー”が初試験打ち上げへ前進! 初号機“テナシティ”がケネディ宇宙センターに到着

2023年11月05日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2024年5月24日更新
“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ(Tenacity)”がケネディ宇宙センターに到着したそうです。
“テナシティ”による“ドリーム・チェイサー”の初飛行が予定されているのは2024年後半。
7800ポンド(約3.5トン)の物資を搭載した“テナシティ”は、ケープカナベラル宇宙軍基地からヴァルカンロケットにより打ち上げられます。
“テナシティ”は、操縦性能の技術実証を行った後、国際宇宙ステーションのロボットアームを使って把持・結合。
約45日後に国際宇宙ステーションを離れて、ケネディ宇宙センターの打ち上げ着陸施設(旧シャトル着陸施設)へ帰還することになります。
NASAのケネディ宇宙センターに到着した“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ”。(Credit: NASA/Kim Shiflett)
NASAのケネディ宇宙センターに到着した“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ”。(Credit: NASA/Kim Shiflett)


2024年5月11日更新
オハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設に持ち込まれていた“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ(Tenacity)”は、衝撃や振動、熱真空試験など、一連の評価を完了。
現在は、2024年後半に予定されている初打ち上げに向け、2機の“ドリーム・チェイサー”をフロリダ州のケネディ宇宙センターに輸送する準備を進めています。
ちなみに、“ドリーム・チェイサー”の2号機“崇敬や恭順を意味するレヴァレンス(Reverence)”はコロラド州ルイビルのシエラ・スペース社の工場で製造されています。
ケネディ宇宙センターで“ドリーム・チェイサー”は、音響テスト、電磁干渉と互換性のテスト、熱保護システムの最終検査がを受けることになります。
その後、初テスト飛行となる“商業輸送サービス2”が予定されています
“ドリーム・チェイサー”を搭載するヴァルカンロケット初号機の打ち上げは成功しているので、もうスケジュールの延期はないはずですよ。
ニール・アームストロング試験施設にある熱真空試験室内に積み重ねられたドリーム・チェイサー初号機“テナシティ(Tenacity)”とカーゴモジュール“シューティング・スター(Shooting Star)”。(Credit: Sierra Space)
ニール・アームストロング試験施設にある熱真空試験室内に積み重ねられたドリーム・チェイサー初号機“テナシティ(Tenacity)”とカーゴモジュール“シューティング・スター(Shooting Star)”。(Credit: Sierra Space)


2023年11月5日作成
小型スペースシャトル“ドリーム・チェイサー”が初試験打ち上げへ前進! 初号機“テナシティ”は組み立てを終え数週間の内に試験施設へ
民間宇宙ステーションの開発などを手掛ける航空宇宙企業シエラ・スペース(Sierra Space)社が、スペースシャトルの1/3ほどの大きさの宇宙往還機“ドリーム・チェイサー(Dream Chaser)”の初テスト飛行に向けて準備を進めているようです。

初号機“テナシティ”の機体組み立ては完了。
今後、数週間の内にオハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設へ持ち込まれる段階にきているようです。

“ドリーム・チェイサー”の初号機の名前は、“粘り強さ”や“不屈”を意味するテナシティ(Tenacity)。
国際宇宙ステーションの脱出艇“HL-20”から始まり、国際宇宙ステーションへ向かう有人宇宙船へのチャレンジを経て、“商業輸送サービス2”の契約を獲得して補給船として復活した“ドリーム・チェイサー”にピッタリの名前ですね。
初号機の完成を祝うシエラ・スペース社の社員たち
シエラ・スペース社は、長年の熱意、数えきれないほどの画期的なイノベーション、そして絶え間ない努力の結晶“ドリーム・チェイサー”を誇らしげに公開。初号機“テナシティ”は完成し、数週間以内にオハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設に環境テストのために出荷される。(Credit: Sierra Space)


小型スペースシャトル“ドリーム・チェイサー”

シエラ・スペース社が開発を進めている有翼の宇宙往還機が“ドリーム・チェイサー”です。

“ドリーム・チェイサー”は、小さいながらも翼を持っていて、胴体そのものが揚力を生む“リフティング・ボディ”を持っています。
スペースシャトルのように宇宙から滑走路に着陸し、15回以上の再使用をこなす小型シャトルで、国際宇宙ステーションへの輸送ミッションや、大分空港での運用の検討も進められていました。

