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ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが新型ロケット“ヴァルカン”の打ち上げに成功! 次は“ドリーム・チェイサー”搭載へ

2024年01月12日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
アメリカの民間宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は日本時間2024年1月8日、新型ロケット“ヴァルカン(Vulcan)”初号機の打ち上げミッション“Certification-1(Cert-1)”に成功しました。

ヴァルカンにはアメリカの民間宇宙企業アストロボティック(Astrobotic)の月着陸船“ペレグリン(Peregrine)”が搭載されていました。
図1.ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設から打ち上げられるヴァルカンロケット。(Credit: ULA)
図1.ケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設から打ち上げられるヴァルカンロケット。(Credit: ULA)


ヴァルカン初号機の打ち上げミッションに成功

ペレグリンを搭載したヴァルカンロケットは日本時間の2024年1月8日16時18分(米国東部標準時同日2時18分)、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設を離床。
打ち上げから1分53秒後に固体ロケットブースター(SRB)を分離、打ち上げから5分30秒後に第2段エンジン“セントール(Centaur)”による1回目のエンジン噴射(約10分間)を実施し、打ち上げから43分45秒後には2回目のエンジン噴射(約4分間)を実施したそうです。

その後、打ち上げ50分後の日本時間同日17時9分にペレグリンを分離しています。

打ち上げから1時間19分後にはセントールが3回目のエンジン噴射を実施し、深宇宙に向けて飛行を開始。
そして、ユナイテッド・ローンチ・アライアンスによるミッション成功の報告があったのは、本時間同日18時ちょうどのことでした。


ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが開発した新型ロケット

現在運用されているアトラスVロケットやデルタIVロケットの後継になるのが、ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが開発した新型ロケット“ヴァルカン”です。

ヴァルカンのロケット1段目には、アメリカの民間宇宙企業ブルーオリジンが開発した新型エンジン“BE-4”を2基搭載。
BE-4は燃料の液体メタンと酸化剤の液体酸素とを組み合わせて使用し、2400kNの推力を出すことができます。

ロケット2段目のセントールには、1960年代から使用され改良を続けている“RL-10”の新型モデル“RL10C-1-1A”を2基搭載しています。
RL-10は燃料に液体水素、酸化剤に液体酸素を用いています。

ヴァルカンは固体ブースターロケットの本数やフェアリングの大きさをカスタマイズすることで、様々な大きさの衛星や探査機の打ち上げに対応可能なロケットです。
今回の“Cert-1ミッション”で使用されたのはヴァルカンの“VC2S”形態でした。

VCは、“ヴァルカン・セントール(Vulcan Centaur)”の略称。
2は2本の固体ブースターロケット、Sはショートサイズのフェアリングを使用していることを表しています。
図2.発射台で打ち上げを待つヴァルカンロケット。(Credit: ULA)
図2.発射台で打ち上げを待つヴァルカンロケット。(Credit: ULA)
ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが既に契約をしているヴァルカンロケットの打ち上げは70回以上。
そのうちの38回は、アメリカの民間企業アマゾンの衛星コンステレーション計画“プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)”で使用される衛星の打ち上げ契約になっています。

今回のヴァルカンロケットの打ち上げ成功は、アメリカの安全保障に関連した衛星の打ち上げにも影響を及ぼします。

アメリカの軍や安全保障に関連する衛星の打ち上げは、国家安全保障打ち上げプログラム(National Security Space Lunch program; NSSL)の契約で行われます。
でも、ヴァルカンロケットをこのプログラムで使用するには、2回の商業打ち上げ成功が要件となっています。

次の商業打ち上げミッション“Certification-2(Cert-2)”では、アメリカの民間宇宙企業シエラ・スペースが開発した有翼の宇宙往還機“ドリーム・チェイサー(Dream Chaser)”の初号機“テナシティ”が搭載され、今後数か月以内(4月頃)に実施する予定です。(※1)
※1.初号機“テナシティ”の試験打ち上げは、NASAによる国際宇宙ステーションへの貨物輸送を民間に委託する計画“商業輸送サービス2”契約下で行われるもの。“商業輸送サービス2”では、“ドリーム・チェイサー”を使い最低6回の補給ミッションを行うことが決まっている。
“Cert-2”の打ち上げが成功すれば、2024年夏ごろにはNSSLで契約された衛星が打ち上げられる予定です。


ヴァルカン初号機の打ち上げミッション

“Cert-1”では、ヴァルカンロケットに2つのペイロードが搭載されていました。

1つ目は、アストロボティックの月着陸船“ペレグリン”です。
“ペレグリン”に搭載されたのは、NASAの5つの科学機器や日本の民間企業のタイムカプセルなど。
今後、NASAの商業輸送サービス(CLPS)の下で合計21のペイロードが搭載されることになります。
CLPSの枠組みで開発された月着陸船の打ち上げは、今回が初めてになります。

でも、ヴァルカンロケットから分離に成功した“ペレグリン”は推進システムで異常が発生。
太陽電池でバッテリーを充電するための姿勢制御が不安定になったことが、アストロボティックから発表されています。

“ペレグリン”では推進剤の重大な損失が起きている模様で、アストロボティックが日本時間2024年1月10日2時過ぎに発表したリリース(update #5 for Peregrine #5 for Peregrine Mission One)では、月面への軟着陸の見込みはないと述べられています。

この時点で、アストロボティックの完成チームは“ペレグリン”の運用期間を延ばす方法を模索。
次の月着陸船“グリフィン(Griffin)”の開発に向けて、関連するデータの取得を続けるとしています。
図3.ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの新型ロケット“ヴァルカン”のフェアリングに格納されるアストロボティックの月着陸船“ペレグリン”。(Credit: ULA)
図3.ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの新型ロケット“ヴァルカン”のフェアリングに格納されるアストロボティックの月着陸船“ペレグリン”。(Credit: ULA)
2つ目のペイロードは、宇宙葬を手掛けるアメリカの企業セレスティスのペイロードです。

このペイロードには、SFドラマ“スタートレック”の生みの親として知られるジーン・ロッデンベリーさんとその妻、同作に出演した俳優の遺骨が搭載されていました。
また、ジョン・F・ケネディさんら元アメリカ大統領の遺髪も含まれています。

セレスティスのペイロードはセントールに固定されていて、地球からさらに遠い深宇宙へと投入されました。


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