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ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”の有人飛行試験は2024年3月以降になるようです

2023年08月17日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
2023年10月17日更新

ボーイング社の商業用旅客機“ストラトライナー”や“ドリームライナー”に連なる名前が付けられた開発中の有人宇宙船“スターライナー(CST-100 Starliner)”。
スペースシャトルのような翼は持たない、スペースX社の“クルードラゴン”と同じカプセル型の宇宙船です。

NASAによると、“スターライナー”による有人飛行試験は2024年3月以降に実施される見込みのようです。
“スターライナー”による有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を、2024年4月以降に延期したことをNASAが発表しました。
これにより運行開始時期も2024年夏から2025年初頭へと延期されています。

ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影)。(Credit: Boeing/John Grant)
ボーイングの新型宇宙船“スターライナー”、有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”で使用される機体の組み立て作業の様子。2023年1月19日撮影)。(Credit: Boeing/John Grant)

無人飛行試験を終えて有人飛行試験へ

“スターライー”はスペースX社の“クルードラゴン”とともに、NASAのコマーシャルクループログラム(宇宙飛行士の商業輸送契約)のもとで開発がスタートした有人宇宙船です。

初飛行は、2019年12月に実施された無人での軌道飛行試験“OFT(Orbital Flight Test)”。
このミッションでは、ソフトウェアの問題が生じたので計画されていた軌道に入ることができず…
“スターライナー”は国際宇宙ステーション“ISS”への到達を断念し地球に帰還しています。

2022年5月には、2回目の無人飛行試験“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”が実施され、国際宇宙ステーションへのドッキングを含む打ち上げから帰還までの実証試験に成功しています。

2度の無人飛行試験に成功した“スターライナー”は、本格的な有人飛行の開始に先立ち、実際にクルーが登場する有人飛行試験“CFT(Crew Flight Test)”の実施を控えていました。

“CFT”では、NASAのバリー・ウィルモア(Barry Wilmore)宇宙飛行士とスニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)宇宙飛行士がプライムクルーに、マイケル・フィンク(Edward Michael Finche)宇宙飛行士がバックアップクルーに任命されています。

有人飛行試験延期の原因となった2つの問題

2023年4月の時点では、“CFT”の実施は同年7月21日以降に予定されていました。
でも、2つの問題が発覚したことで同年6月に延期が発表されていました。

1つ目は、パラシュートの問題。
サスペンションライン(吊索)と機体を繋ぐソフトリンクと呼ばれる部品の強度の分析に誤りがあり、帰還時に展開される3つのパラシュートのうち1つが何らかの理由で失われた際に、残る2つのパラシュートのソフトリンクに求められる安全マージンが確保できていなかったようです。

2つ目は、ワイヤーハーネスを結束・保護するために機体全体で使われているテープの問題。
試験の結果、粘着剤が可燃性だったことが判明したそうです。
無人の“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”ミッションを終えてホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船“スターライナー”(Credit: NASA/Bill Ingalls)
無人の“OFT-2(Orbital Flight Test 2)”ミッションを終えてホワイトサンズ宇宙港に着陸する新型宇宙船“スターライナー”(Credit: NASA/Bill Ingalls)
問題が判明したソフトリンクとテープは、2022年5月の“OFT-2”でも使用されていましたが、この時は特に異常が生じるようなことはありませんでした。

これらの問題が“CFT”の実施直前になってから見つかった理由について、設計の初期段階における“ある種の楽観的な意識”と説明されています。

結局、2023年8月7日(現地時間)にNASAが開催したメディアブリーフィング及び同日付のプレスリリースで、“CFT”の実施が2024年3月以降になるという見通しが発表されることに。

問題点の1つパラシュートのソフトリンクは、設計を改めたうえで現在試験が進められ、2023年11月後半には降下試験も実施予定になっています。

もう1つの問題点のテープは、全体の約85%が除去されたそうです。
ただ、一部に除去することが難しいテープもあり、場合によっては損傷を招く可能性もあるので、場所に応じてテープをコーティングしたり別のテープを巻き付けたりといった、可燃性を軽減するための措置が取られることになります。

問題のテープは環境によっては可燃性があるということですが、NASAのデータベースにおけるテープの可燃性に関する項目は“少し矛盾していて”、そのことが危険性のある環境での使用に結び付いたと説明されています。

ただ、仮に2024年3月の段階で“スターライナー”の打ち上げ準備が整ったとしても、国際宇宙ステーションへ飛行する他の宇宙船のスケジュールとの兼ね合いもあるので、すぐに“CFT”が実施されるとは限りません。

例年3月は、ロシアの宇宙船“ソユーズ”による国際宇宙ステーション長期滞在クルーの交代が行われる時期なので、“CFT”は2024年4月以降にずれ込む可能性もあります。

“CFT”がまだなので運用飛行の開始について判断するのは難しいですが、順調に進めば2024年末頃もあり得るのかもしれませんね。 


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