製造はロッキード・マーティンが担当し、社内にある特別開発チーム“スカンク・ワークス”が培ってきた技術が活用されるそうです。

全長は約9メートル、翼の長さは約7メートルで、スペースシャトルの1/3ほどという小ささ。
翼は空母艦載機のように折りたたむことができ、既存のロケットのフェアリングの中に収められて打ち上げられます。
有人宇宙船版の“ドリーム・チェイサー”はアトラスVロケットの先端にむき出しの状態で搭載される設計だった。
帰還時には翼を広げ、スペースシャトルが着陸していたケネディ宇宙センターのシャトル着陸施設(滑走路)に着陸することになります。


民間企業による有人宇宙船の実用化

国際宇宙ステーションへの物資輸送を行うため開発が進められている“ドリーム・チェイサー”。
もともとはNASAの“民間企業による有人宇宙船の実用化を支援”計画の下で、開発が進められていた宇宙船のひとつでした。

カプセル型宇宙船になるスペースX社の“ドラゴン”やボーイング社の“CST-100”とは異なり、スペースシャトルに似たリフティング・ボディを持つ“ドリーム・チェイサー”。
ベースになったのは、かつてNASAのラングレー研究所が国際宇宙ステーションからの緊急帰還用として開発を進めていた、“HL-20”という宇宙船でした。

“ドリーム・チェイサー”の源流は、1960年代のソ連で開発されていた実験機“BOR”にまでさかのぼることができます。
1986年になり、“BOR”とNASAなどがかねてより研究していた胴体そのものが揚力を生む“リフティング・ボディ”機との融合が図られ、国際宇宙ステーションの脱出艇“HL-20”の開発を開始。
でも、1990年には資金難により開発は中止… 以来、“HL-20”の存在は長らく忘れ去られることになります。

2005年になり、スペースデヴ社というベンチャー企業が“HL-20”の研究成果や試験機などを受け継ぎ“ドリーム・チェイサー”としてよみがえり、2008年にはスペースデヴ社をシエラ・ネバダ社が買収。
現在はシエラ・ネバダ社から分離したシエラ・スペース社が、国際宇宙ステーションへ向かう補給船として開発を行っています。

このような経緯から分かるように、もともと“ドリーム・チェイサー”は有人宇宙船として開発されていて、シエラ・スペース社も当初は国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送用としてNASAに売り込んでいました。

地球低軌道まで7人の乗員を輸送でき、滑走路へ着陸できる上に、再使用も可能。
そして輸送能力の高さからも“ドリーム・チェイサー”は注目されていました。


有人宇宙船を貨物専用にした“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”

実際にNASAからの発注が行われるまでには、ラウンド形式でいくつかの審査が行われています。
その最終候補まで残った“ドリーム・チェイサー”ですが、最終的にNASAがこの計画で選んだのはボーイング社とスペースX社でした。

ここで、小型のスペースシャトルが宇宙へ行くチャンスは途切れてしまうことに…
でも、シエラ・ネバダ社は諦めていませんでした。
“ドリーム・チェイサー”を貨物専用にした“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”を発表するんですねー

この機体で、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”の契約獲得を狙い、2016年見事に勝ち取ることになります。

一方、開発はやや遅れていて、2013年に実施されたヘリコプターを使った滑空試験飛行では着陸に失敗。
2013年10月の試験飛行では、順調に滑空飛行していたが左側の車輪が出ず着陸には失敗。左側の翼を擦る形で着陸している。2017年11月に実施された滑空試験飛行に成功している。
2017年11月に行われた2度目の滑空試験飛行。“ドリーム・チェイサー”はエドワーズ空軍基地滑走路22Lへの着陸を成功させている。(Credit: SNC)
2017年11月に行われた2度目の滑空試験飛行。“ドリーム・チェイサー”はエドワーズ空軍基地滑走路22Lへの着陸を成功させている。(Credit: SNC)
その後、設計が二転三転するなどして、当初2019年の打ち上げ予定が、2021年までズレてしまいます。

現在開発が進んでいる無人の補給船“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”。
シャトル型の機体の後部にはカーゴ・モジュール“シューティング・スター(Shooting Star)”を持っていて、機体とカーゴ・モジュールを合わせると与圧物資を約5000キロ、非与圧物資を約500キロ、合計で約5500キロの物資を国際宇宙ステーションに運ぶことができます。

また、シャトル型の機体を活かして、約1750キロの物資を国際宇宙ステーションから地球に持ち帰ることもできます。

特に注目すべき点は、“ドリーム・チェイサー”は翼を使って大気圏内を滑空飛行し、滑走路に着陸することができること。
これにより、搭載物にかかる加速度は1.5Gと小さくなるので、壊れやすい物資なども安全に持ち帰ることができるんですねー
さらに、着陸後すぐに持ち帰った物資を取り出せるという特徴も持っています。

もちろん、国際宇宙ステーションからの物資回収は、スペースX社の“ドラゴン”補給船でも行えます。
でも、“ドラゴン”補給船はカプセル型なので加速度が大きく、また海に着水するため、“ドリーム・チェイサー”のこうした特徴は唯一無二のものになります。

なお、カーゴ・モジュールは使い捨てで、帰還時には国際宇宙ステーションで発生したゴミなどを搭載。
シャトルとの分離後には地球の大気圏に再突入し、ゴミと共に燃え尽きることになります。


初となる試験打ち上げに向けて

現在、“ドリーム・チェイサー”の初号機“テナシティ”は組み立てを完了し、数週間の内にオハイオ州にあるNASAのニール・アームストロング試験施設へ持ち込まれる段階にきています。

NASAは、この試験場で1~3か月ほどの期間をかけて振動や音、厳しい熱、真空環境での耐久性などを試験する予定です。
“テナシティ”は、2023年12月15日に環境試験を開始。カーゴモジュール“Shooting Star”と積み重ねられた打ち上げ形態で振動テストが進められている。
一連の試験をクリアすれば、“ドリーム・チェイサー”はフロリダ州にあるケネディ宇宙センターに移送され、初となる試験打ち上げに備えることになります。

そこで、気になるのは打ち上げの日程。
この打ち上げは、今のところ4月の実施が予定されているものの、スケジュールが予定通りに進むかどうかは分かりません。

もともと、“ドリーム・チェイサー”は2023年に初フライトが予定されていました。
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の新型ロケット“ヴァルカン”の2度目のミッションに搭載され、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げる予定でした。
この試験打ち上げは、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”契約下で行われるもの。“商業輸送サービス2”では、“ドリーム・チェイサー”を使い最低6回の補給ミッションを行うことが決まっている。
でも、ヴァルカンロケットも開発が遅れているんですねー
初の打ち上げを12月に予定している段階です。
“ヴァルカン”は第2段の“セントールV”の試験中に水素が漏洩して爆発、これを受けて初打ち上げが延期されている。
なので、ここで何か問題が見つかれば、“ドリーム・チェイサー”の初飛行にも影響する可能性があります。

これまで、ヴァルカンロケットの初打ち上げは延期を繰り返している状況なので、“ドリーム・チェイサー”の初打ち上げもいつになるか不安になってきます。

有人宇宙船版の“ドリーム・チェイサー”は、アトラスVロケットに搭載される設計でした。
ヴァルカンロケットが間に合わないときには、実績のあるアトラスVロケットに乗っけて、さっさと打ち上げてしまえばいいのに!
っと思ってしまいますが、そういう訳にはいかないのでしょうね。


諦めていない地球低軌道への有人飛行

これらの関門を無地に突破できれば、次の目標は国際宇宙ステーションへのドッキングになります。

シエラ・スペース社は、将来的に“ドリーム・チェイサー”による地球低軌道への有人飛行も可能にしたいと考えています。

そこで、期待されるのが、ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジン社との共同プロジェクト。
こちらは、国際宇宙ステーションの後継になることが期待されている商用宇宙ステーション“オービタル・リーフ(Orbital Reef)”に向かう、有人の“ドリーム・チェイサー・ミッション”です。

シエラ・スペース社では有人機版“ドリーム・チェイサー”の開発も継続しているので、補給機版の実績や、今後の需要の変化などによって、宇宙飛行士を乗せて飛ぶ可能性もありそうです。

現状、NASAが国際宇宙ステーションへ荷物や人員を輸送できる宇宙船は、スペースX社のドラゴン宇宙船のみ。
ボーイング社が開発中の有人宇宙船“スターライナー(CST-100 Starliner)”は、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を、2024年4月以降に延期… これにより運行開始時期も2024年夏から2025年初頭へと延期されています。

新型コロナのパンデミックもあり、その後の開発もまた遅延に見舞われたものの、シエラ・スペース社では“ドリーム・チェイサー”の2番目の試験打ち上げ用の機体を、2026年の完成を目標として準備に取り掛かっているようです。

国際宇宙ステーションの緊急脱出艇から有人宇宙船を経て、無人補給船となって宇宙へ飛び立つことになる“ドリーム・チェイサー”。
運用までには、初の試験打ち上げや大気圏再突入、国際宇宙ステーションとのドッキングなど、まだまだ試験や開発が続くことになります。


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ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”の有人飛行試験は2024年3月以降になるようです

2023年08月17日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2023年10月17日更新

ボーイング社の商業用旅客機“ストラトライナー”や“ドリームライナー”に連なる名前が付けられた開発中の有人宇宙船“スターライナー(CST-100 Starliner)”。
スペースシャトルのような翼は持たない、スペースX社の“クルードラゴン”と同じカプセル型の宇宙船です。

NASAによると、“スターライナー”による有人飛行試験は2024年3月以降に実施される見込みのようです。
“スターライナー”による有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を、2024年4月以降に延期したことをNASAが発表しました。
これにより運行開始時期も2024年夏から2025年初頭へと延期されています。

ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影)。(Credit: Boeing/John Grant)
ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影)。(Credit: Boeing/John Grant)

無人飛行試験を終えて有人飛行試験へ

“スターライー”はスペースX社の“クルードラゴン”とともに、NASAのコマーシャルクループログラム(宇宙飛行士の商業輸送契約)のもとで開発がスタートした有人宇宙船です。

初飛行は、2019年12月に実施された無人での軌道飛行試験“OFT(Orbital Flight Test)”。
このミッションでは、ソフトウェアの問題が生じたので計画されていた軌道に入ることができず…
“スターライナー”は国際宇宙ステーション“ISS”への到達を断念し地球に帰還しています。

2022年5月には、2回目の無人飛行試験“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”が実施され、国際宇宙ステーションへのドッキングを含む打ち上げから帰還までの実証試験に成功しています。

2度の無人飛行試験に成功した“スターライナー”は、本格的な有人飛行の開始に先立ち、実際にクルーが登場する有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を控えていました。

“CFT”では、NASAのバリー・ウィルモア(Barry Wilmore)宇宙飛行士とスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)宇宙飛行士がプライムクルーに、マイケル・フィンク(Edward Michael Finche)宇宙飛行士がバックアップクルーに任命されています。

有人飛行試験延期の原因となった2つの問題

2023年4月の時点では、“CFT”の実施は同年7月21日以降に予定されていました。
でも、2つの問題が発覚したことで同年6月に延期が発表されていました。

1つ目は、パラシュートの問題。
サスペンションライン(吊索)と機体を繋ぐソフトリンクと呼ばれる部品の強度の分析に誤りがあり、帰還時に展開される3つのパラシュートのうち1つが何らかの理由で失われた際に、残る2つのパラシュートのソフトリンクに求められる安全マージンが確保できていなかったようです。

2つ目は、ワイヤーハーネスを結束・保護するために機体全体で使われているテープの問題。
試験の結果、粘着剤が可燃性だったことが判明したそうです。
無人の“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”ミッションを終えてホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船“スターライナー”(Credit: NASA/Bill Ingalls)
無人の“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”ミッションを終えてホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船“スターライナー”(Credit: NASA/Bill Ingalls)
問題が判明したソフトリンクとテープは、2022年5月の“OFT-2”でも使用されていましたが、この時は特に異常が生じるようなことはありませんでした。

これらの問題が“CFT”の実施直前になってから見つかった理由について、設計の初期段階における“ある種の楽観的な意識”と説明されています。

結局、2023年8月7日(現地時間)にNASAが開催したメディアブリーフィング及び同日付のプレスリリースで、“CFT”の実施が2024年3月以降になるという見通しが発表されることに。

問題点の1つパラシュートのソフトリンクは、設計を改めたうえで現在試験が進められ、2023年11月後半には降下試験も実施予定になっています。

もう1つの問題点のテープは、全体の約85%が除去されたそうです。
ただ、一部に除去することが難しいテープもあり、場合によっては損傷を招く可能性もあるので、場所に応じてテープをコーティングしたり別のテープを巻き付けたりといった、可燃性を軽減するための措置が取られることになります。

問題のテープは環境によっては可燃性があるということですが、NASAのデータベースにおけるテープの可燃性に関する項目は“少し矛盾していて”、そのことが危険性のある環境での使用に結び付いたと説明されています。

ただ、仮に2024年3月の段階で“スターライナー”の打ち上げ準備が整ったとしても、国際宇宙ステーションへ飛行する他の宇宙船のスケジュールとの兼ね合いもあるので、すぐに“CFT”が実施されるとは限りません。

例年3月は、ロシアの宇宙船“ソユーズ”による国際宇宙ステーション長期滞在クルーの交代が行われる時期なので、“CFT”は2024年4月以降にずれ込む可能性もあります。

“CFT”がまだなので運用飛行の開始について判断するのは難しいですが、順調に進めば2024年末頃もあり得るのかもしれませんね。 


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小型シャトル“ドリーム・チェイサー”の初号機が初フライトに向けて前進

2023年07月11日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
シエラ・スペース(Sierra Space)社は5月31日(米国時間)、宇宙往還機“ドリーム・チェイサー”の初号機が初フライトに向けて重要なテストを通過したことを発表。
ソーラーパネルで発電した電力を機体に供給し、フライトコンピューターやその他のコンポーネントを起動させたそうです。
カーゴモジュールを切り離した“ドリーム・チェイサー”のイメージ図。(Credit: Sierra Space)
カーゴモジュールを切り離した“ドリーム・チェイサー”のイメージ図。(Credit: Sierra Space)

小型シャトル“ドリーム・チェイサー”

シエラ・スペース社が開発を進めている有翼の宇宙往還機が“ドリーム・チェイサー”です。

“ドリーム・チェイサー”は、小さいながらも翼を持っていて、胴体そのものが揚力を生む“リフティング・ボディ”を持っています。
スペースシャトルのように宇宙から滑走路に着陸し、15回以上の再使用をこなす小型シャトルで、国際宇宙ステーションへの輸送ミッションや、大分空港での運用の検討も進められていました。

製造はロッキード・マーティンが担当し、社内にある特別開発チーム“スカンク・ワークス”が培ってきた技術が活用されるそうです。

全長は約9メートル、翼の長さは約7メートルで、スペースシャトルの4分の1ほどという小ささ。
翼は空母艦載機のように折りたたむことができ、既存のロケットのフェアリングの中に収められて打ち上げられます。
有人宇宙船版の“ドリーム・チェイサー”はアトラスVロケットの先端にむき出しの状態で搭載される設計だった。

初フライトに向けて

今回、“ドリーム・チェイサー”は組み立て施設で初めて電源を投入。
ソーラーパネルで発電した電力を機体に供給し、フライトコンピューターやその他のコンポーネントを起動させています。

現在、シエラ・スペース社が進めているのは、今後実施する“ドリーム・チェイサー”のニール・アームストロング飛行研究センターへの移動に向けた準備。
そこで熱真空試験を実施し、打ち上げの最終準備のためケープカナベラル宇宙軍施設へ輸送されることになります。

そこで、気になるのは打ち上げの日程…

“ドリーム・チェイサー”の初フライトが予定されていたのは2023年。
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の新型ロケット“ヴァルカン”の2度目のミッションに搭載され、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げる予定でした。

このフライトは、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”契約下で行われるもの。
“商業輸送サービス2”では、“ドリーム・チェイサー”を使い最低6回の補給ミッションを行うことが決まっています。
“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”のイメージ図。(Credit: Sierra Space)
“ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム”のイメージ図。(Credit: Sierra Space)
さらに、ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジン社との共同プロジェクトにも期待です。
これは、国際宇宙ステーションの後継になることが期待されている商用宇宙ステーション“オービタル・リーフ(Orbital Reef)”に向かう、有人の“ドリーム・チェイサー・ミッション”です。

シエラ・スペース社では有人機版“ドリーム・チェイサー”の開発も継続しているので、補給機版の実績や、今後の需要の変化などによって、宇宙飛行士を乗せて飛ぶ可能性もありそうです。

ただ、“ヴァルカン”は第2段の“セントールV”の試験中に水素が漏洩して爆発。
これを受けて初打ち上げが延期されているんですねー

これまで、“ヴァルカン”の初打ち上げは延期を繰り返している状況なので、“ドリーム・チェイサー”の初打ち上げはいつになることやら…

実績のあるアトラスVロケットに乗っけて、さっさと打ち上げてしまえばいいのに! っと“ドリーム・チェイサー”ファンは思っているはずですよ。


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ヴァージンの有人宇宙船“スペースシップ2”が飛行試験を中止。ロケット・モーターを正常に点火できず帰還

2020年12月17日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
日本時間の2020年12月13日未明、ヴァージン・ギャラクティック社は宇宙船“スペースシップ2”の2号機“VSSユニティ”による有人飛行試験を実施しました。
同日1時15分頃、“VSSユニティ”は空中発射母機“ホワイトナイト2”から切り離されるのですが飛行試験は中止。
2名の乗員と機体は、切り離しから12分後に無事地上へ帰還しています。
“スペースシップ2”の2号機は、当初“VSSヴォイジャー”と呼ばれていたが、最終的には“VSSユニティ―”と名付けられた。1号機の“VSSエンタープライズ”と共に、SF作品スタートレックに登場する宇宙船にちなんで名付けられた。
“VSSユニティ”の名前が意味するのは「団結」や「結束」。物理学者スティーブン・ホーキングさんによって名付けられた。
滑空する“スペースシップ2(VSSユニティ)”。(Credit: Virgin Galactic)
滑空する“スペースシップ2(VSSユニティ)”。(Credit: Virgin Galactic)

サブオービタル軌道を飛行する宇宙船

民間による宇宙旅行の実現。
このために設立された会社がヴァージン・ギャラクティック社です。

ヴァージン・ギャラクティック社が開発中の宇宙船“スペースシップ2”は、ロケットで打ち上げるのではなく、航空機“ホワイトナイト2”に吊るされて離陸します。

“スペースシップ2”は、上空で“ホワイトナイト2”と分離した後にロケット・モータを点火。
一般的に宇宙とされている高度約100キロまで上昇するんですねー

ただ、乗客が宇宙空間を体験できるのは数分間で、その後“スペースシップ2”は地球を1周する前に飛行機のように地上に帰還する、サブオービタル軌道を飛行することになります。
“サブオービタル宇宙船”とは、スペースX社の“クルー・ドラゴン”やロシアの“ソユーズ宇宙船”などとは異なり、地球を回る軌道には乗らない宇宙船。同社はすでに“スペースシップ1”によって、高度100キロへの弾道飛行を成功させている。

ロケット・モーターを正常に点火できず飛行試験は中止へ

今回の飛行試験は、ヴァージン・ギャラクティック社の拠点がニューメキシコ州のスペースポート・アメリカに移ってから初めて試みられた有人宇宙飛行でした。

当初、この有人宇宙飛行の実施予定日は2020年11月19日~23日でした。
でも、新型コロナウィルス感染症の影響によりスケジュールが遅れていたんですねー

パイロットのCJ Sturckow氏とDave Mackay氏の2名が乗り込んだ“VSSユニティ”が、“ホワイトナイト2”に吊り下げられて離陸したのは12月13日の0時24分頃。
宇宙船“VSSユニティ”を抱えて離陸する空中発射母機“ホワイトナイト2”(Credit: Virgin Galactic)
宇宙船“VSSユニティ”を抱えて離陸する空中発射母機“ホワイトナイト2”(Credit: Virgin Galactic)
およそ50分後の1時15分頃に“ホワイトナイト2”から切り離されますが、ロケット・モーターを正常に点火できなかったことから飛行は中止されました。

原因は、“VSSユニティ”のエンジンを監視するオンボードコンピュータが接続を失ったこと。
このため、安全対策としてエンジンが停止されたそうです。

機体はスペースポート・アメリカへ安全に帰還しているので、今後は根本的な原因の調査を含むデータの評価を進めるそうです。
“スペースシップ2”の1号機“VSSエンタープライズ”は、2014年の空中分解による墜落で失われている。

ヴァージン・ギャラクティック社は“スペースシップ2”による宇宙旅行の商業化を目指していて、2018年12月には2名のパイロットを乗せた飛行試験において、高度82.7キロの宇宙空間への到達に成功しています。
国際的には高度100キロ以上が宇宙とされているが、アメリカ空軍は高度80キロ以上と定義している。

“スペースシップ2”には、2人のパイロットと6人の乗客が搭乗可能です。

地球を周回しないサブオービタル飛行ではあるものの、旅行に参加した6人の乗客は100キロ上空の「宇宙」で、無重力の体験や、漆黒の宇宙と地球の青という美しいコントラストを6分間楽しめるそうです。


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